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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第12章 治療師

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10万pvありがとうございます♪

読んでいただけて嬉しいです。

評価、応援ありがとうございます。

励みになります。


 薬師の館とは、薬師たちや調合師のいる領主館裏山にある関連施設を指していた。

 薬師たちが週に5日、日に1人辺り50~100本前後の下級ポーションを作り続けていた。

 そして、調合師たちはその3割を3種の薬にしていた。

 これらのポーションと薬の半分は、治療院で使われる。

 残り半分は、治療院併設の薬局や、いくつかの商会を通して販売されていた。

 


 春になり町は活気づいていた。

 農作業が活発になり、怪我人も増える時期だった。

 治療師になった者は80人にも上った。

 

 各治療院には、治療師が3人から5人配属されていた。

 だが、それだけで治療院の運営は出来ない。受付に1人、受付兼会計計算に2人が配置された。その他に、記録を取り補助する者が治癒師と同人数、湯冷ましを作る者が1人、警備3人も加えると14人から16人が働いていた。

 各院には1名の院長と2名の副院長も決められていた。



 クリトン領、領都の治療院、院長であるハサンは治療を行っていた。

 1か月ほど前、ヒシ侯爵閣下からの指示を受け、この港町エカサにやってきた。

 治療師5人でやって来たのだが、2人が早々に配置変えを申し出てしまい2人の補充待ちだった。

 その前に2か月程、ヒシフォートの治療師育成所で研修を受け、初級治療師の認定を受けていた。

 治療師制度は出来て間もないことから、資格継続の条件として半年後に育成所へ戻り研修を受ける必要があった。最初の研修は、最低限の知識の取得だったからだ。

 それでも、町へ派遣されたのは、それだけ治療する者が必要だからだと聞いていた。


 治療の前に、金貨2枚を預かる。

 患者ごとにカルテを作り、日付と症状、手当の手法とに使った薬品名を記録するのは助手の役目だ。

 ほとんどの患者は、深い切り傷や抉った傷だった。

 患者の口に布を噛ませると、体を押さえつけ、傷口を湯冷ましで洗う。全ての汚れを取り除かないと、中に残ってしまう。そのまま修復してしまうと、一生痛みに耐えなくてはならないかもしれないと教わっていた。

 今、目の前にいる患者の傷口は、泥まみれだった。それを湯冷ましで流してから傷口を開いてさらに湯冷ましを当てた。


 「もうちょっとだ、頑張ってくれ。」


ハサンは傷口を見て、ピンセットという先の細い道具を使い、慎重に全てを取り除いた。

 

 「今、消毒するからな。」

 

 傷にゴミが多い場合、使う薬は消毒薬になる。

 膿んでしまう前に、雑菌を消す必要があるからだ。

 汚れを洗い流し終えると、ハサンは傷口に消毒液を吹きかけた。

 この治療院用の消毒液の容器は、押すと中の液が吹きかかる仕組みになっていた。


 「ぎゃっ…ぐっ…」

 「耐えろ。これをしないと化膿して腕を落とすかもしれん。」

 

 患者が、首を縦に振った。

 それを見て、あと4回吹きかけた。

 これで傷口全体の消毒は完了だ。傷が深く長い場合は、くっつくまで時間がかかる。

 ハサンは手を石鹸で洗った。

 それから助手に傷を合わせるように両手で押し付けてもらう。ハサンは、傷口を引き合わせながらテープというものを貼り付ける。テープの幅は5㎝で中央にガーゼというものがついているらしい。

 傷口には、ガーゼが当たるが、その周辺をがっちりと押さえることで傷が開くのを防ぐらしい。それを張り付けてから、包帯という細長い布を巻き付けた。


 「傷が深いから、今夜は熱が出るかもしれない。泊まるか?それとも明日もう一度来るか?」


 患者は脂汗を流している。かなりきつかったのだろう。


 「明日もう一度来ます。」

 「わかった。それなら、初級癒し水を飲んで帰っていいぞ。明日もう一度来なさい。」

 「ありがとうございます。」



 次の患者は、腕の傷が膿んでいた。

 ついこの間までなら、切り落とす一択だろう。顔を見ると、顔色も土気色をしていて、このままだと数日の命のように見えた。


 「治療師様、どうにか父さんを治してくれませんか?」

 「やってみないと分からないよ。」

 「はい、お願いします。」


 湯冷ましで、丁寧に傷を洗い流していく。

 痛がらないということは、麻痺してしまったかな?


 「牙だね。何にやられたかわかる?」

 「魚に…大物だったんだ…」

 「なるほど…。やってみる価値のありそうな治療法はあるけれど、最初にもらった金貨2枚だと足りない。追加で金貨4枚出せるなら、高級消毒薬を使える。ただし、絶対に治せるとは言えない。試す価値はあるけれどどうする?」


 娘が絶句していた。

 無理もない。

 王都に行けば倍以上かかるが、庶民平均所得の1年半分の給金を言われて、ポンと出せる者は少ないだろう。

 娘は、逡巡しそして口を開いた。


 「金貨6枚…わかりました。お願いします。どうにか助けてください。」

 「わかった。じゃあ、ちょっとみんな押さえるのを手伝ってくれ。」

 


 皆に押さえつけてもらい、傷口へ高級消毒薬を吹きかけた。

 白い泡が沸き上がる。

 皆でじっと見ていた。みるみるうちに赤味が引いていく。

 

 「おぉ…」

 

 ハサンは傷口を押した、黄色い液が出てくるので、押して黄色い液をガーゼでふき取る。もう一度高級消毒薬を吹きかけた。


 「よし、このまま少し置くぞ。触らずに待つように。これも飲んでくれ。」


 ハサンは、高級癒し水の口を開けて渡した。

 患者はそれを受け取ると、袋ごと咥えて飲み干した。

 

 ハサンは、それを見届けると、他の患者の元へ向かった。

 患者を3人ほど見終えたハサンは、先ほどの噛み跡の患者の元へ戻った。


 「どうですか?」

 「すごいよ。体が楽になった。それにこの傷を見てくれよ。」

 

 赤身が引き、歯形が残っているだけだった。

 浸出液も止まっているようだ。


 「さすがに高級薬なだけはあるな…。」

 「こんなに楽になるなんて思ってもいなかった。」

 「そうか…治りそうでよかったよ。」

 「治療師様、ありがとうございます。」

 

 患者の娘も安心したのか、笑顔を見せた。

 


 ドアが大きな音を立てて開けられた。

 その後ろから、板に乗せられた男が運ばれて来た。


 「助けてやってくれ…」

 

 治療は、基本的に順番だった。

 だが、明らかに大ケガの場合は別だ。

 

 「何があった?」

 「建築途中の建物から落ちた。多分頭を打っていると思う。」

 「そうか…頭を打ったなら、厳しい。外傷は薬である程度治せるが、頭か…」

 「俺の一人息子なんだ…金なら用意する。どうにか助けてくれ…。」

 


読んでくださりありがとうございます。

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