4
「それでは、出かけてくるね。」
エルに声をかけると、楓花は車へ乗り込んだ。
ヒシフォートでリリーさんを誘い、アートンで天龍を誘った。
楓花とリリー達は、癒し草などの薬草の採取をする。
ケントとアーサー、テンとダンで狩りをする。いつもの連携だった。リリーさんとハナさんの身長がぐんぐん伸びてきていた。テンさんとダンさんも伸びているけれど、女の子たちほどの伸びではなかった。
採取で少し違うのは、楓花が根ごと採取しているところだった。
スコップを使い、離れたところから少しずつ採取していた。根から抜いた薬草は、周囲の土と共に苗用のポットに入れていった。それをトレーに乗せ、キャビンのルーフへと積み込んだ。
「それって育てるの?」
リリーの問いかけに楓花が笑った。
「試してみるの。育ったらいいなと思って…。」
ヒシフォートの薬草園では、様々な薬草を育てる試験を始めていた。
リリーは、それを知っているので聞いてきたのだろう。
半分をヒシフォートで降ろし、もう半分は泉の家へ運ぶつもりだった。
「そうだ、明日帰る前に大人しそうな角ウサギを生け捕りしたいの。一応、罠を用意してきたから、親子一緒に捕獲できるなら、そのほうがいいかな?」
一般的な小型動物用の捕獲用の箱罠を4台ほど持ってきていた。
エルと一緒に練習する中で、畜産出来たら食料事情が変わると思ったのだ。
楓花の力では、ずっと維持できないため、泉の家には連れ帰れない。ケイさんにお願いして、持ち帰れたら小屋をもらう手筈になっていた。
「わかった。やってみよう。」
8月のイルルジオーネは、秋だ。
そろそろ寒くなって来ていた。
夏の終わりに生まれた子ウサギたちも、育ってきていて親ウサギについている。捕獲するなら、今がいいだろう。
捕獲バブルは、その場で抑えるためだけにしか使えなかったが、親子2組9羽を箱罠に追い込むことはできた。
ガードの外側に置いておく。
水(聖水)を与え、片付けの間は放置した。
帰る直前に再度捕獲バブルに包み、倉庫に乗せた。
直ぐにヒシフォートへ向かうと、檻を下した。
「本当に捕まえてきたのですね。」
「ええ、今度雄を捕獲してくるので、繁殖をさせてみませんか?」
「試す価値はありますね。」
ケイさんは、興味があるようで出てきてくれた。
相談をし、小さな小屋へウサギを入れる。
ウサギたちは案外大人しい。
餌などは、雑穀か木の実や藁でいいだろうと話した。
ケイさんにウサギを預けると、リリーと共に森の中の薬草園へ向かった。
森の中なのは、騎士団が守れるのと秘密保持の意味もあった。
リュシーに声をかける。
「癒し草と露草の苗をもってきたわ。」
「それは、貴重な物を…」
「フーカ先生、いくつかわかったことが…」
「そうなの?でも、今はごめんなさい。また夕方戻ってくるから、その時でもいいかしら?」
「はい、それはもちろんです。お忙しいのに申し訳ありません。」
「いえ、それではまた後ほど。」
楓花は、申し訳ないと思いつつリュシーに挨拶をして車へ戻った。
車に乗っている天龍をいつまでも拘束していては、申し訳ないからだ。
天龍とともにヒルストンへ向かった。
いつも通りに、ヒルストンとアートンに肉を卸すと、ヒシフォートの薬草園に戻った。
「リュシーさん、お待たせしました。」
「いえ、お戻りいただけて感謝します。」
「それで、何がわかったの?」
「まず、癒し草やフーカ先生が持ってきてくださる薬草のほとんどですが、栽培には以前先生がおっしゃっていた草木灰と焼き石灰を混ぜると根付きやすかったです。」
「まぁ、そうなの?」
「はい、それとライトフラワーは株を大きくするためには、条件がありました。」
「まぁ、何かしら?」
「この先生が用意した特別な水を水1Lに対して1滴入れた物を与えると、翌朝にはぐんと大きくなります。」
リュシーが見せたのは、スポイトのついた容器に入れた聖水だった。それとスプレー容器だ。
「与えるって、水として根本に与えるじゃなくて株に噴霧なの?」
「はい!そうです!驚きますよね。」
「ええ、驚きました。」
「それで、うまく育たなかったヒールベリーですが、それを応用してフーカ先生の魔道具で試してみました。」
リュシーが魔道具と言ったのは、水耕栽培の装置だった。水耕栽培装置は業務用の大型の物を雨や虫が入らないようにビニールハウスに入れていた。ビニールハウスと言っても、一部をネットにして空気が常時入れ替わっている。
「ヒールベリーに応用ですか?」
「はい、この装置に入れる水に先生のご指示のあった、動物の骨を焼いた物、草木灰を毎週入れ替えているのですが、そこにこの液を0.01%で入れるのです。」
「へぇ…」
「噴霧ではなく、さらに薄い濃度で入れると、翌週になっても水が腐らずこのように生き生きとしています。」
「まぁ…面白いですね。」
聖水がなければ育たないなら、自分がいないと継続できないけれど…まあ、時間が経てば解決策を探してくれるだろう。
「でも、この液に頼らない方法を見つけられるなら、そうしてくださいね。」
「はい、もちろんです。」
「この土地に慣れたら自然に育つかもしれませんし、少しずつですね。」
「はい、それを期待している部分もあります。」
リュシーさんの薬草園への熱意は並々ならないものがあった。
薬草園と騎士団の間には、薬師と調合師の生活している寮がある。
リュシーさんもそこで生活している。
新しく入ってくる見習いたちは、先輩である薬師や調合師を見習い、薬草園の手伝いをしているらしい。
畑が大きくなるようなら、畑の手伝いもいずれ雇うだろう。
でも、草木灰と焼き石灰ね…それで根付きやすいなら、これから植える泉の家でもやってみようかな?
「草木灰と焼き石灰を少し分けてもらえますか?」
「もちろんです。すぐにご用意しますね。」
リュシーが小屋へ行ってしまう。
楓花は、ビニールハウスの中のヒールベリーを見ていた。
ヒールというくらいだから、癒しの力があるのだろうね…。
楓花は、戻ってきたリュシーから草木灰と焼き石灰の入った壺を受け取り、泉の家へと帰った。
読んでくださりありがとうございます。
リアクションと合わせて星印を★★★★★~★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです。




