↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第11章 日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

165/259

8


 楓花が頬に手を当てる。


 「あら、キスをされてしまったような?」

 「それは、妖精の祝福でございます。」


 ギルバートの声が響いた。

 

 「祝福?」

 「はい。気まぐれな妖精でございます。祝福を与える事は非常に稀と伝え聞いております。私は、今奇跡を見ました。」

 「奇跡?」

 

 戸惑う楓花だったが、敬一郎も戸惑っているようだ。

 

 敬一郎にしてみると、前回見た時にはドレスはボロボロだったように思う。

 それを、あのレース編みで補修したのだろう。美しいレースのドレスを身にまとっていた。


 楓花にとっては、エルにされたことがないので驚いただけだ。

 敬一郎は、スマホを使いたいだろうと思い、人払いをした。


 人払いをしても、ギルバートは残っている。

 うん、ここで聞いてもいいのだろうか?


 「あの…この間のジャム…」

 「ああ、あれですね。驚きましたよ。ギルバートの皺がみるみるうちに消えて。」


 敬一郎はそう言いながら笑っていた。

 

 「ごめんなさい。こんな事になると思っていなくて…。」

 「ギルバートは喜んでいますよ?」 

 「はい、ご本人から聞きましたが、でも…その…。」

 「どうしました?」

 「せっかく素敵な老執事然とした方を若返らせてしまって…お屋敷の貫禄とか…。」

 「はぁ…」

 「いや、もう…。」

 

 楓花は、謝っているようで謝っていなかった。

 渋い老執事を若返らせた事を後悔しているだけだ。


 「ああ、なるほど!」


 そんな楓花を見ていた、敬一郎が手を打った。

 

 「あなたのお好みでしたか!」

 「え?ちょっと待って…。」


 楓花は慌てて両手を出して、敬一郎を止めようとした。

 

 「変な意味じゃないのよ。」

 「へぇ」

 「見ているだけでいいの。」

 「まあ…」

 「癒しだったの!」


 言ってから、楓花は口に手を当てた。

 ああもうっ。

 自分でしゃべってどうするのよ。

 顔を上げると、敬一郎はニヤニヤとしている。


 「旦那様も年上でいらっしゃいましたし、まあ…そういうこともあるでしょう。」

 

 敬一郎の表情はなんだか歪んで見えたのは、私が涙目だからだろう。


 「それはまあ…でも、本当に不用意だったわ。」

 「いえ、そんなことはありません。1瓶ずつ残してあります。ギルバートのような苦しみを持つ者と会った時に使わせてもらいます。」

 「それって…勇者一行の?」

 「ああ、お聞きになられたのですね。」

 「少しだけ…。」

 

 敬一郎さんは、顔を上げた。ドアの近くまで下がっていたギルバートさんがやってくる。


 「あのジャムを食べさせたい者はいるか?」


 敬一郎さんの問いかけにギルバートさんは、顔を歪めた。


 「いえ、残念ながらおりません。」


 「おりません」ということは、勇者一行は生きていないのかもしれない。楓花は二人のやり取りを見ていた。


 「ですが、あれから50年です。最近のホワイトジャイアントの発生を見ても、近いうちに大物が出ても不思議ではありません。」

 「そうだな…。」

 

 大物?

 あのホワイトジャイアントよりも大物?

 それは相当にまずいのでは?


 「今であれば、聖女様もいらっしゃいますし…」

 「あれ?違うのでしょうか?」


 ギルバートがこちらを見て敬一郎を見た。

 

 「楓花さんは、過去結婚していましたが、聖女です。」

 「え?敬一郎さん、それは違う。」

 「結婚していたというのは…白い結婚ですか?」


 ギルバートさんが、呆気にとられた顔をして聞いてくる。

 思わず、答えてしまった。


 「いえ、普通に当たり前の夫婦でしたよ。」

 

 楓花は失礼だと思いながら答えた。

 白い結婚と思われるなんて…。

 ギルバートさんは相変わらず呆けた顔をしている。


 「えっ…と…旦那様、どういうことでしょうか?」

 「楓花さんは、聖女で間違いない。聖水の妖精も認めている。」

 「あの、敬一郎さん?」

 「もしかしたら、こちらでしていないから聖女のままなのか?」

 「敬一郎さん?」

 「あ、失礼。えっと…なんでしたかね?」

 「今、とても失礼なことを考えませんでしたか?」

 「いえ…」

 

 楓花はじーっと敬一郎を観察した。

 確かに、こちらではそういうことはしていない。

 でも、だからと言って…口に出す?

 言っていいことと悪いことがある。

 ベッドの話なんてプライベートな事例を他人に言うはずがないのだ。


 「楓花さん、これを聞くのは大変失礼と承知しているのですが、こちらに恋人はいますか?」

 「いませんよ。居たら…こんなにこちらには来ていません。」

 「そうですよね。」

 「なんで私が聖女扱いされているの?」

 

 敬一郎に問いかけると、一枚の紙を置いた。


 ――――――――――――

 聖なる泉の妖精が汲んだ聖水

 聖女の噴霧器(聖水入り)

 ――――――――――――

 

 「これは?」

 「楓花さんの持って来た品を鑑定するとそれが表示されます。」

 「え…これが?」

 

 噴霧器はスプレーを視たらこうなっているってこと?

 そんな馬鹿な…。

 

 「まあ…泉の家は引き継ぎましたが、聖女でなくとも住める場所ですよ。そうでしょう?敬一郎さん。」

 「それはそうかもしれませんが…。」

 「とにかく、私はそのような者ではありません。」

 「はぁ…わかりました。そういう事にしましょう。とにかく、ギルバードは、貴方のジャムで若返った。それだけです。」

 「そうですか。わかりました。」


 子供のような言い方をした敬一郎に対し、楓花も返した。

 なんだが、落ち着かない。


 「敬一郎さん、少し場所をお借りしますね。」

 

 そう声をかけて、最初の目的を果たすためにスマホを開いた。

 

 

 執務室で妖精の実体化を見た従業員たちは、その奇跡を同室の者に話した。

 外の人には絶対に言わないが、屋敷内の事を屋敷内の者同士で話すのは普通の事だった。咎められる性質のものではない。

 だって、奇跡を目にしたっていう情報共有なのだ。

 


読んでくださりありがとうございます。

リアクションと合わせて星印を★★★★★~★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。