12
山の中に小さな村があった。
いつものように村で一番大きな家の近くの開けた場所へ車を停めた。ルーシーたちと楓花が挨拶に行った。
「旅の者です。村の外れに今夜泊まらせてもらいたい。それと治療師がいるから、怪我を見られるし、多少であれば食料も売ることはできる。」
「旅のお方、それはそれは…治療師というのはどのようなお方かな?それと、この村にはお金はあまりない。村には、干し柿や炭という燃料はあるが、それと交換ではどうだろうか?」
「治療師は、怪我を治します。もちろん、出来ないことはありますが…品を持って来てください。いくらくらいにするかお話ししましょう。」
「怪我だけですか?病気は診られませんか?」
「治せるとお約束はできませんが、診ることはできます。」
「商売は認める。好きな場所に泊まって構わない。怪我人・病人はすぐに連れて行くから診てください。」
楓花たちは大急ぎで、ビニールシートを敷いた。
椅子も用意する。あの話しぶりでは、かなりの病人がいそうだ。
病人や怪我人はリリーとララが治療を出来るようにした。重症の者には、シールを貼りガードの中で楓花が治療できるようにした。
「獣にやられたの?」
「はい、狼が群れで襲って来まして…娘は…幼子を探しに外へ出ておりました。婿が追い払ったのですが…。」
「その子は見つかったのですか?」
「いえ、その子は大分前にいなくなったので、もう生きてはおらんでしょう。」
足と腕、それに肩も齧られている。これは、普通には助けられそうもない。傷を受けてからかなりの時間が経っているようだった。
傷を洗い流していくけれど、かなり厳しい。
楓花はペットボトルの水で洗っていた。ハナの時にはこれで傷の大部分がよくなったけれど、今回は良くなった感じがしない。
楓花は、ウエストポーチから聖水を取り出した。
それと高級ポーションだ。
聖水で傷が治ったらいいなと思いながらかけてみると、ふわっと何かが消えた気がした。
これって…。
「リリーさん、ララさんこちらに来て。ある程度湯冷ましで洗ったら、薬の前にこちらの水を少しでいいので掛けてください。」
「はい!」
「ライラさん、申し訳ないですが手を貸してください。サナは…そうね、私の後ろで遊んでいて…」
「ママ…」
「え?」
「ママ!!」
サナが、寝かせている女性に駆け寄った。
女性は意識を失っている状態だ。声をかけてくれるなら、それもいい。それに、ここがサナの故郷なら、あの村長はおじいちゃんなのだろうか?
楓花は、高級ポーションを止めると、万能ポーションを取り出した。
それを見て、ライラは目を見開いた。
昔、夫に連れられて行ったオークションで、遠目に見たエリクサーの瓶なのだ。驚くなという方が無理である。
楓花は、過剰な薬はよくないと思っている。
でも、折角会えた親子だ。何かあっても困る。
「これを飲んで。」
「フーカさま!それは!」
楓花は、女性の頭部を持ち上げてポーションを少し口へと入れた。横になったまま液体を入れるのは、意識がないときには危険だからだ。少しして、反応を見せたのでそのままポーションを飲ませた。
女性の体は、淡く輝き傷が塞がっていく。
村人たちは、それを遠目で見ていた。
村長の娘はどう見ても治らない、死を待つだけだった。今まで生き延びていたのは、娘の夫が、よくわからない呪いをしてきたからだ。
「あっ…」
「お名前は言えますか?」
「フユカです。」
「あら、私と似たお名前ですね。私は楓花といいます。」
「あっ…そこに立っているのが夫です。それに…サナ…生きていたのね。よかった。もっと近くに来て…ああ、サナ…」
本当にお母さんだった。
よかった。
フユカの夫という人は驚きすぎているのか、目を見開いてこちらを見ていた。
「え?フユカ…治ったのか?それにサナも?…」
フユカの夫の声は、だんだんと小さくなり、最後は聞こえなかった。
「このまま、ここで寝ていてください。他の方を診終えたら戻ります。サナ、ママと一緒にいられるわね?」
「うん!」
「もし、ママが痛がったらすぐに呼ぶのよ。」
「うん!わかった!」
そこからは、ララたちと共に治療に当たった。獣による傷が多い。化膿している人もいるので、お湯と水を合わせたもので洗っていく。
怪我人が多すぎて、対価など気にせずに治療をしていた。
ララたちにも中級薬シリーズを使わせていた。
治療を終えて、一息ついて周囲を見回した。
「薬師の皆様、ありがとうございます。本当にありがとうございます。」
村長も、患者たちの家族も頭を地面に擦り付けていた。
それを辞めさせ、立ち上がらせるのに手間取った。
お礼として、大銀貨や銀貨、銅貨を大量に入れた袋、狼の毛皮や牙、それからいくつかの種類の薬草を入れた壺、葛粉の入った壺、ゼンマイ、ワラビなどの山菜を渡された。
「こんな物では、対価にもなりませんが、どうか受け取ってください。」
「それでしたら、ありがたく受け取ります。」
言いながら、人々の手を見た。
皆、あかぎれでひどい手をしていた。
手を洗ってもらい、皆の手に少しずつ低級軟膏を置いて塗り広げてもらった。
「今日の治療は、今のお礼でお支払いは終わりです。今度来た時には、普通に商売をさせてくださいね。」
「ありがとうございます。」
「村長さん、少しお話しよろしいですか?」
楓花は、ちらりと娘夫婦とサナの方へ視線を向けた。
話が終わったので、村人たちは治療を終えた家族と家へ帰っていく。
「娘がどうかしましたか?」
「いえ、そうではなくサナさんの事です。」
「サナは、ある日いなくなり、ずっと探しておりました。」
「そうでしたか」
「フユカさん、フユカさんの旦那様、それに村長さん、改めまして楓花と申します。こちらは治療師のリリーとララです。こちらは、冒険者チーム天龍のケントとルーシーです。」
楓花達は、村長の家へお邪魔していた。
残ったアーサー達には、料理をお願いしていた。下味をつけた肉と野菜は渡してある。
「サナさんは、魔の森で保護しました。」
「なっ!魔の森ですか!?」
村長が驚きの声を上げると、フユカさんの夫が尋ねてきた。
「それはどこです?」
「ここから、2000kmほど離れた場所にある森です。」
「そんな遠くに!?」
今度は、3人が驚きの声を上げた。
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