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敬一郎が、上空から一番端の川を見下ろすと、グリフォンが飛び立つところだった。
騎士団長は、敬一郎に気が付くと敬一郎のグリフォンの周囲を飛ぶ。
合流の合図であるそれを受けて、敬一郎はミシーヌ川の右側へ降りるように指示した。森の麓のため、獣ではなく魔物も降りてくるだろう。
楓花と合流してからになるが、そろそろ大和へ戻らなくてはならない。
明日は金曜日だ。楓花さんも仕事だろう。
イルルジオーネで2日分の時間を過ごしてもらえれば、また合流出来る。
山裾で安全というのは厳しいが、こればかりは仕方がなかった。精鋭たちなのでなんとかするだろう。
「楓花さん、我々はそろそろタイムリミットになりますよ。」
「そうですね。では…皆様一度戻って体制を整えた方がよろしいですよね?」
敬一郎は、楓花の返答に固まった。
確かに、十分な準備をしていない。
置いていくつもりだったし、彼らなら大丈夫だろう。
それでも、戻れるなら戻ったほうがいいか。
「グリフォンを長距離動かすのは出来ないな。」
「それなら、アシュレイ様のところで過ごさせてもらってはいかが?」
「ふむ…そうですね。では、彼らは辺境伯の元へ滞在させてもらうよう交渉しましょう。」
敬一郎と楓花以外の者たちは、準備が整うまで辺境伯の別邸を借り受けて過ごさせてもらうことにした。
敬一郎は、楓花に屋敷へ送ってもらうと、そこから大和へと戻った。
大和の自宅へ戻ったのは7時を過ぎた頃だった。
都内の一等地であるこの家は、元は御大の家だった。
彼の援助を受けてここに住んでいたが、ある時にここを買い取った。
彼の親類縁者が遺産として受け取ると、面倒な事になってしまう。私が買い取らなくてはイルルジオーネに無関係な者の物になってしまうのだ。
この家には、イルルジオーネとの行き来が出来るドアがあり、人の手に渡らないようにする必要があった。
資格のない者にとっては、イミテーションのドアだった。開けても壁があるだけなのだ。
都内ではあるが、建築当初は少し外れた場所だったようだが、今では高級住宅地になってしまっていた。
固定資産税もそれなりになるため、敬一郎のような弁護士としての給料で支払えるはずがなかった。そのため、不労所得を築けるよう御大が、様々な資産をシステム化していたのだ。
敬一郎は、それに乗っただけだ。
イルルジオーネで得られる金や宝石の類を時折放出する。
それらで得た金は、株や債券にしていた。
株主として配当を受け取り、時折売買をして差額を稼ぐ。それだけで生きていくことは出来る。なんなら、イルルジオーネで過ごせばなんの問題もない。
だが、それではこの世界から消えてしまうだろう。
戸籍はあるが、行ったきりでは行方不明者扱いになってしまう。
それに、イルルジオーネとこちらを行き来しているだけでも、見た目と実年齢に大きな乖離が生まれてしまう。
だから、自分が30になったら息子が生まれたことにする必要があった。
何も日本で育つ必要はない。そうやってある程度の年齢になったときに自分が息子に置き換わる。そうするのがベストだと教えられていた。
イルルジオーネで作られた楓花さんの戸籍も同じような使い方のためだろう。
そう考えると、楓花さんにも大和の戸籍は必要だろう。
イルルジオーネの戸籍も必要かもしれない。
だが、イルルジオーネの戸籍か…貴族女性が父のない子を産んでも私生児とされてしまう。
この場合、年齢を考えてもイルルジオーネでは、私と籍を入れるのがスムーズではあるか?
そこはゆっくり相談したほうがよさそうだ。
まずは、今日の仕事をしよう。
敬一郎は、出社しスケジュールの確認をし、業務を始めた。
敬一郎が、仕事を終えてヒシフォートへ帰る。
ドアを開けると、ギルバートが待っていた。
「おかえりなさいませ。」
「ただいま戻った。」
「こちらに変わりはございません。」
「わかった。では朝の8時まで休む。8時に起床後朝食を食べて9時には楓花さんが来る。」
「かしこまりました。そのように整えます。」
ギルバートは3日に一回しか顔を出さないスケジュールにも慣れていた。
そして、それを5回繰り返すと4日から6日過ごすのもいつも通りだ。
ベッドで休み、翌朝楓花さんの車で出かけた
ヒシフォートからエカサへ空間移動した。
エカサで騎士たちと合流すると、ミシーヌ川の山際で待ち合わせる約束をした。
グリフォン隊の3人は、敬一郎のグリフォンを連れて飛び立った。
クリトン伯は、騎士団を連れて馬で出立した。
楓花の車は、敬一郎とケント、アーサーを乗せると山際へ空間移動をした。
「これは、見事ですね。」
4人は茫然と川を見ていた。
清草は川上へと伸びたようで森の方にまで茂っていた。
「魔物なのか何かわからないけど、魔ってこんなに大量に流れるものなの?」
「いえ…ここまでの状態は見たことはありません。」
「皆が集まるのにどのくらいかかりますか?」
「1日ですね。午後の2時ころには来るでしょうから、そこから森に入ります。森の中で車を出せるスペースがあったら、そこで休みましょう。」
「でも、それだと全員は乗れないですよ?」
「当たり前です。辺境伯たちには、外のガード内で休んでもらいましょう。」
「それでいいの?」
「かまいません。ですが、どうしても気になるなら、辺境伯を外2階に入れますか?」
「そうですね…」
楓花さんが、ガードへコップにいれた聖水を撒き始めた。
ガードに触れると淡く輝く。
それから、初めて見る第二ガードを張ると、そこにも聖水をかけていた。
「第二ガード10㎞」
楓花さんがそう言葉にすると、淡い光が外へと走っていく。
周囲から黒い靄が弾ける音が聞こえてくる。
「これは…」
グリフォン隊が降りてきて、隊長が絶句していた。
そこに楓花さんがガードの指輪を持ってきた。
「ガードの指輪を使いますよね?」
「助かりますが、足りますか?」
「ええ、騎士団全員分まではないかもだけど、承認者を入れるタイプならグループごとで使えますよね?」
「え?グループ発動ですか?」
「はい、前は気が付かなかったけど、こちらの5本はそういうタイプみたい。」
「それならば、かなり助かります。」
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