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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第15章 深淵 【楓花】【リハルド】

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一部セリフを書き足しました。読み返さなくても問題はありません。


 「各部隊が駐屯する川には清草を植えてあります。清草より川下は清水となっておりますので、戦闘後は必ず身を清めてください。」

 「植えた?」

 「はい、川下は清水になっているのでご安心を。」

 

 一瞬ざわついたが、リハルドの次の言葉で意識はそちらに向いた。

 

 「清水!それは誠か?」

 「それなら、穢れを払えるのか?」

 「はい、ご安心くださって結構ですが、不安であれば鑑定してください。」

 

 これだけで、集まった軍の指揮官たちの表情が明るくなった。


 「深淵との接触後や身体を清めた後は、こちらのスプレーをひと吹きしてください。これの中身は、口外を控えていただきたいのですが、…聖水です。」

 

 場がざわついた。


 「今から皆さまへ配布します。お手元に届きましたら、こちらの鑑定レンズでご確認ください。スプレー付きの容器と予備のスプレーなしの容器です。中身がなくなったら、スプレーを付け替えてお使いください。ここを捩じれば付け替えできます。この容器が空になれば、いつでも中身が入った物と交換します。毎日交換に来て構いません。」

 「部隊全員に使えるのか?」

 「もちろんです。毎日使ってください。戦っても戦わなくても、森にいるだけでも魔を吸収してしまいます。この容器1本で400~500人に使えます。」

 「おぉ!!」

 

 手に取った人たちが、鑑定レンズで確認すると驚きの表情を見せた。

 

 「本物だな。」

 「だが、聖女様の祈りもなく使えるのか?」

 「それは…だが、教会から聖水を頂き自分たちで使うと考えれば同じでは?」 

 「それもそうか?」

 「聖水というものは、小さな瓶にありがたく入っている物だと思っていましたよ。」

 「ああ、私もそのように思っている。」

 「これについては、他言無用ですよ。どなたも魔人にはなりたくないでしょう?我々は、魔人と戦いたくない。」


 軽口が出たので、閣下が笑いながら答えた。

 だがこの会話で空気が変わった。

 

 「つまり、今回の戦いでは魔人を出さずに、深淵と戦える可能性があると言う事ですか?」

 「そのつもりで用意しました。横流ししてしまえば、聖水が足りなくなり身内から魔人が出るでしょう。そうならぬためにしっかり使ってくれると信じています。」

 「はっ!!」

 

 閣下の言葉に、一同は立ち上がり敬礼した。

 彼らのほとんどは、各領地から派兵された指揮官だ。

 清水と聖水がある。それにより、どこまで準備をしているのかは伝わったのだろう。

 リハルドは慣れつつあったが、常識的に考えるなら、これほどの聖水を用意するのは異常なのだ。

 あのフーカ様の雑な使い方を見ていると勘違いしてしまうが、これが普通の反応だと気を引き締めた。


 「次に救護所についてご説明します。」

 「ヒシフォートで育てた治療師が治療に当たります。治癒士をお連れの部隊があるなら、ご協力をお願いします。治癒士と治療師が力を合わせれば、散る者も少ないでしょう。」

 「治療師?」

 「話には聞いたような?」

 「治療師は、ヒシフォートで製造しているポーションや各種薬を使用して治療を行う者です。森の入り口に8か所、森を入って5km地点にも8か所設置予定ですが、深淵の位置に応じて多少移動もさせます。8つのうちの3つは、砦の中へ設けます。」


 貼り付けた地図に印のピンを挿していく。


 「こちらは、戦いの状況により移動することもあります。また、森の中の救護所は応急処置の場です。こちらで処置を終えたら、入り口側の救護所へ移します。重傷者の場合は、容体を見ながら、クリトン伯が用意してくれた治療所へ移動させます。」

 「意味合いはわかったが、ポーションや薬など効くのか?」

 「ヒシフォートで認めた薬師の手による品を用意する。」

 

 閣下の言葉で、静まった。

 本当の事だけど、野良薬師の行いが酷すぎたために薬師の信頼度は低い。そして、それを使う治療師も信用されていないようだと思った。


 「まあ、怪我をしないようお願いします。エリクサーがあったとしても、失った手足は戻りません。」

 「エリクサーなどと…」


 おとぎ話で話を逸らすなと言うところか。

 閣下に視線を向けた。

 アイコンタクトを取り、リハルドは後ろに控えていた治療師に小瓶を配布させた。

 目の前にいる国軍と領軍の指揮官19人に1本ずつだ。

 容器を見た代表たちの手が震えている。

 エリクサーの容器であることは、一目でわかるだろう。


 「まさか…」

 「これほどの数を?」

 「そんな馬鹿な…。」


 指揮官たちの呟きに、閣下は苦笑いを浮かべた。

 リハルドから見ると当然の反応でもあった。

 先日、フーカ様が都合したエリクサーは40本だった。

 うち5本は、各種薬になっている。残りの半数を放出したのだ。


 「鑑定レンズを回す。それは、1本ずつお渡しする。ご自分に使うなり、副官に使うか他に使うかはお任せする。最後まで使わずに済んだなら持ち帰って構いません。」

 

 閣下の言葉に静まり返っていた。

 静かだが、力強い声だった。

 1年から2年かかる戦いの報酬としても、十分な品だ。リハルドは生まれてから、エリクサーがオークションに出た話を聞いたことがなかった。生まれる前に出た新聞では、国の軍事予算10数年分だったらしい。それを今19本も配布した。

 閣下が預かっている予算がいかほどかはわからないが、かなりの金額をつぎ込んだとみられるだろう。実際、フーカ様とどのような取り決めかは知らないが、相当額は支払うはずだ。

 指揮官たちは、鑑定レンズで確認しては息を飲んでいるのがわかる。


 「今回の戦いは、魔人を出さない。命も散らさぬよう努力はする。安心は出来ぬだろうが、全力で戦ってもらいたい。救護所では、下級ポーションや薬類はもちろんだが、中級まで揃えている。大部分の対応は出来るだろう。」

 

 彼らは、立ち上がり敬礼をした。

 表情がまるで違った。完全ではないだろうが、ある程度の信頼は得られたようだ。

 閣下の覚悟はしっかりと伝わった。


 「では、座ってこちらを向いてもらおう。今回の深淵は大蛇だ。」


 閣下は立ち上がり、前へ出るとマップを貼り付けた台をひっくり返した。

 白い状態にすると、横に立った。


 「今からお見せするのは、今回の討伐対象だ。この絵はそう撮れないので他言無用です。」

 「見せる?」

 

 指揮官たちが騒めいた。

 明り取りが閉められると、天幕の布を通して明かりは入るが薄暗い。

 指揮官たちが首を傾げている中、白い板に大蛇が映し出された。

 黒い巨体と赤い目が3つ。

 黒い靄を巻き散らしていた。


 「これは…!?」

 「ここの木を見るとサイズ感もわかるだろう。私とリハルド、クリトン伯と騎士団、それから天龍の者たちと森を探っている時に遭遇した。」

 「遭遇!?既に戦ったのですか?」

 

 矢が射かけられ、大剣が振られても尾に近い部分にしか攻撃出来ていない。

 あの日の戦いがそのまま映されていた。

 尾を切り落とすまでが映っていた。

 場面が切り替わり、尾に聖水を掛けながら切り刻んでいる。

 あの王宮の庭での様子だった。

 どうやってと思うが、閣下が魔道具を使ったのだろう。


 「これと戦う?」

 

 前の席の者は、座ったまま腰が抜けたような顔をしている。

 後ろの席の者たちは、立ち上がり前のめりで見ていた。

 



読んでくださりありがとうございます。

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