1
楓花は、車に乗っている薬を思い浮かべる。
万能ポーションで作った3種が、ほとんど手つかずだから…32個ずつくらいはある。期限はあと2か月くらい…私が手当をしていいなら使えるかもしれない。癒し水はあと一か月もないから、飲ませるならいいだろうか?あっ…違うか…。時間停止のあるバックにあるのだから、気にしなくていいはず。
高級ポーションで作った3種が、ほとんど手つかずだから…こちらは、400個ずつくらいはある。これも期限は気にすることはないけれど、私が使うくらいはいいだろう。
高級ポーション以上は、滅多に市場には出回らないらしいので、取り扱いは慎重にしていた。
中級ポーションで作った薬3種と初級ポーションの薬3種は、大量にあるから大丈夫。ケイさんが許可するなら、治癒師もくるだろうから、使わせよう。
下級ポーションは、今は立ち上げた薬師ギルドで製造販売しているから、私の作った物はカバンに入っている。これも使える。
食料は…肉はある。野菜と糖質を摂られる物は少ないけど…いざとなれば、泉の家に山積みになった小麦粉を持ってくるのもありだろう。
なんとかなりそうかな?
「フーカさん、大丈夫か?」
「はい」
スマホが震えたので、敬一郎との通話を始めた。
「応援を出す。サクラを呼んでください。それを追いかける。笛は1時間ごとに鳴らしてください。到着までおおよそ20時間」
「わかりました。笛は吹きます。ですが、それとは別にそちらへ移動します。リリーさんとララさん親子、天龍の子供3人を預かってください。そうすれば、こちらには10人ほど乗れます。先に来て、ご覧になり作戦を考えたほうがいいでしょう。」
「わかりました。では一度戻ってください。」
今更だけど、一度帰ればいいのだ。
サナのことは、後で説明しよう。
「ケントさん、一度ヒシフォートへ戻ります。」
「ああ、わかった。」
「子供たちを下ろしたら、ケイさんと騎士を数人乗せてここに戻ります。」
「わかった。それがいいだろう。」
空間移動を使い、ヒシフォートへ着いた。
ヒシフォートの外門には、騎士団の馬車があった。
2階からは、乗っていた全員が下りてくる。
キャビンのリリーとララにも声を掛け、降りてもらう。
サクラを呼ぶための笛を吹くと、すぐにサクラが降りてきた。
馬車からは、敬一郎とギルバート、それに騎士たちが出てきた。
「ごめんね。トラブルがあったので、旅行は中止よ。」
リリーとララ親子にそう説明をした。
周囲に騎士団がいることから、何かを察しているのだろう。
文句を言うことはなかった。
「楓花さん…」
敬一郎が出迎えた。
「子供たちとライラさんをお願いします。サナはご両親が見つかったので、帰りました。」
「そうですか…ギルバート。」
「はい、かしこまりました。屋敷にご案内いたします。お任せください。」
「お願いします。」
「では、ケイさんは、助手席へ…乗る方はこちらへ。」
「リハルドは同行します。副官がグリフォン隊を率いるので、楓花さんは時間を見て、サクラを呼んでください。それで詳しい場所は、どこかわかりますか?」
「はい、任せて。場所は、隣国との境界のこの辺りです。」
楓花は、敬一郎の出した地図の端を指した。
騎士たちは、それを見て怪訝そうだ。
敬一郎は、書いた紙に何かを書き足した。
「ギルバート、陛下へ早馬をだせ。我々は先に向かう。それから…騎士団が到着したら…いや、2時間後に一度ここに戻る。」
「かしこまりました。お預かりしましょう。お気をつけて。」
「では、楓花さんお願いします。皆は、天龍の2人と騎士たちは2階へ行け4人…」
「6人です。」
「6人乗れる。」
「リハルドと女性騎士2人、ケントはキャビンへ。楓花さんいいですね。」
「ええ、それでいいです。10分後に出発します。アーサーさん、ルーシーさん2階の方たちをお願いします。」
「任せて。」
「では、シールを貼りましたので乗ってください。」
「待って、私たちの指輪返しておかないと。」
ララさんが、指輪を集めてくれていた。楓花は、それを受け取ると無造作にポケットへ入れた。
キャビンに乗った3人は、あっけにとられていた。
ケントもここに乗るのは初めてだ。
「危ないので、移動中はここのソファーに座ってください。」
「はい…」
楓花は、そういいつつ指輪を箱へと戻した。
車内を見て、リリーの忘れ物の確認をする。大丈夫そうだ。
「ケイさん、そろそろ時間ですか?」
「そうですね。出発しましょう。」
楓花は運転席に着くと、空間移動で先ほどの港町を見下ろす高台に到着した。
「ケイさん、ここまで10時間でいいですか?」
おおよその距離は2000㎞だ。1時間に200㎞も進めるの?
「ええ、10時間です。9時間後にはサクラを呼ぶ笛を吹いてください。」
「わかりました。では、キャビンで作戦会議にしますか?それとも、一度外に出てもらう?」
「外に出てもらうほうがいいですね。おそらく慣れない移動に戸惑っている。」
「わかりました。甲冑は一度脱いでもらってもいいですね。」
「そうですね。」
楓花は、ガードを10mに広げた。
敬一郎と2人で一度キャビンに入る。
「到着しました。気分は大丈夫ですか?」
「はぁ…」
「一度外へ出ましょう。ケントさん、テーブルとイスを出してください。」
「わかった。」
女性騎士は、ふらふらとした足取りで梯子を上り、2階へと声を掛けてくれる。
ケントが広げてくれたテーブルに、地図が広げられた。
それを見て、リハルドと女性騎士は正気に戻ったようだ。
表情が、精悍なものに変わった。
「ケイさん、こちらをどうぞ。一応…あちらの辺りで、戦っているようです。」
敬一郎は、苦笑いをしながら双眼鏡を受け取った。
なるほど、これだけ揃えると本当に金は足りないだろうと納得もした。
「なるほど…一応防衛は出来ていますね。」
「ええ、でも…かなりきつそう。それに…怪我人が多そうよ。」
「あちらは、カライラ帝国と言って…北の将軍様といったところでしょうか。位置は西ですが…。」
「ケイさんもそんな表現するのね?」
「まぁ、わかりやすく言うならば…です。ですから、彼らの兵士は、がむしゃらです。海と陸から攻めているようですが、あの程度で揺らぐことはあまりないとは思います。ですが…ここは、国の重要防衛拠点のひとつです。陛下から了承を得られれば、すぐに戦いに出ます。」
「そうですか…」
「出来るのであれば、楓花さんにはこちらで、負傷兵の手当とグリフォン隊の防衛基地をお願いしたい。」
「お引き受けします。」
「天龍の皆さんは、楓花さんの手伝いをしてもらえますか?」
「もちろんです。お任せください。」
「グリフォン隊と一緒に、治療師たちが5人ほど来ます。それとリュシーも…彼らには最前線での治療をさせます。リュシーには判断をさせます。治療師たちの手に負えないと判断した患者のみをこちらへ運びます。よろしいですか?」
「わかりました。お引き受けします。」
「では、我々は作戦を詰めていきます。楓花さんたちは、少し休憩してください。」
「わかりました。」
読んでくださりありがとうございます。
リアクションと合わせて星印を★★★★★~★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです。




