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楓花と天龍は、作戦会議の邪魔をしないよう、キャビンの出入り口側に移動した。
テーブルは、倉庫側…つまり運転席側に出していた。
「急に大掛かりなことに巻き込んでしまって、ごめんなさい。」
「ははっ…こんなこともあるんだな。」
「そうですね。でも、私たちはフーカさんを守ると決めているから、大丈夫ですよ。」
「ルーシーさん。」
「私たちは、ここでフーカさんを守りますから。」
「ありがとう…。」
騎士たちが、野営の準備を始めた。
ガードの外にもテントを設営しているので、ガード範囲を40mに広げた。
そういえば…このガード100年は保持と出ていたけれど、大丈夫だろうか?
フーカが目を凝らしても前と変わらなかった。
『聖水の噴霧を希望』
ん?急に現れた文字に目を凝らした。
実際の文字ではないらしく、淡くてなんとか読めるだけだ。
聖水って泉の水よね?
昨日、ペットボトルに入れた物を治療に使ったけれど…噴霧?
楓花は、スプレーの上部だけを100均で買っていた。
大小いくつかあるから、ペットボトルに使える物もあるはず。
あっ…これでいいかな?黄色と緑、どっちがいいだろう?
ん~?
黄色にしよう。
かわいいし目立つ。
聖水入りのペットボトルにスプレーを取り付けた。
ガードまで歩き、それを構えて、何度かシュッシュする。
最初は出てこなかったが、何度目かでシュッと出た。
その瞬間、ガードが白く輝いた。
「え?」
一瞬のことですぐに収まる。
ふう、びっくりした。何だったのだろう。
「楓花さん、何をしましたか?」
「え?」
振り向くと、ケイさんが立っていた。
「あの…ちょっとお水を撒いただけです…。」
ケイさんの片眉が動いた。
なんだか怖い。
騎士団の指揮中だからだろうけど…普段とは様子が違う。
声が一段低かった。
「なぜそんな事を?」
「なんとなく?ガードが泉の水を噴霧してっていうから…」
「ガードが?」
「はい…」
敬一郎が、難しい顔をしてガードを見ているので、楓花は怖くなってきた。
「楓花さん、あちらの木の後ろに獣がいますが見えますか?」
「獣?なんだか…黒い靄みたい…」
敬一郎が指さした方には、獣は見えないがよくわからない巨大な黒い靄が見えた。
「!?」
「ケイさん?」
それから少し似たようなやり取りが続いた。
「楓花さん、騎士たちが到着したら、それをかけてからシールをお願いします。それからグリフォンたちにもお願いしたい。」
「わかりました。いいですよ。」
「それと…そちらの水はまだありますか?」
「はい、たっぷりではないですが、10Lのタンク10個くらいは…。」
「タンク10個ですか、それは心強い。スプレーもありますか?」
「ええ、あと3つくらいなら…」
敬一郎は、今の楓花の言葉で作戦を変更することを決めた。
10Lのタンク10個分が、たっぷりではないという言葉は、スルーすることにした。
少し前、敬一郎は楓花から港町での小競り合いを超えた状況の連絡を受けた。
国への使者を出し、楓花に送迎の依頼をした。
数分後、グリフォン隊第一騎士団の数人とともに空間移動でその港町を見下ろす高台にいた。
車を降りると、妙に湿度のある重い空気を感じた。
「こちらを使いますか?」
楓花さんが差し出したのは、双眼鏡だった。
かなりしっかりした物に見える。
楓花さんに借りた双眼鏡を使い戦況を把握すると、マップに書き込む。
情報を集めるために数人の騎士を街中へ出した。
現場の情報が入るまでは、この場で出来る情報収集が必要だった。
その中で、唐突にガードが急に光った。そして、重かった空気が軽くなった。
楓花さんはなぜがガードに水を吹きかけていた。
「楓花さん、何をしているのですか?」
「あの…ちょっとお水を撒いただけです…。」
「なぜそんな事を?」
「なんとなく?ガードが泉の水を噴霧してっていうから…」
「ガードが?」
「はい…」
ガードの外には、狼型の獣が集まってきていた。
「獣が集まって来ましたね。」
「獣?どこですか?」
「あの辺りに…」
敬一郎は、森を指さした。
「楓花さん、あちらの木の後ろに獣がいますが見えますか?」
「獣?なんだか…黒い靄みたい…」
「黒い靄」だと?
森には光はあるので、見えないと言う事はないだろう。
それなのに、見えない?
なら、何が見えている?
「あの辺り、真っ暗で…全然見えないです。でも、おかしいですよね…」
「真っ暗ですか?」
楓花さんは、目を凝らしてじっと見た。
「ん~?なんだか…黒い靄かも?霧?」
「黒い靄か霧ですか…。」
楓花さんがスプレーを吹きかけた時、ガードは一瞬だけ金色の光を発した。
その瞬間に、妙な息苦しさは消えていた。確かに、ここにも魔が満ちていたのだろう。
あれは確かに「浄化」だった。
聖教会の聖女であれば、なんらかの呪文を唱えてから、勿体ぶって行うだろう。
楓花さんは、無意識に…求められたからと言って、浄化を行った。
旅行中だったために、簡素なパンツスタイルだ。
そこにマントを付けている姿は、凛々しいが聖女らしさはない。
そもそも、聖女だったとして、命を奪った時点でその資格はなくなるはずだ。
楓花さんは、弓や剣で獣を殺している。
聖女の資格は、ないはずなのだ。
そもそも、聖女とは処女でなければならないはずだ。
夫がいた楓花さんが、処女のはずがない。
それにも関わらず、聖女として扱われているのはなぜだ?
楓花さん自身について、何かあるのかもしれない。
もう少し調べておいた方が良さそうだ。
近場を見に行った騎士が戻ると、この町を治めている辺境伯へ使者を出す。
敬一郎は、使者へ持たせる手紙を書く。
その間に、楓花が使者へと声を掛けた。
「そのままでいてくださいね。」
そう声をかけると、楓花は使者に向かってシュッとスプレーをした。
「今のは?」
「おまじないのようなものです。あと、こちらガードの指輪です。戦闘中の中へ行くのですから、付けて行ってください。必ずお戻りくださいね。」
楓花が、使者へ指輪を貸した。使者の太い中指へ翳すと指輪が少し広がり指へと収まった。
使者は、自分の周囲を見回していた。
「これは…このような貴重な物をお借りしてよろしいのですか?」
「もちろんです。お戻りになったら返してもらいますよ。それと、こちらをお持ちください。到着したら、もし許されるならシュッとここを握って吹きかけてください。」
「はぁ、試してもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ。」
使者を務める騎士は、スプレーを宙に吹きかけた。
「では、これを辺境伯へ届けてください。これで馬を借りるように」
敬一郎が、手紙と金袋を預けると、使者を務める騎士は恭しく受け取り、懐へ入れた。
左肩へ右手を当てる敬礼をし、使者は走り出した。
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