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夜は、いつも通り本を読んで過ごす。
ある晩、楓花は、本を読む手を止めた。
【捕獲バブルは、対象自体にガードを張り、ガート内側からの衝撃に対してガードする。対象を閉じ込めることが出来る。保持時間は、術者による。術者のイメージ力が必要なため、補助用の指輪あり。】
「へぇ…捕獲バブル…指輪?」
本の裏表紙に厚みがある。スライド式のレバーが裏表紙の内側についていた。スライドさせて本自体を慎重に傾けると、指輪が3つ出てきた。
・捕獲バブルの補助指輪:術者の能力に応じるがガードの展開を補助する。
「そのままだね…。これも吸収されるのかな?それとも、付け外し可能?」
大和では使えないから、泉の家に行ったら試そう。
3つ共同じ表記だね。
だったら、2つは戻しておこう。
指輪を1つだけとりだし、手に持った。
バブルか…泡ってことよね?海の中で丸い輪の中で出ようと叩いているイメージがわいてきた。泡だったら弾けちゃう。
ガードってアニメの影響なのか、楓花のイメージは円形だ。
円形であれば、内部圧力に強いというのもある。ガスタンクが丸いのは、内部圧力に耐えるためだろう。でも、生き物を入れるなら…呼吸ができないといけない。
バブルの名前は無視して、弾けないものプラスチックのように固いというよりは、気体を通す布のようなもので丈夫。ゴムのように伸び縮ができるなら、その方がいい。
そんな素材あったかな?いや、イメージだから、存在しなくてもいいもの?
楓花は、指輪を持ったまま、水を入れても通さない、気体だけを通す透過膜のような効果がゴム素材で、破れない素材のイメージを膨らませていった。
「とりあえず、この指輪はしまっておこう。指輪ケースは…これでいいかな?」
プラスチックの透明ケースにティッシュに包んだ指輪を入れた。ケースには捕獲バブルの指輪と書いた。忘れないように、キャンピングカーに乗せる。
週末、いつものように金曜の夜に泉の家へ向かった。
仕事終わりに着くとちょうど深夜だ。
エルが出迎えてくれるので、挨拶をすると朝8時まで、寝室のベッドで休む。
「ご主人様、朝ですよ。起きられますか?」
「ん?うん…エルありがとう。」
「コーヒーを淹れますね。」
「うん」
長耳の妖精メイドに起こしてもらうとか、本当にメルヘンだ。
エルはエルだから忘れてしまうけれど、本当は妖精で実態を持たないのよね。
「ご主人様、どうかしましたか?」
「ううん、エルがかわいいなと思って…。その衣装ってどうしてその形なの?」
エルが首を傾げ考えているようだ。
「ご主人様のお好み、もしくはイメージに沿ったものと思いましたが…。どのようなものがいいですか?」
「今のが、いいよ。似合っている。」
私の好みやイメージか…、私がミニスカメイドをイメージしていたら、そういう姿だったのだろうか?
エルのこのロングスカートのきっちりした姿が萌えだけど…男性漫画にあるような、ふわふわミニスカメイド服やニーソは…うん、イメージじゃないね。絶対領域の可愛さはわからなくもないけれど、メイド服にはいらないや。
「そうだ。捕獲バブルって知っている?」
「捕獲バブルですか?ガード内に持ち込みする時に使いますね。主に獲物に使えます。」
「へぇ…」
「ご主人様がお使いになるのですか?」
「うん、やってみようと思って…補助の指輪もあるし…。」
「かしこまりました。練習でしたら、バスルームで水を閉じ込めて浮かせてみてはいかがでしょう?」
「それは楽しそうね。やってみましょう。」
楓花にとっては、これが初めての魔法らしい魔法の行使だ。
わくわくしてくる。
わくわくするのに、年齢は関係ないね。
若い時は思わなかったけれど、年齢を重ねても気持ちの面では若い頃と変わらない。
「ご主人様、水を包んで持ち上げるイメージをしてみましょう。」
指輪を付け、エルのサポートを受けながら、イメージを具現化させていく。
集中力が必要なようで、結構きつい。脂汗が出てくる。
初日は、小さな玉を作り浮かせるところで弾けてしまった。
それすらも5回に1回の成功だ。これでは、まず使えない。
この家にいる間は、毎日練習することにした。
「シャインマスカットが成りました。ご主人様の持ってきた木の果実です。」
パンと牛乳とチーズオムレツにサラダの朝食を食べ終えると、エルがシャインマスカットを持ってきた。
洗ってあるようで水滴がついている。
「大粒に育ったね。」
「はい、小さい房も込みですが10房できています。」
「そんなに?たった2本の苗木にしては上等ね。」
楓花は、大きな一粒を摘まんで口に入れた。
パリッとした皮が弾け、たっぷりの果汁が溢れてくる。
うん、この食感がたまらない。間違いなくおいしい。糖度もかなり高そうだ。
これが楓花にとっては、年に3回も収穫できるなんて、なんて幸せなの。
苗木を増やそうかな?
イチゴとシャインマスカットだけは、いくらあっても嬉しい。
ここの果物はどれも美味しいけれど、シャインマスカットだけは別格だ。
オレンジのような甘い柑橘類も美味しいし、リンゴも数種類ある。梨も洋ナシも美味しい。巨峰も甘味が強くておいしいけれど、手が汚れるのが難点ね。
畑では、スイカにメロンも作っていて、果物は豊富に食べられる。とても美味しいけれど、それでもやっぱりシャインマスカットだけは別だ。
うん、苗木を増やそう。
せめてあと2本、そうしたら4か月ごとに20房くらいのシャインマスカットが食べられる。それって幸せだ。毎週1房持ち帰れるし、敬一郎さんになら、お裾分けをしてもいいだろう。
楓花は、聖水で育った特別な野菜や果物をたっぷりと食べている。
その一口ごとに、ほんのわずかに力が強まっていることには気が付いていない。
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