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誤字報告ありがとうございます。
「楓花さん、このままでいてもらえるか?確認してくる。」
「わかりました。お願いします。」
音はしていない。
森の中なのに音がない。
消えるはずのない、葉や枝のさざめく音さえ消えていた。
ケントさんとアーサーが警戒に行くのを見送ったまま、周囲を見ていた。
そんな中に2人の足音だけが聞こえてくる。
「ナビ、ガードって最大どこまで広がるの?」
『最大100mです。』
「ナビ、第2段階はどこまで広げられる?」
『最大10㎞まで広げられます。1時間で魔石を50%消費します。』
楓花は、魔石を補充した。
「ナビ、ガードに聖水をまとわせたい。」
『110mに第2ガードを展開します。聖水を噴霧することで可能になります。』
「それでお願い。110mに第2ガード展開。」
『かしこまりました。第2ガードを110mで展開します。』
第2ガードのところへ行き、全体に回るように願う。
外周を回り、10Lボトルからコップに取り分けた聖水を撒いた。
スマホを片手にタイマーを起動させる。
50分にしたそれを手にして、車へと戻った。
「ナビ、第2ガード10㎞に展開!」
『かしこまりました。第二ガードを10㎞に展開します。』
警告音と大量の音が辺り一面から上がった。
10分経過したところで、楓花は第2ガードを閉じ、第1ガードを10mにして、15㎞先へと向かった。
周囲4面、25㎞四方に聖水のガードを展開したが、どこも異常な音がしていた。
そのため、さらに外側にもガードを展開した。
外側では、そこまでの音は聞こえなかったので、一度エカサへ戻り、辺境伯に面会を求めた。
「アシュレイ様急に申し訳ありません。」
「いえ、フーカ様はもう立たれたと聞いていましたが、何か問題がありましたか?」
「それが…アーサーさん、説明をお願いします。」
「はい。辺境伯閣下、私から説明させていただきます。こちらより100㎞先、隣の領との境で休んだところ、大蛇に会いました。会ったというか、一晩ガードに巻き付いて保護されていたようです。」
「大蛇が?」
「はい。外側には大量の魔物が転がっておりました。」
「魔物!?」
「はい、フーカ様にガードを広げてもらうと、それらは黒い霧となりました。」
「なんと…。具体的な場所を確認したい。」
辺境伯が広げた地図を見ながら、アーサーとケントは相談し場所を示した。
「この辺りです。念のため、ここから10㎞こことここ…この範囲と外側のこの範囲までは楓花さんがガードを展開し、あらかた消したはずです。ただ円形のため、届かない範囲があるかもしれませんし、逃げ出している魔物もいるかもしれません。」
辺境伯は険しい表情をしている。
「騎士団長を同席させたい。」
「そうですね。その方がいいでしょう。」
お茶が供され、飲みながら待つ。
「前回の戦いから50年です。もしかしたら…」
辺境伯が組んだ手は、少し震えているようだった。
しばらくして、騎士団長がやってきた。
「失礼します。閣下、お呼びと伺いました。」
「ああ、今…話があってね。座ってくれ。」
騎士団長が座ると、あらましを説明してくれた。
「魔物ですか?確かにたまに見かけるようになったと聞いたことはありますが…。」
「ここで、人を弾かないガードを展開してもいいですか?私に敵意がなければ弾かれることはないはずです。」
「はい、お願いします。その前に騎士たちを配置するので、1時間ほどお時間をください。」
「もちろんです。私も準備をするので、整ったら中庭へお願いします。」
楓花は、中庭に置いた車で魔石の補充をしていた。
予備の魔石も助手席との間に準備してある。
周囲1mに展開しているガードに聖水を注いだ。最初のころは霧吹きをしたけれど、コップで注いでも表面に触れていれば、下に落ちずにガードに吸収される。この間適当に聖水をかけた時に気が付いたことだ。
中庭に騎士たちが集まった。
部隊ごとに整列しているものの、中庭を埋め尽くしそうだった。
「先日の戦いで、去った者もいますが、領を守らねばと自覚した者も多いのですよ。」
辺境伯の言葉に、楓花は頷いた。
「生まれ故郷を守りたいですよね。」
「ええ、ですから…彼らと協力せねばなりません。先日の聖水は使い切りましたが、あちこちに魔が寄っておりました。」
辺境伯は、騎士たちが静まったので前へ立った。
彼らを奮起させるような口上を述べ楓花にガードを広げる許可を出した。
「ナビ、第2ガードを1㎞に広げて」
『かしこまりました。第2ガードを1㎞に展開します。』
ナビの声が響いた瞬間、それが起きた。
騎士の何人かが「シュパンっ!」と音を立てて弾けて消えた、着ていた制服と装備が音を鳴らして落ちた。
「え?」
「は?」
「ひ!」
すぐ後ろに立っていた者の数人は腰を抜かし、床へ崩れ落ちた。
それを見た辺境伯が眉を顰めた。
騎士団長が、大声を上げた。
「静粛に!今、消えた者は魔に侵されきった者だ。この様子では、城全体にもいるのかもしれない。消えた者の名を調べ記録し、報告しろ。」
「はっ」
「今ので分かったと思うが、これから領内の魔を排除する。近隣で大蛇が出たとの報告もある。心して勤めよ。」
「はっ!!」
楓花は、ケント達を乗せたまま場所を移しては第2ガードを10㎞で展開していく。
辺境伯領の隣国との境でも展開し、魔の排除をした。
それなりの人数が消えたようだ。
10㎞先まで展開しているので、楓花に実感はない。
だが、魔に侵されていたといわれても、目の前で…もしくは見ていないところで…家族が消えた者たちの動揺は激しかった。
愛しい人を唐突に亡くしてしまう悲しみは痛いほど分かる。
しかも、身体が残らないなんて…夢でも見ているようで信じられない。
それはよくわかる。
事故で夫の身体は、車と一緒に焼けてしまった。
加害者は、私を引きずり出すのが精いっぱいだったらしい。
楓花は、左薬指につけた夫の指輪を無意識に撫でた。
だけど、魔に侵された人は人を襲う。
そうなる前に必要だとケントたちに説得されていた。
事情を聞いた辺境伯も騎士団長も同じだった。
だから、これは仕方がないこと。
そう思うのに、目の前で家族が消えた人を思うと心が痛かった。
第2ガードの威力は凄まじかったようだ。
一通りの浄化を行った楓花は、ヒルストンとアートンに肉を卸した。
いつもより、1日早く泉の家へ戻った。
エルの元で心と体を癒す。
ここにいると、不思議と押しつぶされそうな気持が楽になった。
ゆっくりとお風呂に浸かり、たっぷりの果物を食べた。
エルの作ってくれた料理を食べ、今回は薬師のための仕事をせずにスマホで遊んだ。
楓花は、あまり考えていなかったが、ここは聖水に満ちた家だった。
水を飲んでも、それで淹れたお茶を飲んでも、お風呂に使っても癒してくれるのだ。
聖水で育った野菜や果物には、癒す力と魔を払う力が凝縮されていた。
聖水で洗われた服を着て、寝具に沈めば悪夢もなく眠りにつけた。
そして、聖水を使って空いた容器には、エルが聖水を補充してくれていた。
十分に回復した楓花は、やっとベッドから起きた。
「エル、魔を払う方法を教えて欲しいの。それと山全体が魔に侵された時に取るべき対応は何?」
「山全体ですか?」
エルの体が一瞬だけ揺らいだ。
エルは、いくつかの手法を教えてくれた。
先代の本とエルの知識の2本立てだった。
それらを読み、話を聞いて楓花はいくつかの対策を考えた。
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