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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第14章 タイトル未定

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 「旦那様、天龍がお目通りを願っております。」

 「天龍だけか?楓花さんは?」

 「ご一緒ではありません。天龍のケントとアーサーです。」

 「それは、何事かあったのか?」

 「おそらくは…。」


 おそらくは…ギルバートがそう答えるなら、彼らの様子もいつもとは違うのだろう。

 考えられないが、楓花さんに何かがあったのかもしれない。


 「すぐに会おう。」

 「応接室へ通しております。」

 

 楓花さんがいれば一瞬だが、彼らが自力で来るならば、アートンからヒシフォートまで、定期馬車で片道3日は掛かる。

 楓花さんの車なら、直ぐなのにそれを待たずに来た?

 楓花さんが動けないのかもしれない。

 よほどの事がありそうだ。

敬一郎は、急ぎ応接室に向かった。


 「急用と聞いた。」

 

 天龍のケントとアーサーが床に片膝をつき、冒険者の礼をとった。

 楓花さんといると見ることはないが、これが本来の向き合う距離だった。


 「今回、クリトン領で起きた問題について、辺境伯より密書を預かって参りました。それから、フーカ様に気になることがございましたので、ご報告とご相談に参りました。」

 「そうか、まずは座りなさい。」


 手紙はギルバートが受け取り、封蝋や全体を確認後に盆にのせた。

 敬一郎が一人掛けに座ると、ギルバートが差し出した盆から手紙を受け取った。

 手紙の辺境伯の封蝋を剥がし、開いた。

 

 「また魔物ですか…。しかも…使用人の1割も?」

 「はっ、それは暫定です。その後、周囲を清めました。前回の戦闘から数か月なのにと、フーカ様は広い範囲に清めをしていました。」

 「広く?」

 「はい、半径10kmとおっしゃっていました。」

 「10㎞!?」


 敬一郎は、絶句していた。

 前回2㎞程度で走り回って清めていたことを考えると、明らかに違う何かをしたのだろう。

 

 「今回、住民の移動は求めない手法でした。」

 

 通常のガードでは、許可のない者全てを排除してしまう。

 違う手段を使ったのだろう。

 違う手段?半径10㎞で?

 何をしたのか全く予想ができないが、それで館の使用人が消えたなら魔に効果はあったことになる。

 楓花さんは何者だ?

 ただの大和人のはずだ。

 御大は優秀な魔力使いだった。

 楓花さんはその力を受け継いだとはいえ、御大の力でそんなことは出来るはずがない。

 御大にそのような能力はなかったはずだ。

 どうにも解せないことが多すぎる。


 「楓花さんは、周囲を清めるために車を走らせただけか?」

 「いえ…清めた後、山から流れている川に清草を植えていました。」

 「清草?」

 「気休めだそうです。」

 「それは一か所か?」

 「いえ…」

 

 ケントたちは顔を見合わせた。

 

 「一か所に10株ほどずつ川辺に植えたのが、5か所ほどでした。」

 「川下から川上へ移動して植えた後、容器一つ分の水を流していました。」

 「ほぉ…。」

 「フーカ様は植え終えるとすぐに車に乗られ、走り出しました…」

 「山沿いに走りながら、10㎞を展開していました。それで隣国との境を清められたようです。」

 「そうですか。」

 「途中、何度か水を撒いていました。」

 「水…なるほどね…。」


 おそらく聖水を撒いて何かをしたのだろう。

 

 「その後は、いつも通りにヒルストンとアートンで肉を売り、我々も送ってもらいました。フーカ様はいつもと様子とは違い、ひどく疲れたご様子でした。」

 「リリーからは何も聞いていない。」

 「リリーさんは最初に下ろしました。車の中にいたのでわかっていないと思います。」

 「そうか…。」

 「清草を植えた場所は覚えているか?」

 「はい。」

 「確認したいことがある。今日はここに来るために疲れているだろう。部屋を用意する。明朝向かう。」

 「はい。」

 

 アーサーは、立ち上がったがケントは座ったままだ。

 それを見て、アーサーは少し困った顔をしてから一礼し、出て行った。

 ひとり座ったままのケントと向き合った。

 

 「何か、アーサーには聞かれたくない話か?」

 「はい。フーカ様のことです。」

 

 ケントは、楓花さんの車の助手席に乗っている姿を何度か見た。

 ずいぶんと仲が良いようだ。

 あまり考えられないが、男と女だ。

 もしかしたらそういう付き合いがある?

 ケントは30になったばかりのはずで、楓花さんとは10歳近く違う。だが、この世界であればあと数年で同い年になるだろう。

 うまくいけば10年くらい…こちらの時間で30年くらいは楽しく過ごせるかもしれない。いや、あるはずがない。

 「ケイさん」と呼ぶ親しげな声が聞こえた気がして、思考は霧散した。


 「何か気になることでも?」


 ケントの視線が少しだけ宙を泳いだ。


 「フーカ様の左手の指輪ですが、何か意味があるものですか?」

 「どういうことです?」

 「時折、触れていることがあるのですが、今回消えた者の話を聞いた時に…涙目でずっと指輪を撫でていらっしゃいました。」


 敬一郎は、息をのんだ。

 そうだった。

 まだ指輪をつけているのだ。それも2本…おそらくは亡くなったご主人の指輪とご自分の指輪だ。


 「なるほど…。」


 敬一郎は、両手を組んで額を乗せると息を深く吐き出した。

 こういった場ではふさわしくない行動だが、落ち着かなくてはならない。


 「あれは…彼女の指輪と、お亡くなりになった方との揃いの指輪です。」


 敬一郎の声は、静かに響いた。

 顔を上げられず、息をのんだのがケントなのかギルバートなのかわからなかった。もしかしたら双方かもしれない。


 「それは、大切な方ということですか?」

 「そうですね…。ご結婚の時の指輪です。」


 敬一郎の声は、ため息のように弱く掠れていた。

 ギルバートが茶を用意した。

 それを一口飲み、カップをテーブルに戻した。

 やっと顔を開けると、ケントは険しい顔をしていた。


 「ケントは、楓花さんにどのような感情を持っている?」


 問いかけてから、答えられるはずがないと気が付いた。



読んでくださりありがとうございます。

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