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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第14章 タイトル未定

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 外から見ると、元帥でありヒシフォートクラレンスの領主である自分の庇護下にある。大魔導士であり、表向きは貴族の女性でもある。うかつな事は言えるはずがない。

 しかも、普段の彼女は私にも親しげなのだ。

 大和であれば問題のない距離であり、勘違いした場合は男が責められるだろう。だが、この世界では非常に近い距離に見えるだろう。恋人か夫婦、そのような近さだ。


 「素晴らしい方だと思います。とても優秀な方で我々のような下の物にも優しい。知り合えたことが幸運でした。末永く今のようにお会いできればと思っています。」


 ケントは言葉を選びつつ、当たり障りのないことを言った。

 本心は何一つわからない。


 「男としてはどうだ?」


 敬一郎は、自分の声の低さに驚いていた。

 

 「それは…」


 ケントは唇を震わせ、口を開き閉じた。

 それを繰り返し、敬一郎に視線を合わせた。

 通常、庶民が貴族に視線を合わせることは許されていない。

 問いかけに答える時にさえ、視線はわずかにずらすものだ。


 「お守りするためならば、この命さえ惜しくはありません。」

  

 静まり返った室内にケントの声が響いた。

 予想通り過ぎて驚きはなかった。

 だが、気持ちは逸らされた。

 お慕いしているなのか?それとも愛しているなのか?

 尊敬しているならばそう言うだろう。


 「そうか。」

 

 敬一郎は、深呼吸をした。


 「ならば、彼女の目の前で死ぬな。守りたいなら、自分を大切にしろ。」

 「はっ。」

 「それから、彼女の一番は亡くなった方だ。それは変わらないだろう。無理矢理何かをしようものなら、私に討たれる覚悟をしろ。」

 「え…閣下は?」

 「私は、彼女の守護者だ。それ以上でも以下でもない。」


 そう彼女は、守らなくてはならない。

 だけど、それ以上の言葉が出てこなかった。

 敬一郎は、楓花をここまで半年近く見てきた。愛情深い人だと思っているが、大和で考えると一回りも年上だ。

 私が早くこちらに来ているので、精神年齢は変わらないかもしれないが、大和という基準がある。

 敬一郎から見て、こちらの世界で好ましいと思うことはあっても、大和で会ってそう思えるとは思っていなかった。

 見た目の釣り合いは案外大切だ。

 一回り年上は、遊びにはいいけれど本気には向かない。

 いや、そうではない。

 そもそも彼女は…子を産めない。

 事故の慰謝料を支払う都合で、彼女の受けた治療内容も把握していた。

 子宮破裂により、胎児とともに子宮も失っている。

 自分の立場上、子を産めない女では困るのだ。

 出会った時から、手を出す選択肢などない。

 いや、そうじゃない。それ以前の問題だ。

 

 「旦那様?」


 ギルバートの声に、会話の途中だったことを思い出した。

 

 「まあ良い。楓花さんのことは気に掛けるようにしよう。ケント、これからも頼む。明朝は予定通りだ。」

 「はい。準備します。」



 執務室に戻った敬一郎は、どさりと体を椅子へ預けた。

 

 「お疲れ様でした。お飲み物をどうぞ。この果物は、フーカ様がお持ちになったものです。」

 

 敬一郎は、皿に盛られた薄緑色の粒を見た。

 そのシャインマスカットを1粒口へ入れた。

 パリッとした皮が弾け、果汁が口に広がる。何より、体に何かが染み渡り回復していくのがわかる。

 明らかにおかしな効果なのは、あの家で育った物だからだろう。

 これを土産に持ってくるのだから、本当に危なっかしい。


 「旦那様、ケントの気持ちを抑えさせなくてよかったのですか?」

 

 ギルバートの言葉に顔を上げた。

 顔を上げたまま目を伏せて、睨んだ。


 「恋愛感情など、いくら言ったところでコントロールなど出来ないだろう。それに、明言を避けていた。彼ならおかしなことはしないだろう。楓花さんが応えるなら、大人同士だ。構わない。」

 「本当にそれでよろしいので?」

 「他に何かあるのか?ああ、身分のことか?」

 「…はい。」


 それだけではないが、ギルバートは触れなかった。

 普段感情を見せない旦那様だ。それを指摘しても、ご自分の感情を自覚なさっていないようでは、言うだけ無駄だろう。


 

 敬一郎は、楓花がイルルジオーネに現れてから、過去の記録を漁ったていた。

 御大が亡くなる5年前に公爵家の籍に「娘 フーカ・タチバナ・ヒシ 18歳」として届けがされていた。該当する者がいないため、楓花さんのための身分だろう。

 と言う事は、この世界では私と楓花さんは、義兄妹の扱いになる。

 私は嫡男ではなく、養子として登録されている。 

 

 この世界は、貴族であっても子が大人になれる確率は低い。

 そのため、正式に貴族籍を持てるのは18歳を迎えてからだった。

 彼女は、書類上33歳であり、社交界デビューをしていない高位貴族の娘だった。

 本来なら、18で貴族籍を得ると同時に婚約の発表をする。

 それがない場合は、外に出せない娘であることを意味していた。身体に問題があるか、精神異常などで閉じ込めているなどだ。その場合、届け出をしない事も少なくない。

 そして、この世界で15年の年月が過ぎている。

 登録だけということが、この世界では意味があった。

 

 だがおかしい。

 彼女が事故に遭ったのは、御大が亡くなる3年前だ。亡くなって半年だから、この1年半から2年の差はなんだ?

 事故を起こす2年前、彼女が結婚してすぐの頃には、既にこの世界に連れてくることを計画していたことになる。

 なぜだ?

 なんのために?

 聖なる泉の家と関係はありそうだ。というよりも、それ以外に必要性が見いだせなかった。


 


読んでくださりありがとうございます。

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