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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第13章 穏やかな日常

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7


 「一度水で洗ってから、尾の方から刃を入れて、骨に沿って切ります。大きな魚については途中から背側と腹側に分けてナイフを入れても構いません。」

 「わぁ」

 

 リリーとララが2尾ずつ捌いてから、ハナたちも道具を借りてやり始めた。

 5人は今回が初めてだったので、当然だが断面がガタガタだった。


 「一回目より2回目がましだけど、全然綺麗に切れないね。」

 「初めてならそんなものよ。やっているうちに慣れるわ。」

 


 ルーシーが苦笑いをしつつ、慰めの言葉をかけた。

 そもそも練習をトラウトでするのは、やめて欲しいくらいだ。

 大銀貨はする高級魚をガタガタにされるのは、見ていて心臓によくない。

 もっとも、楓花さんは売るつもりもないだろうけど、それはそれ、これはこれだ。


 「せっかくだから、ちゃんちゃん焼きかしらね?」

 「ちゃんちゃん焼き?」

 「美味しいのよ。夕食の準備をしましょうか。アーサーさん、鉄板を焼き台に乗せてもらえますか?」

 「もちろん。用意しよう。」


 子供たちが切った3枚卸しの中から、出来の悪い2枚を取り出した。

 水でよく洗ってから、トレイに乗せ軽く塩を振った。

 キャビンに戻り、みそに同量のみりんを入れ練り合わせる。

 キャベツのざく切りとしめじ、たまねぎを5㎜厚のスライスにしたものをそれぞれボールいっぱいに用意した。

 

 トラウトから水が出てきたので、酒をかけて流す。

 

 「アーサーさん、鉄板は熱いですか?」

 「ああ、もうしっかりと焼けているだろう。脂も塗ったよ。」

 「ありがとう。それなら魚を」

 

 楓花は、トラウトの両面に塩を振ったものを持っていき、鉄板に乗せた。ジューっと焼ける音がした。

 その上にみそだれを多めに塗り広げた。その上にしめじ、玉ねぎ、キャベツを乗せ大きな蓋をかけた。


 「蓋!?」

 「特注ですよ~これで蒸し焼きも出来ます。」

 「蒸し焼き…」


 受注発注審の60㎝長さのある鉄板用の蓋も取り寄せたのだ。

 出来上がってくるのに3か月も掛かっていた。

 あったら良いと思い注文したのに、季節は1巡したようなものだ。


 気にしなかったけれど、トラウトも旬とかあるのだろうか?


 「そろそろいいかも?」

 「開けるよ?」

 「お願いします。」


 アーサーさんが蓋を開けると、濃厚な味噌の匂いが充満した。


 「うわぁ、いい匂い。」

 「これは、匂いだけで美味しい…。」

 

 「切り分けには、ナイフは必要ないので、このフライ返しで切り分けますね。」

 

 楓花が魚をフライ返しで縦に半分にしてから、適当に切り分けた。

 それから、頭側と尻尾側を皿に盛った。

 箸を手に、尻尾側を食べ十分な味に笑った。次に頭に近い方を食べると、脂の味が全面に来る。


 「うん、凄く美味しい。みんなも食べてね。」

 

 アーサーさんが、リリーとララに取り分けると、後はわらわらとしている。

 今日の飲み物は、冷たい麦茶と大和酒だ。

 大和酒は、米から作った酒で米の磨き方により種類もいろいろある。

 今回は、扱いやすい900mlの瓶を用意していた。

 ビールなどと違い、アルコール度数が高い。天龍の大人たちにもキツく感じるだろう。大人4人で1合ちょっとずつだ。

 程よく飲むには丁度いい量のはずだ。


 「飲み物は、いつもの麦茶とリンゴジュースと…お米のお酒です。」

 「米ってごはんの?」

 「そうです。酒精が強いので、気を付けて飲んでくださいね。」


 大人には麦茶と厚みのある細長いグラスに入れた大和酒、子供たちはリンゴジュースをそれぞれが水で薄めたものだ。紙パックの100%ジュースだけど、子供たちには濃いらしい。


 「いただきまーす!」

 

 解体ばかりで疲れているだろうに元気だ。

 天龍のメンバーは解体していたので、一度シャワーを浴びて着替えていた。

 ガードはいつもの10mに戻してある。

 

 楓花は、ちゃんちゃん焼きを一口食べ、酒を飲んだ。

 うん、これは美味しい。

 幼い頃、お正月に親戚一同が集まった時の味だ。

 お年頃になると、諸事情により参加出来なくなったけれど、懐かしい味だ。


 「これ、美味しいですね。」

 「この味噌ってスープに使っているのと同じ?」

 「同じだけど、みりんを入れてあるの。」

 「みりん?」

 「甘味のあるお酒です。お砂糖より優しい味で、ちゃんちゃん焼きにはとても合うの。」

 「これ、この酒ととても合う。」

 「そうね、合うけど本当に酒精が強いみたい。」

 「飲みすぎには気を付けてくださいね。」


 テンとダンは、物凄い勢いで食べていた。

 鉄板の端に乗せた焼きおむすびも熱いと言いながら、食べている。 

 

 「フーカさん、これめちゃくちゃおいひい」

 「ちょっと、テン口に入ったまましゃべらないで。」

 

 ルーシーさんが、テンを肘でつついているが気にしていないようだ。

 この和気藹々とした時間は、大和では手に入れられない時間だ。

 楓花は、この時間を大切にしたいと思っていた。 

 





読んでくださりありがとうございます。

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