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治療院の院長であるハサンは、冷静に患者を確認していく。
治せる可能性は、半分といったところだろうか?
頭は、中身が大丈夫かどうかはわからない。
ここで出来るのは、外傷を治す事だ。
「この傷であれば、中級の癒し水と消毒薬で治せる。だが、頭の中身にどこまで効くかわからないが、高級癒し水を飲ませた方がいいかもしれない。中級の治療なら金貨2枚、高級の治療は金貨8枚だ。」
「それ以上の治療は出来ないのか?」
「ここでは難しいな。」
「ならば高級薬を使ってくれ。それがここで出来る一番の治療なのだろう?」
「そうなる。治る補償はない。」
ぐっと患者の親は手を握った。
拳を作り、唇を噛む。
それからやっと「それでも、試してくれ」と声を絞り出した。
ハサンは、ふと霧吹きを思い出した。
意識のない患者に薬は飲ませられない。
傷をよく洗い、薬ではない、特別な水をひと吹きした。
それから、高級消毒液を患部に吹きかけ、意識を取り戻したところで高級癒し水を3本飲ませた。
「気分はどうだ?どこが痛い?」
「え?頭が割れそうに痛い…。」
「薬を与えたばかりだ。少し様子を見よう。どうしても痛いなら、これを飲むか?」
ハサンが取り出したのは、痛み止めだった。3時間ほどしか聞かないし6時間置かなくてはならないが、これを飲んで眠れるならそれもいいだろう。
「飲む…。」
辛そうな様子の患者に、薬を飲ませると入院用の部屋の手配をした。
頭を打ったのなら、急変の可能性がある。
「今日はここに泊まってください。何か容体に変化があったら教えてください。」
「泊まり?」
「ええ、ここであればすぐに手当が出来ます。それに動かさない方がいいでしょう。」
「そうなのか!?」
「ええ、頭を打った時には気を付けることが多いのです。」
ハサンは、噛み跡の患者の元へ戻り、様子を確認すると明日来るように言い聞かせて帰した。
それから、他の患者を診ていた。
「すいません!息子が震えて!」
ハサンは、治療を終わらせて手を洗って患者の元へ行った。
痙攣しているので、舌を噛まないように口に布を噛ませる。
これは、奥の手か。
ハサンは、金庫から高級ポーションを取り出した。
頭に高級ポーションをかけて様子を見る。
スポイトで吸い上げ、両耳から少し注入した。
耳は脳に近いと習ったので、少しでも脳の修復が出来ればと願っての事だ。
「医院長、それ…」
同じ治療師達が、呆然としていた。
「すまない。使った事の証明を頼む。」
「はい、それは…ですが、それを使うのは最終手段では?」
「では、この患者が最終手段を使う相手ではないと?頭を強打している。」
「いえ…そうですね。この様子では…確かに最終手段を使うしかありません。」
「理解してくれてありがとう。」
治療師達の反応に、患者の父親が不安そうに声をかけてきた。
「あの…治療師様、それは何か特別な物ですか?」
「こちらは、高級ポーションです。」
「高級ポーション!?そんな物をお持ちだったのですか?」
「持ってはいますが、これ1本だけなのでね。」
「高級ポーション…」
患者の親の手が震えていた。
高級消毒薬も癒し水も高級ポーションを使って作られているが、そんな事を普通は知らない。高級ポーションに類似した薬と思っているだろう。
だが、高級ポーションは違う。
数年に1度オークションに出されては、その価格が新聞記事になるほどの品だ。
「ありがとうございます。ありがとうございます。息子のために希少なポーションまで、使っていただき。感謝します。何年かけてでも、見合うお代をお支払いします。」
患者の親が、床に頭を付けた。
今すぐに支払えないのは当然だ。金額が大きすぎるし、無理に請求しなくてよいと言われてはいた。
「いえ、治療ですからね。追加でかかるのは金貨8枚です。治療上必要な時は、高級薬の治療費の2倍までです。それより床は綺麗ではありません。患者のためにも石鹸で手を洗ってきてください。」
「はぁ…そりゃあ、申しわけない。すぐに洗います。」
患者の痙攣が落ち着いて来た。
ポーションを口に入れて飲ませる。
ぼんやりとしてはいるが、苦しさは落ち着いたようだ。
しばらく、眠ってもらう。
それから、数時間おきに患者に高級ポーションを飲ませた。数滴ずつしか飲ませられなかったので、ひと瓶飲ませるのに朝方までかかってしまった。
翌日、患者の顔色は落ち着いて来た。
さらに翌日には、古傷も消えてきていた。
「もう大丈夫かな?」
「はい、気分もいいし痛みも治まりました。」
「まだしばらくは頭がくらくらしたり、痛かったりするかもしれません。家に帰ってもいいですが、トイレに行く以外は寝ていてください。1週間は動かないように。」
「わかりました。大人しく過ごします。」
患者は、笑顔で帰っていった。
患者の親は、金貨16枚を支払い深々と頭を下げていった。
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