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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第9章 旅行

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9


 楓花は、ヒシフォートより先には、行ったことがない。

 空間移動は使えないので、地道に走るしかない。

 ある程度進むと何もない野原に車を停めた。


 「では、皆さん…とりあえず港町のエカサを目指します。今までと違って空間移動が使えないので、多分1週間はかかります。途中にある町に寄りながら進みます。」

 「エカサ?隣国との境界ではありませんか!?」

 「そうみたいですね。」

 「2000km以上あります。一か月は掛かる道のりですよ?」


 ライラが、心配の声を上げた。

 距離を聞いて、天龍も不安になってくる。


 「そうなの?では、向かってみて無理そうなら、それまでと言うことで戻ります。私の自由になる時間はあと20日ほどです。」

 「それでしたら…途中には、大きな町もいくつかありますし、きっと楽しいことも多いと思いますわ。」


 ライラが引き下がったので、楓花は安心した。

 そこで楓花は、キャビンの棚に入っていたケースを取り出した。これは、最近になって大量の品目を眺めていて気が付いた物だった。


 【レンタル用乗り込み許可及びガードの指輪:身に着けると体表3㎝にガードを展開する。石の色により、乗り込み可能範囲が異なる。使用可能期間は14日間、ただしその日数以内にケースに戻し24時間以上経過すると、再び使用可能となる。】


 中には、行動可能範囲に分けた指輪が入っていた。ケースの中で縦に3列に分かれていた。

 赤は、外2階のみ。

 青は、1階キャビンと外2階のみ。

 そして、透明なフルオープン(寝室以外)の3種類だ。それぞれ5個ずつ並んでいて、違う石が埋め込まれていた。指輪の箱は2段になっていて、上段を抜き出すと、下には小さなディアマンテがいくつも入っていた。あれが電池のように魔力を補充するのだろう。



 「この指輪の効果は10日間です。10日経つ前にこの箱に戻せば、2日後にはまた使えるようになります。」

 「マジックリングですか…。」

 「はい。」

 「どのような効果が?」

 「こちらを装着すると、この車へ出入りするシールを毎日貼らずに済みます。それと身体の表面3cmのところにガードが展開されます。」

 「まぁ!」

 「知らない町に行きます。子供たちもいますから、到着したら、これを装着してもらおうと思います。」

 「お貸しいただけるのですか?」

 「先ほども言った通り、車への乗り降りにも必要です。今日はシールがありますし、ガードから出ることもないので、明日こちらをお貸しします。」

 「まぁ!」

 「少しは安心できると思います。ですが、気を抜いて離れてしまうと、そう簡単に見つけられなくなります。特に街中は危険ですから、一緒に行動するようにお願いします。」

 「はい!」


 その日は、小さな村しかなかったので、進めるだけ進み最後の村に立ち寄った。

 家が、ぽつぽつと8軒ほど建っていた。


 「こんにちは、通りがかった旅の者です。」


 ケントとルーシーが、一番大きな家に声をかけた。


 「旅のお方ですか、少々お待ちください。村長を呼びます。」



 トトは、妻に呼ばれ玄関へ出た。

 この村に立ち寄る旅人はいない。

 村人たちは、自足自給で生活していた。作物を育て収穫し、野に出たウサギや狼を狩って食べる。

お金を稼ぐ手段は少なく、畑の外側に自生している葛の根から葛粉を取り、葛の茎の繊維で糸を作り、葛布を作っていた。

 葛布は、屑布とも呼ばれるごわついた布である、あまり人気はなかった。

 葛粉は冬場の貴重な食糧で、毎年1月2月になると野菜も尽きてくる。そこからは、葛粉と偶に手に入る肉が命綱となる。

 金もない、買い取るような物のない村に用がある人などいるのか?

 トトは、疑問に思いながらも外へ出た。


 「村長のトトだ。どういった用かな?」

 「私たちは冒険者のケントとルーシーだ。そろそろ日が暮れるので、村から少し離れた場所に魔導車を停めさせてもらう。」

 「それをわざわざ言いに来たので?」

 「そうだ。それと…」


 村長は、彼らの後ろからマントを着た妙齢の女性が現れたので、警戒した。


 「私、楓花と申します。生のお肉少々と干し肉などと薬や石鹸を持っています。もし、必要であれば交換に応じます。」

 「なんですと?」


 肉は欲しい。干し肉も欲しい。それに、何より薬!薬がなく、怪我を治せずにいる者も少なくない。

 トトの息子もそうだ。足を折ってしまい、治ったがそれから足をうまく動かせずにいた。


 「今、車を村長さんの家の前においています。どこか広場などありましたら、店開きをしたいのですが…。」

 「それは、売れるかどうかわかりませんが、家の横の空き地で広げて構いません。」

 「そうですか?では、そうさせてもらいますね。」


 妻には、村の家々へ商人が来たと呼びに行かせた。

 あっという間に村人18人ほどが集まる。

 この村に行商が来ることはなく、たまたま近くにある大きな村で見たことがあった。行商人というのは、地面に布を広げて品を並べるものだが、この人たちは違った。

 腰の高さほどある台を出し、そこに品が並べられた。

 肉は、塊肉と薄く切った物があった。

 乾燥肉も籠に山積みされていた。

 それから、透明な物に入った小さな物。

 お湯を入れたポットもある。


 トトは、妻と息子と共に最初に声をかけた。

 

 「フーカさん、これは妻が織った葛布だ。こういった物で薬や肉を分けてもらえるだろうか?」

 「もちろん大丈夫ですよ。本当に葛布ですね?でも…粗い?ああ、そうか…縦糸も葛糸を使っているのね…。あの…葛があるなら、葛の根から採れる葛粉もありますか?」

 「葛粉?冬場に使ったので少ししかないが。すぐに持って来よう。」


 葛粉は、売れる品ではない。食べ物のない田舎だから、それを採っているだけだ。


 「まぁ、本当に葛粉!これも交換でいいですか?」

 「はぁ、こんな物で良いなら…。」


 トトは、呆気に取られていた。

 見向きもされないはずの葛粉を見て嬉しそうなのだ。


 「それで、お薬というのは息子さんに使いますか?」

 「そうだ。息子は足を折ってからずっとこんな状態だ。どうにかできるならどうにかしてやりたい。」

 「それでは、お薬ではなく治療をしましょう。お代は…そうですね。この葛粉全てと葛布全てです。」

 「かまわない。それで息子の痛みが楽になるなら、頼みたい。」

 「わかりました。では、こちらへどうぞ。」


 地面に真っ青な光沢のある布が敷かれていた。


 道から逸れた場所で、ガードを展開して休むことにした。

 靴を脱いで、こちらに座って足を出してください。


 息子は、妻の手伝いを受けながら地面へ座った。

 足を延ばし、ズボンを捲り上げる。骨が飛び出てしまっているのだ。


 「痛いですよ。これを噛んで耐えてください。」


 フーカさんに渡された布を息子が噛むと、ケントと名乗った男が近づき「ボキ」っと音を響かせた。

 息子の足が折られてしまい、悶絶している。

 抗議しなくてはと思うのに、屈強な男たちを前に体が動かない。

 フーカさんが、息子の足に水をかけ撫でてから、板を足に括り付け紐で巻き始めた。


 「痛かったわね。これを飲んで。」


 息子は、口元に当てられた瓶の物を飲んだ。


 「まだ痛い?」

 「いえ、だいぶ収まってきた。」

 「よかった。少しそのままでいてください。そのままだと冷えるから、これを掛けておきますね。」


 フーカさんは、車の中から見たこともない厚みのある布をもってきて、息子の足元へとかけた。


読んでくださりありがとうございます。

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