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楓花たちは、村での商売を終え、村の外れに車を止めた。
いつも通りにガードは10mだ。
「今日は、このお肉を焼いて食べましょうか。」
「いいね。」
「俺が焼くよ。」
「私はこちら側でスープを作るわね。」
アーサーが、いつも通りに焼き係を名乗り出たので、楓花はその隣に鍋をのせスープを作る。スープの合間に、焼きあがった肉にかける生姜醤油ダレを作った。
リリーとララとサナは野菜を切り、ハナやダイは机の用意などをする。手分けして準備をし、整ったら皆で食べる。
ライラは、楓花が適当にいろいろな物を混ぜているのを見ていた。とてもじゃないけれど、真似できない。それでも、料理が出来上がっていく工程を見ているのは楽しかった。
自分たちの手で料理をして、食べる。
車の中では、自分で体を洗い、川があれば服も洗う。自分で自分のことをするというのは、慣れてしまえば難しいことではなかった。メイドを待たなくてよいので、イライラすることもない。気楽な部分もあった。
「またまけたぁ…フーカいっしょにしよ。」
オセロで負けたサナが誘ってくる。
リリーとララ、サナと楓花で対決をした。
「きゃー!!かったぁ!」
サナは大喜びで楓花に抱き着いている。
勝っても負けても大騒ぎには違いない。
ララは、2階で寝ているけれど、食後少しの間はキャビンで遊んでいた。
ライラは、ルーシーと一緒に、2階のカウンターで寛ぎながら茶を飲むのが日課になっていた。
「魔導車って本当にすごいわ。見た目は馬なしの馬車なのに、中が広くて驚いてしまう。」
「これは、フーカ様ですから。いくら大魔導士様でも、こんなことはないと思います。」
「そうよね。でも、ここのトイレというのを使い慣れると、家の厠は使えないしお丸も嫌だわ。」
「それはそうですね。」
ルーシーが苦笑しているのは、下の事を堂々と言ってしまったからだろう。
「それに…ララに驚いているの。」
「ララさんですか?」
「ええ、まだ子供だと思っていたし、淑女教育を始めていたの。だけど…フーカ様を見ていると、それが正しいのかわからなくなってしまったわ。」
「そうなのですか?」
「ララは、フーカ様の元でポーションを作れるようになったとは聞いていたけれど、今回は石鹸を作ってきたの。それを花形にして私にくれたわ。」
「石鹸を?」
「ええ、フーカさんは本当に何でも知っているのね。娘があっという間にそれを覚えて、作ってくれた石鹸は美しくて、とても勿体なくて使えそうもないの。それに…ここ最近、あちこちで治療をしているでしょう?」
「はい。ララさんも活躍していますね。」
「ええ、リリーさんと二人で治療をしている姿は、とても素晴らしくて自分の娘だとは思えなかったわ。」
「間違えなくライラさんのお嬢さんですよ。」
「わかっています。でも、私たちの元にずっといたら、こんなことを出来るようにはならなかっただろうと思います。目に力があって、引き締まった表情をしていて真剣でした。淑女教育では、殿方に従順に接する術を習いますし、表情も曖昧に微笑むことです。もちろん、その微笑み方で、うっすらとした自己主張をしますが…。」
「それもまた大変そう。」
ルーシーは苦笑いをした。
「今のララなら、1人でも商売を始められる知識があるわ。」
「そうかもしれませんね。でも…それは、ご両親が見守ってくれるからですよ。のびのびと成長できているのは、たぶん…愛情を信じているからだと思います。」
「そうかしら?」
「そうです。自信をもってください。」
「ルーシーさん、ありがとう。少し自信が持てたわ。」
ライラは、大商人の妻という肩書というだけの尊大な振る舞いは、出来なくなっていた。
大魔導士であり、薬師であるフーカ様が「さん付け」で呼んでと言い。自ら皆の分の料理をし、天龍とも村人とも普通に接しているのだ。誰かに偉ぶることもなく、対等なやり取りをしていた。
でも、家での癖でフーカ様がいない場所では、様になってしまう。
「ルーシーさんたちは、フーカ様とお付き合いは長いのかしら?」
「私たちは、1年にならないくらいです。怪我をした2人を背負って、獣と戦っている時に出会いました。私たちは、絶体絶命なところをフーカさんに助けてもらったので、恩返しをしたいのですが、なぜか恩返しになっていない状況です。」
「え?どういうこと?」
「恩返しだから、同行する依頼料は要らないと伝えています。」
「まぁ」
「ですが、一緒にいるだけで売却益が跳ね上がります。」
「採取のお手伝いをしていない、狩りの分は天龍さんの取り分ですか?」
「いえ…獲物については、フーカさんの必要な素材を抜いた売却額を折半です。」
「あら、折半なのね。それでは…少ないのでは?」
「とんでもない。通常、狩りに出ても、大型の獣の場合は、1頭全ての素材を持ち帰ることは出来ません。肉のほとんどを置いて帰ることになりますが、この魔導車のおかげで持ち帰ることができます。それだけでとんでもないのです。普段、依頼を受けて仕事をする何倍もの稼ぎになってしまって、恩返しにはなっていません。」
「そうなの…」
「子供のツリーホーンまでですね、自分たちが丸ごと持ち帰ることができるのは…。」
「それであれば、相当変わるのね。」
「規格外すぎです。フーカさんもこの魔導車も…。」
遠い目をしたルーシーの横顔がきれいだと思ってライラは見ていた。
美しい金髪に白い肌。なぜ冒険者をしているのだろう?
これほどの美貌であれば、豪商へ嫁いで過ごすことも可能なのにと思ってしまう。
「おやすみなさい!」
ララが車へ戻ってきて、外にいる楓花に挨拶をしていた。
ガードがあるのに、フーカ様はララが2階へ送ってくださる。
「これ、朝までのお湯です。」
「ララ、お帰りなさい。楽しそうね。」
「楽しかったわ。リリーと一緒に組んで、フーカさんと対決したけど負けたの。」
どうやら、リリーさんやサナさんとの遊びにフーカ様を付き合わせたようだ。
本当に娘をかわいがってくださりありがたい。
魔導車での生活は、狭いけれど快適だった。
指輪をつけているというのも大きいかもしれない。途中、1日かけて山道を走る時に指輪を返した。その間は、シールを貼ってもらった。
港町エカサには、もう少しで到着できそうだ。
途中、町に寄っているのに早い。半月以上かかる道のりを本当に7日で着くつもりのようだった。
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