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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第11章 日常

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 楓花が自宅の庭に出ると、思ったほど畑は荒れていなかった。

 ローズマリーやバジル、オレガノなどのハーブ類は少々育ち過ぎて増殖しているようだ。

紫蘇も思ったより育っているので、食べられそうな真ん中から上を収穫した。

 育ちすぎになっている蕪や小松菜も収穫した。少し硬いかもしれない。

 鈴生りになったミニトマトは、籠いっぱいになってしまった。

 しばらくは、野菜生活になりそう。


 小松菜と蕪は塩に漬けて漬物にしてしまう。

 食べきれない時には、これがいい。

 

 実家にいた時なら、樽で漬けたけれど樽はないので、ジッパー袋の特大サイズを使う。洗った小松菜と塩を交互に入れた。最後に押しながら空気を抜いて冷蔵庫の野菜室に入れた。

 蕪は、実と葉を分けてよく洗った。実を袋に詰めて塩をした。上に葉を乗せて、たっぷりの塩をして空気を抜く。それを数袋作った。こちらも冷蔵庫の野菜室へ入れる。

 野菜室の半分が漬物で埋まってしまったけれど、仕方がないよね。

 しっかり漬かったら、キャンピングカーに移そう。

 

 ミニトマトは、本当に沢山だった。

 トマトソースにするしかなさそうだけど、手間と時間がかかってしまう。

 ん~…イルルジオーネでやったほうがいいだろう。袋へ分け入れるとキャンピングカーの冷蔵庫へ入れた。

 

 キャベツなども冷蔵庫へ入れ、手元に残すのは3玉にした。

 それでも十分に多い。

 お昼には、オーク肉とキャベツのお好み焼きを作って食べた。


 楓花は、手をにぎにぎしてみる。

 バタバタしていたけれど、握力がある気がしていた。

 事故以来、左手の親指と人差し指はまともに動かなかった筈だ。キーボードを定位置でうつ程度にしか使えなかった。それが使えていた。

 多分、ヒシフォートへ行った時に、敬一郎に言われて飲んだエリクサーが見えない傷を治してくれたようだ。

 

 「万能ポーションって、チートアイテムだね。」

 

 最近、お肌の調子もいいし、体調不良にもならない。

 イルルジオーネへ行って、楽しくて興奮していたから元気だと思ったけれど、それだけではないのかもしれない。

 万能ポーション…エリクサーとも言われているようだけど、本当にすごい。

私のもう治らないと言われていた握力が戻せた。成分分析したいけど、職場でするわけにもいかない。どうやって分析しようかと考え始めた。

 


 庭で収穫した大量の野菜は、角ウサギ肉のポトフにした。

 夏にポトフは合わないけれど、生で食べるには無理がある。嵩が減る煮込みがいい。

 たっぷりと作り、深皿4つに盛り付けてラップをした。冷めたところで冷蔵庫に入れる。

 数日はポトフ生活だ。

 

 月曜日、夏休みをとったから、10日振りの出勤だ。

 日曜日に収穫した野菜を持って、出勤した。休憩室に山盛りの野菜を置かせてもらう。


 「なんだ?すごいですね。」

 「家庭菜園をしているけど、沢山出来てしまったので、よかったらどうぞ。持って行ってくれると助かります。」

 「え?めちゃ鮮度いいですね。嬉しい。」

 「昨日収穫したものです。ミニトマトは少し硬いかもしれない…」

 

 ちょっと賑やかになったけれど、始業時間のベルでみんな仕事に戻っていく。

 楓花も久しぶりに白衣を着て、機材の前へ立った。 

 検体から検出する作業は、とても地味な作業でコツコツするしかない。

ずっと続けている仕事だけど、イルルジオーネへ行くようになってから、大切な仕事だと思えるようになっていた。

 向こうでもいろいろと分析してみたいけど、機材によりそう簡単に買えない物も多い。

 ミキシング自体はそうでもないけど…顕微鏡に遠心分離機、欲しいものはたくさんある。薬師がカビを見るために使った顕微鏡は、子供たちが使うような物だ。倍率もそう高くはない。あれで出来ることは限られている。それでも、0よりはいいはずだ。

 

 アートンとヒルストンの食糧事情を考えると、毎週は無理でも、月に2~3回は肉を卸したほうがいいだろう。

 ケイさんは、グリフォンを飼っているのだから、他の畜産物の重要性も理解していると思うけど、畜産が進んでいないのに何か理由があるのだろうか?

 畜産が進めば、野菜の少ない冬場でも食べ物を得られる。


 ん~?よくわからないね。

 そもそも、イルルジオーネの人々と私たち大和の人間の、体の仕組みが同じなのかがわからない。大和から行っている間、体の時間が止まるなら…大きく違う何かがあるはずだ。


 

 「血液検査、問題ありませんね。」

 「そうですか…」


 楓花は、退勤後クリニックにいた。

 心療内科への定期的な通院だった。夫を亡くしてから、3か月に1度通い薬の処方を受けていた。


 「ご自分でも調べたのでしょう?何か気になる点はありました?」

 「いいえ、残念ながら何も…。」

 「橘さん、最近顔色がいいですし、貧血の所見も鬱傾向もありません。お薬も減っていますし、そろそろ不安な時だけにしてみましょうか?」

 「確かに…飲み忘れていますね…。」

 

 定期的な通院で、血液検査がある。

 ドクターにお願いして、1アンプル余計に取ってもらっていた。

 自分でいろいろと調べているけれど、イルルジオーネに行っていても何も変わっていない。

 身体的変化はほぼない。

 精神的に落ち着いているのは、忙しいというか充実しているからだろう。




読んでくださりありがとうございます。

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