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楓花は、ぽつぽつと話を続けた。
サナは、フユカさんの膝の上で甘えている。
「サナさんを攫った者たちは、子供を奴隷として売っていたようです。魔の森にいた理由は、わかりません。攫った者たちは、元帥閣下のヒシフォート領で調べを受け、裁かれています。」
「そうでしたか。」
「こちらのララさんとリリーさんも同じ馬車に閉じ込められていました。縁があり保護しましたので、身元の分からないサナさんとリリーさんは、元帥閣下のヒシフォートの領主邸で生活をし、時々私とこうやって出かけていました。」
「そうでしたか…。領主邸で面倒まで見てくださったのですか。保護してくださりありがとうございます。この子は体が弱く、とても心配していたのです。」
「そうですか?一緒にいても、元気いっぱいでしたので、そういった心配はないでしょう。このまま元気に育って欲しいと思います。後ほど、サナさんのお洋服をお持ちしますね。サナさんが一番小さい子ですから、私が持っていても仕方がないの。」
「それはそれは、何から何までありがとうございます。」
「時々、会いに来てもよろしいですか?」
母親にべったりと甘えていたサナが、何かを察したのか、楓花の膝へ乗ってきた。
楓花はいつも通りに手を添えて腰を支えた。サナが触れてくるのを自由にさせる。
「サナ、みんなで一緒にご飯を食べましょう。それでバイバイよ。また遊びに来るわ。」
「フーカ?リリーはいる?」
「リリーは残れないわ。サナには、ママもパパもおじいちゃんもいるでしょう。」
「んっやっ…えぐっ…」
「大丈夫、すぐに会えるわよ。」
「ほんと?やくそくする?」
「するわ。大丈夫、また会いましょう。ほら、泣いていたらごはんを食べられないわよ。」
「ごはんはたべる!」
「サナっ!」
村長が、サナを強く呼んだので、楓花は大丈夫だと手で制した。
我儘を言っているように、見えたのかもしれない。
「荷物を運んでもよろしいですか?それとご一緒にお食事を食べたいのですが…お誘いしてもよろしいですか?」
「食事まで?我々も?本当によろしいのですか?」
「もちろんです。」
楓花は、サナの着替え一式と一緒に、リンスインシャンプーやボディソープのプッシュボトル、下級ポーションと初級・中級の各ポーション、初級の薬3種を籠へと入れた。
それとは別の籠に干し肉と燻製肉の袋、飴ちゃんの大袋とクッキーの大袋を入れた。それと塩コショウ1本とホットケーキミックス1袋3袋入りと鶏卵6個パックも入れた。
後は、サナが寝る時にかけている楓花の膝掛も渡そう。
一瞬で来られるけれど、頻繁過ぎるのもよくないだろう。
月に1度程度、こちらで3か月に1度くらいなら許されるだろうか?
それらをサナの家族に手渡すと、外へ食事に誘う。
悲しい別れではない。
サナのご両親が見つかったお祝いだ。
おめでたいのだ。そうだ、おめでたいのだから、ホワイトジャイアントの肉を焼こう。あれは牛肉のようだった。
味付けをした木の実ウサギに加えて、ホワイトジャイアントの肉も焼いて食べた。
サナのご両親は20代のようで、若い。父親は、黒目黒髪で細身だった。でも、どこか懐かしい気がしてしまうのは、大和人っぽい顔立ちのせいだろう。
サナは、お肉も野菜も沢山食べてくれた。
リリーとララは、サナが親元へ戻れたことを喜んだ。
片付けを終えると、楓花はサナの指から指輪を外した。
「それでは、サナ元気でね。」
サナを抱き上げ、頭を撫でた。
「うん、フーカまたきてね。」
泣いてはいけない、楓花は笑顔で手を振る。
そして、車を走らせて村の郊外へと停めた。
空間移動の登録をし、ガードを張り、この日はリリーと一緒に1階のベッドで眠った。
翌朝、朝食を終えると、港町へ向かって車を走らせた。
リリーが一人になるので、ララが降りて来てキャビンへ座っている。
ケントは、いつも通りに助手席に座ってくれている。
「賑やかな町だから楽しみだな。」
「それはいいですね。」
到着した港町エカサは大騒ぎだった。
想像した賑やかさではなかった。
大きな大砲の音と、ズシンという振動で揺れていた。
助手席のケントが降りて様子を覗った。
「これは、やばそうだな…ヒシ閣下へ連絡したほうがいい。海から攻撃を受けているようだ。」
「そんな!ガードの展開を広くしましょう。」
「だめだ。そんなことをしたら、政治干渉になる。状況がわからない以上、大掛かりなものはしないほうがいい。自分たちだけに留めよう。」
「でも、どうしたら…。」
「ヒシ閣下へ連絡をして、判断を仰ごう。助けていいならそうおっしゃるハズだ。」
「そうですね…ちょっと待っていて…」
楓花は、スマホを入力しようと思うけれど、手が震えてしまいうまくいかない。
「フーカさん、落ち着いて。」
楓花の手を、ケントの大きな手が包んだ。
「フーカさん、大丈夫だ。落ち着こう。深呼吸はできるか?」
「うん…」
楓花は、呼吸することに集中した。
手の震えが収まるのを待ってから、ケントが声を掛けた。
「フーカさん、この魔導車はステルスで、周囲からは見えないと言っていたよな。今は、いつも通りに人を助けようとしたら、殺到して大変なことになるのは…わかるな?」
「うん、それは…わかっている。」
「とにかく状況を見て、ヒシ閣下へ報告をしよう。そうしたら、閣下が考えてくれる。」
「そうですね。」
楓花は深呼吸をすると、バックから双眼鏡を取り出した。予備も取り出してケントへ渡した。
「これを覗くと遠くが見えるから、それで状況を見てください。」
「!?」
「黒い制服は、どこの騎士ですか?」
「黒?あれは、隣国の騎士だ。このあたりは小競り合いが多いと聞いているが、これは小競り合いではなさそうだよな?」
「では、白い制服がこちらの方ですか?」
「そうだ。あれは、この港町エカサを治めているクリトン伯爵の騎士団だ。」
「わかりました。」
楓花は、敬一郎へLIMOを送った。
「現状の、エカサ港のイメージを送ります。」
添付した写真には、黒い騎士と白い騎士の姿だ。
パッと見は、合成と言われたらそうかもしれないと思えるよう、アプリを使い写真を加工した。
LIMOにここの世界の写真を載せるのは危険だ。
だから、作りモノっぽいものにする必要があった。
「直ぐに向かわせる。出来るなら、一度会いたい。」
楓花は、敬一郎の返信を見て、少しだけ緊張が緩んだ。
頭が少しずつ動き出す。
クリトン伯爵が、敬一郎にとってどういう立ち位置かわからない。
だから、ヒシ家の紋が入っているこの車で、近づいて良いかすら判断出来ないのだ。
楓花は、支援が必要になった時のことを考え始めた。
車に乗っている物資…出せる物と出せない物の線引きは必要だ。
読んでくださりありがとうございます。
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