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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第10章 カライア帝国と港町

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6


 「ケイさん、終わりました。キャビンで休みませんか?」

 「そうですね。」


 楓花と敬一郎がキャビンに戻ると、敬一郎はソファーへ座った。

 マントを脱いだ楓花は、お茶を煎れる。

 湯呑を差し出すと、敬一郎は楓花の手の上に手を重ねてきた。

 あらら、お茶と一緒に私の手まで掴んでしまったのね。寒かったのかな?

 すぐに離れると思ったが、離れないので問いかけた。

 

 「ケイさん、どうしました?」

 


 楓花に問いかけられ、右手を離してもらうために、楓花が出した左手に2つの結婚指輪が見えた。

 そこで敬一郎は、我に返る。

 

 「あ…すいません。」

 「いえ、寒かったですからね。どうぞ。」

 

 楓花さんの、何も感じていないような対応に、ほっとしたような…残念なような複雑な気持ちになった。

 

 「辺境伯と騎士団長の治療、ありがとうございました。」

 「助けられているといいのですが…。」

 「よく気が付きましたね。軍服を脱ぐまでは、あれほどの傷とは思いませんでした。」

 「彼らは危なかったのですか?」

 「おそらく…あれほどの傷であれば、もって数時間だったのではないでしょうか?」

 「…そこまで?」

 「いつの傷かわかりませんが、どの傷も負って1日ももたない傷に見えました。」


 楓花さんは、重症とは思っても、もう少し気楽に考えていたようだ。

 私も軍服を脱いだ姿を見て、初めて重大さに気が付いた。この世界では、胸部や腹部の怪我はそのまま死に繋がる。大和のように開腹して、傷口をふさぐという手段がない。


 「致命傷をぎりぎりで避けていましたが、それがいくつもありました。」

 「そうですが…でも、万能ポーションでも膿んでいたら完治は難しいので、本当に助けられたのかはわかりません。」

 「後ほど、目が覚めたら、念のために聖水と癒し水を飲んでもらうつもりです。」


 敬一郎の言葉に、楓花が問いかけた。


 「聖水が必要な状態って…どういうものですか?」

 「聖水は魔を払います。魔というのは、魔石になる分には使い道のあるものですが、普通は黒い靄であり、人を悪意に導きます。魔に憑りつかれ魔物になってしまったら、本能にのみ従います。」

 「へぇ…漫画に出てくる悪魔とかそんな感じでしょうか?」

 「そう考えて差し支えないかと…。」

 「癒し水は?」

 「楓花さんの癒し水は、どうやらポーションの効果を増幅し、体内の感染状態を抑えているようです。風邪症状の者に飲ませしたが、症状の緩和が早かったです。」

 「なるほど…そうなのね。」

 「ケイさん、聖水については、もし…許可を頂けるのであれば、町の数か所でガードを展開しましょうか?住民の皆さんには、一定時間家から出ていただかなくてはなりませんが…聖水を撒くにも限界がありますし…」

 「どういうことです?」

 「ガードには、聖水をかけたので、魔を払ってくれているようです。ガードは100mまで展開できますから、左右100mにガードを通して走れます。車の入れない路地だけになれば、スプレーできるでしょうし少しやりやすいかなと…あと、町の人を集めたついでに、聖水を吹きかけていくといいかなと…。」

 「そういえば、人にかけてと言っていましたね。」

 「はい、この地には黒い靄が多いです。」

 「なるほど…そうでしたか…」

 「人にだけでも出来るならば、かなり変わると思います。」

 「わかりました。では、辺境伯に話しておきます。」




 辺境伯は、翌日には指示を飛ばせるまでに快復した。

 敬一郎は、治療を受けた辺境伯、騎士や兵士へ、治療師の公表と楓花さんの存在の秘匿を依頼した。治療の全てを、治療師の手柄としたのだ。

 聖水については、秘匿した。

 教会の聖水よりも、はるかに強力だったからだ。

 それに、スプレー容器に入っていて、聖水らしくもなかった。魔に気が付かなければ、気が付きもしないだろう。治療薬と同じように考えるはずだ。

 人を集めている間に、楓花が車を走らせた。

 集められた人々には、特別な薬だと言って聖水を噴霧させた。




 「重ね重ね、どれほど言葉を並べても、元帥閣下への感謝を語り切れません。」

 「いえいえ、私の手柄ではない。」


 辺境伯の屋敷では、敬一郎へ感謝を述べていた。

 元帥閣下の視線は、フーカ様へ向けられていた。

 フーカ様は、今は我が息子と戯れていらっしゃる。母である妻でも、あのような距離で接しているのは見たことがない。どちらかといえば、乳母との距離に近いだろう。息子は、見たことのない笑顔をしていた。


 「フーカ様は大魔導士様でしょうか?一覧へお名前はないようですが…。」

 「そうですね。彼女は、我がヒシ家の至宝です。あまり外に出さないようにしてきました。」

 「そうでしたか。今回は何故…このような危険な地へお越しくださったのでしょうか?」

 

 元帥閣下は、難しい顔をして苦笑いを浮かべた。

 

 「外を回ることを知ってしまいましてね。騎士団は嫌だというから、冒険者の天龍を護衛につけている。」

 「あの天龍ですか!?ブラックベアーをたった3人で狩るという?」

 「そうです。」

 「なんと…」


 天龍というのは、大人は3人しかおらず、他は荷物持ちの冒険者登録が出来るギリギリの年齢の2人がいるだけだった。荷物持ち2人を守りながら、魔の森に入り無事に戻ってこられる冒険者は天龍しかいない。しかも、彼らは貴重なブラックベアーの肉も素材を持ち帰ってくるとの評判は、辺境にまで届いていた。


 「彼らは、ホワイトジャイアントも狩れますよ。」

 「は!?」

 

 あまりの言葉に、惚けた声を出してしまった。元帥閣下相手に何たる失態。


 「失礼しました。お許しください。ホワイトジャイアントなど…物語でしか聞いたことはありませんので…。」

 「ああ、それなら見ますか?そうだ…広場で公開しましょうか?」

 「広場ですか?」

 「そうです。まだ、潜んでいる者はいるでしょうから、敵国と戦いつつ…ホワイトジャイアントを仕留める戦力を有するとなれば…隣国も考えるでしょう。何より…隣国は、ホワイトジャイアントと戦う術は持っていないはずだ。」


 元帥閣下は、涼しい顔をしていらっしゃるが、最後の炙り出しをする提案だった。

 

 「それは、素晴らしいですな。我々が仕留めたという前提で、よろしいのでしょうか?」

 「もちろんだ。もちろん、相応の買い取り額になるぞ。」

 「それはそれは…分割でもよろしいでしょうか?」

 「構いませんよ。」


 こうして、騎士団が兵士たちとともに、ホワイトジャイアントを乗せた荷車を引いて、山から広場へと向かった。

 戦いを終えた喜びに加え、ホワイトジャイアントという大物を仕留めた騎士団の活躍に、民たちは沸き上がった。

 


 後日行われた隣国との国家賠償の話は、非常にスムーズだった。そこに、ホワイトジャイアントの効果があったことは否定できない。

 辺境伯領には、直接賠償として相当額の賠償が行われた。

 その中から、治療師や薬の代金及び謝礼が、ヒシフォートへ支払われることになる。

 辺境伯とともにヒシ元帥にも、戦争を終わらせた褒章が国から授与されることとなった。

 この時使われたクラスター爆弾や、焼夷弾について、その存在は秘匿された。

 見ていた辺境の領民や隣国さえも、何を使われたのかを知るものはいなかった。

 魔法のある世界のため、火の矢を大量に放たれたと思っていた。


 


読んでくださりありがとうございます。

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