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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第14章 タイトル未定

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9


 楓花の車が空間移動した先は、王宮の庭だった。

 敬一郎の指示だ。


 当然だが、王宮は騒然とし近衛隊に取り囲まれた。

 到着するなり、楓花は魔石を補充し始めた。その手は震えていた。


 敬一郎は、深呼吸をして下級ポーションを飲み小さな傷を手当した。

 

 「楓花さん、失礼。フードを被っていてください。」

 

 敬一郎は、車から降りた。

 近衛兵は剣を構えている。

 その後ろから、王の秘書官がやってきた。


 「元帥閣下!突然何事ですか?」

 「秘書官殿、突然申し訳ない。クリトン領のあの森に…深淵…が発生した。」

 「は…」


 秘書官の目の前に、ケースで保護状態にしたあの尻尾を取り出した。

 周囲に薄っすらと魔が広がるので、敬一郎は聖水を噴霧し広がるのを防いで見せた。


 「非常事態ゆえ、至急陛下にお目通り願いたい。また、我が魔導士を害することないよう頼みたい。」

 「は!すぐにお取次ぎいたします!」

 「これを城に入れる訳にはいかぬゆえ、宰相閣下や閣僚がいるならば起こしいただき、御覧いただきたい。」

 

 騎士が数人走っていく。

 秘書官は残っている。

 近衛兵たちも、剣を構えたまま残っていた。

 

 キャビンを開け、クリトン辺境伯へ声をかけた。

 

 「クリトン辺境伯、城に着いたゆえ降りてもらいたい。騎士団長殿もご一緒に。リハルドも降りて、これを見張ってくれ。」

 「かしこまりました。」


 3人が降りてくる。

 その後ろにいるケントとアーサー、騎士たちにはそのままでいるよう視線を向けた。

 ケントとアーサーが頷いたので、ドアを閉めた。


 「クリトン辺境伯とその騎士団団長をお連れした。それから、グリフォン騎士団団長のリハルドだ。」

 「それでは、現場指揮は?」

 「今はいない。このように尾を落としたゆえ、しばらくは森から降りないだろう。皆が魔に侵されぬよう聖水を撒いても良いだろうか?」

 「はい、聖水であれば構いません。」

 「では、失礼する。」

 

 敬一郎は、リハルドに指示をして、周囲にいる者たちに聖水をスプレーさせた。

 敬一郎は、尾を入れたケースに定期的に聖水をかけて見張っていた。

 一応、ガード内なので何かあってもガードから漏れることはないだろう。

 それに、宰相たちが来たらケースを開けて、魔を消すつもりでもあった。


 しばらくすると、国王が宰相や登城していた閣僚を連れてやってきた。


 「ケイよ、これは一体…。」

 

 敬一郎は、礼を執った。

 

 「王国の太陽に拝謁賜り…」

 「挨拶はよい。説明せよ。」

 「御意。」


 敬一郎は、顔を上げた。

 敬一郎の後にいる同行者たちは、膝をついた礼を執っている。


 「先日、国土となりました森とクリトン領の調査をしていたところ、魔が溢れ魔水となり川を通して下っていることがわかりました。」

 「なんだと!」


 国王は目を見開いている。

 後ろにいる宰相や閣僚たちも同様だった。

 魔が溢れ川を下るというのは、つまり川下の者たちが魔に侵され魔物になっていることになる。あの森から流れる川下には国土の1/5を占めていた。

 国民の1/5が魔物になってしまえば、立ち向かう術はない。

 

 「幸いにも、早々に気が付いたため、清草を植えつけ川の水を清めております。」

 「清草を植える!?」

 「はい、幸いにも効力を発揮しております。」

 「それは誠か?」

 「はい、誓って誠にございます。」

 「そうか…それで…それがそうか?」


 国王の視線は、ケースに入れられた尻尾に向けられていた。

 黒い靄が出てきては、控えているリハルドがスプレーで清めている。


 「これは大蛇の尾か?」

 「はい、流石は陛下一目で見破られましたか。」

 「いや…報告を受けたからな。それに確かに蛇に見える。」

 「これは尾の先です。推定ですが、体長80m程度はありそうです。」

 「80!?」


 閣僚たちから声が上がった。

 

 「太さは…」


 敬一郎が腕を広げて、このくらいか?と後ろの者たちに問いかけたが、皆顔を伏せたままだった。

 陛下へ視線を移すと、頷かれた。


 「後ろの者たち顔を上げてよい。」

 「は!」


 リハルド、ケントとアーサーにもう一度問いかける。

 

 「このくらいの太さだったよな?」

 「はい、尾に近い部分はそのくらいでした。頭部は確認出来ておりません。」

 「どのくらいあると思う?」

 「経験則からであれば…8mから10m程度はあると思います。」

 「なんと…それが魔を振りまいているのか…。」

 「尾でもこうですから…」

 「すぐに国軍を組み、派遣しろ。なんとしてもこれを打たねばならぬ。」

  

 後ろにいる閣僚の一人が声を上げた。


 「陛下!僭越ながら、魔であるならば教会から聖騎士の派遣も…。」

 「そうか、そうであるが…。」 

 「ケイよ。そなたここに現れたと聞いたが…どこから来たのだ?」

 「森から直接です。」

 「そうか、森からか…は?森からここまで?」

 「はい。」

 「待て、直線距離でも2000㎞は離れておるではないか。」

 「はい、仰せの通りにございます。」

 

 国王が狼狽え、何かを言おうとした。



 「陛下、僭越ながら先にこれを始末してもよろしいでしょうか?」

 「これとは、この尻尾か?教会でなくてよいのか?」

 「はい、構いません。今から魔を漏らさないため、陛下を含め守護壁を築いてもよろしいですか?」

 「守護壁?構わないが…」

 

 本当は、楓花さんにきてもらいたいが、陛下には見せたくない。

 敬一郎は、車に向かい運転席に声を掛けた。


 「楓花さん、今から尻尾を消しますので、ガードの外側に第2ガードを展開してもらえますか?」

 「はい、大丈夫です。私も行きましょうか?」

 「いえ、楓花さんはこちらで待っていてください。もし、私が失敗したらお願いします。」

 「かしこまりました。」


 楓花さんが第2ガードを展開してくれた。

 

 敬一郎は、剣先に聖水を噴霧する。

 それから聖水の入った1L瓶をリハルドへ渡した。

 

 「リハルド」

 「閣下、よろしいですか?」

 「3数えます。」

 「ああ」

 「1・2・3」


 リハルドがケースを開けた瞬間に、敬一郎が聖水を掛けた剣で切り刻む。

 それとほぼ同時に、リハルドが聖水を注ぐ。

 ジュワーっと音を立て黒い靄が消えた。

 

 浄化を終えたソレを陛下の前へ差し出した。


読んでくださりありがとうございます。

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