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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第13章 穏やかな日常

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誤字報告ありがとうございます。




 「楓花さん、このままでいてもらえるか?確認してくる。」

 「わかりました。お願いします。」


 音はしていない。

 森の中なのに音がない。

 消えるはずのない、葉や枝のさざめく音さえ消えていた。

 ケントさんとアーサーが警戒に行くのを見送ったまま、周囲を見ていた。

 そんな中に2人の足音だけが聞こえてくる。


 「ナビ、ガードって最大どこまで広がるの?」

 『最大100mです。』

 「ナビ、第2段階はどこまで広げられる?」

 『最大10㎞まで広げられます。1時間で魔石を50%消費します。』


 楓花は、魔石を補充した。


 「ナビ、ガードに聖水をまとわせたい。」

 『110mに第2ガードを展開します。聖水を噴霧することで可能になります。』

 「それでお願い。110mに第2ガード展開。」

 『かしこまりました。第2ガードを110mで展開します。』


 第2ガードのところへ行き、全体に回るように願う。

 外周を回り、10Lボトルからコップに取り分けた聖水を撒いた。

 スマホを片手にタイマーを起動させる。

 50分にしたそれを手にして、車へと戻った。


 「ナビ、第2ガード10㎞に展開!」

 『かしこまりました。第二ガードを10㎞に展開します。』


 警告音と大量の音が辺り一面から上がった。

 10分経過したところで、楓花は第2ガードを閉じ、第1ガードを10mにして、15㎞先へと向かった。

 周囲4面、25㎞四方に聖水のガードを展開したが、どこも異常な音がしていた。

 そのため、さらに外側にもガードを展開した。

 外側では、そこまでの音は聞こえなかったので、一度エカサへ戻り、辺境伯に面会を求めた。


 

 「アシュレイ様急に申し訳ありません。」

 「いえ、フーカ様はもう立たれたと聞いていましたが、何か問題がありましたか?」

 「それが…アーサーさん、説明をお願いします。」


 「はい。辺境伯閣下、私から説明させていただきます。こちらより100㎞先、隣の領との境で休んだところ、大蛇に会いました。会ったというか、一晩ガードに巻き付いて保護されていたようです。」

 「大蛇が?」

 「はい。外側には大量の魔物が転がっておりました。」

 「魔物!?」

 「はい、フーカ様にガードを広げてもらうと、それらは黒い霧となりました。」

 「なんと…。具体的な場所を確認したい。」


 辺境伯が広げた地図を見ながら、アーサーとケントは相談し場所を示した。

 

 「この辺りです。念のため、ここから10㎞こことここ…この範囲と外側のこの範囲までは楓花さんがガードを展開し、あらかた消したはずです。ただ円形のため、届かない範囲があるかもしれませんし、逃げ出している魔物もいるかもしれません。」

 

 辺境伯は険しい表情をしている。

 

 「騎士団長を同席させたい。」

 「そうですね。その方がいいでしょう。」


 お茶が供され、飲みながら待つ。


 「前回の戦いから50年です。もしかしたら…」

 

 辺境伯が組んだ手は、少し震えているようだった。

 しばらくして、騎士団長がやってきた。


 「失礼します。閣下、お呼びと伺いました。」

 「ああ、今…話があってね。座ってくれ。」


 騎士団長が座ると、あらましを説明してくれた。

 

 「魔物ですか?確かにたまに見かけるようになったと聞いたことはありますが…。」

 「ここで、人を弾かないガードを展開してもいいですか?私に敵意がなければ弾かれることはないはずです。」

 「はい、お願いします。その前に騎士たちを配置するので、1時間ほどお時間をください。」

 「もちろんです。私も準備をするので、整ったら中庭へお願いします。」


 

 楓花は、中庭に置いた車で魔石の補充をしていた。

 予備の魔石も助手席との間に準備してある。

 周囲1mに展開しているガードに聖水を注いだ。最初のころは霧吹きをしたけれど、コップで注いでも表面に触れていれば、下に落ちずにガードに吸収される。この間適当に聖水をかけた時に気が付いたことだ。


 中庭に騎士たちが集まった。

 部隊ごとに整列しているものの、中庭を埋め尽くしそうだった。

 

 「先日の戦いで、去った者もいますが、領を守らねばと自覚した者も多いのですよ。」

 

 辺境伯の言葉に、楓花は頷いた。


 「生まれ故郷を守りたいですよね。」

 「ええ、ですから…彼らと協力せねばなりません。先日の聖水は使い切りましたが、あちこちに魔が寄っておりました。」


 辺境伯は、騎士たちが静まったので前へ立った。

 彼らを奮起させるような口上を述べ楓花にガードを広げる許可を出した。


 「ナビ、第2ガードを1㎞に広げて」

 『かしこまりました。第2ガードを1㎞に展開します。』


 ナビの声が響いた瞬間、それが起きた。

 騎士の何人かが「シュパンっ!」と音を立てて弾けて消えた、着ていた制服と装備が音を鳴らして落ちた。


 「え?」

 「は?」

 「ひ!」


 すぐ後ろに立っていた者の数人は腰を抜かし、床へ崩れ落ちた。

 それを見た辺境伯が眉を顰めた。

 騎士団長が、大声を上げた。


 「静粛に!今、消えた者は魔に侵されきった者だ。この様子では、城全体にもいるのかもしれない。消えた者の名を調べ記録し、報告しろ。」

 「はっ」

 「今ので分かったと思うが、これから領内の魔を排除する。近隣で大蛇が出たとの報告もある。心して勤めよ。」

 「はっ!!」

 

 楓花は、ケント達を乗せたまま場所を移しては第2ガードを10㎞で展開していく。

 辺境伯領の隣国との境でも展開し、魔の排除をした。


 それなりの人数が消えたようだ。

 10㎞先まで展開しているので、楓花に実感はない。

 だが、魔に侵されていたといわれても、目の前で…もしくは見ていないところで…家族が消えた者たちの動揺は激しかった。

 

 愛しい人を唐突に亡くしてしまう悲しみは痛いほど分かる。

 しかも、身体が残らないなんて…夢でも見ているようで信じられない。

 それはよくわかる。

 事故で夫の身体は、車と一緒に焼けてしまった。

 加害者は、私を引きずり出すのが精いっぱいだったらしい。

 楓花は、左薬指につけた夫の指輪を無意識に撫でた。

 

 だけど、魔に侵された人は人を襲う。

 そうなる前に必要だとケントたちに説得されていた。

 事情を聞いた辺境伯も騎士団長も同じだった。

 だから、これは仕方がないこと。

 そう思うのに、目の前で家族が消えた人を思うと心が痛かった。


 第2ガードの威力は凄まじかったようだ。

 一通りの浄化を行った楓花は、ヒルストンとアートンに肉を卸した。

 いつもより、1日早く泉の家へ戻った。


 エルの元で心と体を癒す。

 ここにいると、不思議と押しつぶされそうな気持が楽になった。

 ゆっくりとお風呂に浸かり、たっぷりの果物を食べた。

 エルの作ってくれた料理を食べ、今回は薬師のための仕事をせずにスマホで遊んだ。

 

 楓花は、あまり考えていなかったが、ここは聖水に満ちた家だった。

 水を飲んでも、それで淹れたお茶を飲んでも、お風呂に使っても癒してくれるのだ。

 聖水で育った野菜や果物には、癒す力と魔を払う力が凝縮されていた。

 聖水で洗われた服を着て、寝具に沈めば悪夢もなく眠りにつけた。


 そして、聖水を使って空いた容器には、エルが聖水を補充してくれていた。

 十分に回復した楓花は、やっとベッドから起きた。


 「エル、魔を払う方法を教えて欲しいの。それと山全体が魔に侵された時に取るべき対応は何?」

 「山全体ですか?」


 エルの体が一瞬だけ揺らいだ。

 

 エルは、いくつかの手法を教えてくれた。

 先代の本とエルの知識の2本立てだった。

 それらを読み、話を聞いて楓花はいくつかの対策を考えた。

 

 


読んでくださりありがとうございます。

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