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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第13章 穏やかな日常

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8


 10月に入った週末、楓花はリリーと天龍を連れてサナの家に遊びに来ていた。

 サナの家では、長老とその娘夫婦、サナが暮らしていた。

 イルルジオーネでは夏真っ盛りだった。

 農家では、畑の手入れに忙しい時期だ。

 だから、家にいるのは楓花たちとサナだけだった。

 

 「フーカ、一緒にする!」

 「うん、何を作ろうか?」

 

 サナは積み木に夢中だった。

 積み木とオセロをお土産にしていた。

 長老とサナの両親には、缶に入ったお徳用クッキーをお土産として渡していた。


 「サナ、美味しい物を持ってきたの。食べる?」

 「うん、食べる!」

 

 サナの口に、シャインマスカットを1粒入れた。

 小さな口が動く。頬が膨らむ。

 サナが、もぐもぐして顔をパッと明るくする。


 「おいひい…」

 「そうでしょう?これは、お土産に使えないから、サナと私で食べようね。」


 敬一郎から、泉の家で収穫できる食べ物の配布はしないようにと言われていた。

だから、一緒にいる時にだけ身内のような人と食べる。


 身内のようなというのは、サナ、リリー、ララの3人と天龍のメンバーだ。

 天龍のメンバーにも1房渡していた。


 サナを愛でつつ遊んでいると、サナの父親が様子を見に来た。

 

 「すいません、遊び相手をしていただいて」

 「いえ、こちらこそサナさんに遊んでもらっています。」

 

 サナの父親は、黒髪で黒目だった。

 顔の作りは日本人っぽい…というより、日本にいてもわからない容姿をしていた。

 それに…この間は気が付かなかったけれど、髭を剃ると亡くなった夫に似ていた。

 体は細身で引き締まっているので体つきは違うけれどとても似ていた。夫は色白で真っ黒になったところは見たことがないけれど、肌を焼いたらこうなったかもしれない。


 「どうかしました?」

 「いえ、なんでもありません。」

 「あの…この玩具はフーカ様がお持ちに?」

 「そうです。積み木とオセロといいます。」

 「積み木にオセロ…。」

 

 サナのお父さんは、サナを抱き上げ座った自分の膝へ乗せた。


 「サナの代わりにしてもいいか?」

 「パパもしたいの?いいよ!」

 「では、リリーさん対決しましょう。」


 サナのお父さんは、そう言うと中央に白と黒の駒を置き始めた。

 リリーとサナのお父さんの白熱した戦いをはじめた。

 リリーとサナと対決をすると、あっさりと席を立ち畑仕事へ戻っていった。


 「それじゃあ、また後でな。フーカ様方もごゆっくり。」

 


 その日、昼頃からは空地を借りて、店と治療所を開設した。

 店では、薬やお肉、干し肉などを販売した。

 ここに来る前に、立ち寄った村で手に入れた葛布も一緒に販売した。


 村人たちには、たっぷりの肉をアートンの卸値で販売した。

 それは、猟師の仕事を短期間でも奪う形になる。代替え案として、相当量の肉を与えるのは彼らの矜持を傷つけてしまう。それよりは、一時的にでも迷惑をかけることへ謝罪をし、彼らには硬い角を加工するための道具を贈った。

 彼らは角を持て余していたので、彫りを入れることを勧め、合わせて削りかすは薬になると伝えた。

 

 

 

 夕食は楓花が用意した物をサナの家族に振る舞う。

 その間、サナは楓花の隣に座り、リリーと一緒におしゃべりしながら食事を進めた。


 「これおいしい!」

 「木の実ウサギのお肉は脂が乗っていて美味しいよね。」


 リリーが答えると、サナは満面の笑みを浮かべる。

 

 「フーカの料理好き。」

 「あら、ありがとう。」

 「今日は、木の実ウサギの揚げ焼きと、塩むすびにオーク汁、どれもサナは好きよね?」

 「うん、全部すき。」


 パクパクと食べているサナを見ているだけで癒される。

 好きそうな料理を作ったかいがあった。

 サナにとっては、3か月ぶりの再会だ。前に渡した服は、ぴちぴちになっていた。

 子供の成長は早い。

 サナの母親が、身頃の糸を解き身頃の横にサイズアップさせる布を縫いこんでいる物もあった。

 お揃いのワンピースは、スカートを短くして身頃を大きくするために使用したようだ。下にチノパンをはいていた。チノパンは、ベルトでサイズ調整が出来るため少し大きめを買っていたから、まだ大丈夫なようだ。


 「リリーが治療していたのかっこよかった。私もできるようになりたい。」

 「サナが大きくなって、ご両親の許可が出たらね。」

 「パパ!治療できるようになりたい!」

 「ああ、もう少し大きくなったらな。」


 サナの父親は、許可は出さなかった。

 幼い子への口約束なのにいい加減にはしないようだ。

 サナの母親は困った様子で娘を見ていた。

 そして、祖父である村長も食べながら様子を伺っている。


 今すぐに答えを出せるものではないし、そのうち気が変わるかもしれない。子供の夢ほど揺らぎ安いものもないのだ。


 サナ家族の薬を補充し、肉と塩こしょうをプレゼントすると村を出た。


 

 「一泊するんじゃないのか?」

 「なんとなく、遠慮しました。」


 助手席に乗ったケントさんにそう言うと、楓花は村の外れまで車を走らせた。


 「明日、エカサへ行きますが、今日行ってしまいましょうか?」

 「エカサに?」

 「ええ、さすがにこの時間に伺うのは憚れるから、治療院の庭先に泊めてもらおうかな?」

 「治療院?」

 「はい。ヒシフォート印の治療院が出来ているの。」

 「へぇ…」

 

 楓花がエカサの入り口で、門番に領主邸へ明日伺うことを説明し、町へ入れてもらった。

 治療院へ到着すると、音を聞きつけたハサンたちが出てきた。


 「フーカ先生!」

 「あら、ハサンさんお久しぶりです。」

 「先生、今ちょっと大変な患者が…」

 

 フーカはそれを聞いて、治療院へ入った。

 お腹が大きな生物に嚙みつかれている。

 そして右手足もない。

 

 「これは、何にやられたの?」

 「海の将軍です。」

 「海の将軍…?とにかく海で襲われたのね?」

 「そうです。」

 

 生きているのが不思議なくらいだ。

 私が間に合ったのなら、助けられるかもしれない。

 

 「傷口を洗ってください。お腹は仕方がないので、表面だけで構いません。」

 

 楓花は、ハサンたち治療師にそう指示を出すと万能ポーションを取り出した。

 スポイトで半分ほどを吸い上げ、口へ慎重に落として飲ませる。それからお腹の傷へポーションを垂らした。

 腕や足を戻すことは出来ないが、傷口の出血が収まれば助かるかもしれない。

 ポーションで助けられても、失った血液は補充出来ない。

 腹部を怪我しているなら、そこが修復されるまで食べたり飲んだりもできない。

 大和なら点滴という手段もあるけれど、そういった医療器具を手に入れるのは難しい。

 

 出来ることは…数時間様子を見てから考えよう。

 患者さんにはご家族が寄り添っているし、ハサンたち治療師たちも疲れた顔をしている。


 「患者様の着替えをさせて、一度整えましょう。」

 「はい!」


 楓花は庭先に車を停めることをハサンに伝えて許可を取ると、キャビンで料理を始めた。

 楓花が治療に行ってしまったので、ケントは2階とキャビンのリリーに声をかけてくれたようで、車から降りて体をほぐしていた。


 「今夜はここに泊まります。夜食はいるかしら?」

 

 アーサーとルーシーが顔を合わせた。

 

 「あったら嬉しい。」

 「そうよね。少し早い食事でしたし…少し待ってね。やっぱり手伝ってもらえる?」


 楓花は、作り置きのスープに乾燥パスタを入れて塩を強めにした。

 

 「アーサーさん、長机を出してもらえますか?治療院の皆さん疲れているようだから、食事を出したいの」

 

 ガスボンベ式のコンロを取り出し、1口大に切った木の実ウサギの肉をボールに山盛り分焼いてもらう。

 その間に、楓花はサラダを作った。

 それらから夜食分を取り分けると、治療院の裏口から運び入れた

 


読んでくださりありがとうございます。

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