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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第9章 旅行

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8



 戸惑うリュシーに楓花が問いかけた。


 「ご実家に影響があると考えますか?」

 「はい、少なくはないと…持ち帰って相談してからでもよろしいでしょうか?」

 「もちろん、構いません。ですが、協力してくださるなら、こちらもヒエ草を使った薬の開発をしようと思いますので、トウヨ子爵家へ増産のお願いをできると思います。」

 「ヒエ草の増産ですか?」

 「はい」


 フーカ先生は、勝算はあるという顔をしていた。

 そして、確かにあると思う。

 ヒエ草は、育てやすいけれど土を選ぶ。領地の一帯でしか育たない草だ。今までは熱さましに使っていたが、乾燥させると薬効が半減してしまうため、使い勝手が良くなかった。だから売りにくい。作ろうと思えば、今の10倍くらいは作れる。


 「そうでした。リュシーさん、ご一緒にお茶をしませんか?珍しい菓子を用意したの。」

 「お誘いありがとうございます。ぜひ!」


 フーカ先生は、見慣れない緑色のお茶を淹れてくれた。

 ほのかに甘く草の香りがするが、渋みもある。


 「珍しいお茶ですね。」

 「これは、茶葉を蒸して揉んで作られたお茶です。紅茶はこれを発酵させて作ります。」

 

 フーカ先生は本当に物知りだ。茶の作り方もすらすらと出てくるらしい。


 「1つずつだと多いと思うので、1口ずつ用意しました。右側からどうぞ召し上がれ。」

 

 フーカ先生と閣下が、一緒にテーブルについた。閣下は毒見もしていないのに、フォークを刺して口に入れた。その表情から美味しいのだとわかる。

 珍しいとはおっしゃっていたけれど、本当に見たことのない物だった。

 右側からか…右端には、緑色の丸いものがあった。

 その隣には、それに赤茶色の粒粒したものが乗っているものがある。

 中央には、パンのような物があり、その隣にはパンの中に赤茶のなめらかな物が入っていた。そして左端には、右端と同じようだけれど中に赤茶のものが入っている。


 リュシーは、右端の丸いものを食べて弾力というか経験のない粘りに驚く。だが、いやな物ではなく、かみ砕いているうちに飲み込めた。ほのかに知っているような香りを感じる。

 次の物は、粒粒したものが甘い。そして、下の物は先ほどと同じものだった。甘いものが乗っているのが美味しい。


 「いかがかしら?」

 「初めて食べます。でも、甘くて美味しい。それにこの歯にくっつくような感じが、面白いですね。」

 「ふふっ、お団子というお菓子なの。」

 「これはパンですか?緑色ですね…あっ…やはりどこかで…」

 「乗っていたのは小豆です。それを潰したものが次のお饅頭と最後のお餅にも入っているの。」

 「へぇ…材料は同じで姿が変わっているのですか?面白いですね。」

 

 リュシーは、最後に半月型のオモチを食べた。最初のダンゴというものに似ていたが、より食べ応えがあった。色は濃い緑色で草の繊維も沢山見えた。

 そして、強い香りの正体が分かった。


 「これ、ヨモギ草ですか!?」

 「当たりです。おいしいでしょう?私の生まれ故郷では、昔からこうやって食べられているの。」

 「こんな…薬草を菓子にするなんて…でも、これは食べやすい…」

 「食べ物と一緒に美味しく食べて、胃腸も健康になって、お肌にもいいなんてとてもいいと思うのよ。」

 「驚きました。こんな使い方があったのですか。」

 

 「いろいろと活用法があるの。もちろん、成分を取り出して薬にも出来るでしょう。」

 「なるほど…相談してみます。」

 


 リュシーは、家に帰るのが正直怖かった。

 薬師にはなれなかったと親へ報告したら、勘当されると思ったのだ。

 だけど、フーカ先生のおかげで閣下から「薬草庫と薬草園の管理者へ任ずる」と書かれた任命書をいただいた。それを手に親と交渉をしなくてはならなくなった。

  

 「ほぉ…管理者か…。」

 「父上の許可が必要になります。お願いできますか?」

 「そなた…薬師になるのではなかったのか?」


 父の目が怖い。いつもそうだ。近くにいるだけで怖くて震えてしまいそうだ。

 リュシーは、ポーションを5本父の机に並べた。


 「はい。薬師の勉強は致しました。これらは、私が作った下級ポーションです。全て良です。こちらは父上へお渡しします。」

 「なんと!下級ポーションが作れるようになったか!しかも良とは、よいではないか!!その上で、薬草庫の管理者か…。ふむ、だが…薬草園とは何だ?お前は家業をわかっているのか?」

 「はい。我が家は、ヨモギ草とヒエ草を栽培し販売しております。」

 「ならばなぜ?閣下も閣下だ。我が家の稼業を横取りする気か?」

 「違います。閣下の薬草園で、その2種類を栽培する予定はございません。」

 「では、何を栽培するつもりだ?」

 「癒し草と露草だそうです。私が、閣下の元で勤めることが条件ではありますが、こちらの農園を広げられるなら、ヒエ草の収穫量を増やし買い取りたいとも仰せでした。」

 「なんだと?」

 「品質は見られます。上より上の物でなければ、買い取っては貰えません。ですが、私がヨモギ草やヒエ草で得た知識をもとに、癒し草と露草を育てるのであればと…お気遣いくださいました。」

 「なんと…それは良い話しだ。早速、閣下の元へ参らねばならん。」


 父が慌てて出ていくのを、リュシーは見送った。

 嘘は言っていない。本当のことも言っていないが、父の興味は別のところへ向いている。ほっと胸を撫で下ろした。

 ポーションは作れる。効果がないポーションを売って薬師を名乗っている者より、ずっとマシな物を作れる。だけど、ギルドで求める水準ではない。それだけのことだ。


 翌日から、リュシーは管理者として勤務することになった。

 朝、工房に薬草を届ける。翌日の必要数の予定を聞き、手配をかける。午後に正式な数の依頼が届いたら微調整をするというのが、メインの仕事となった。

 さらに、管理室のある学び舎の近くに畑も作られた。

 栽培用の苗や種をフーカ様が用意してくださった。それらを使い農夫とともに育て方を試し始めた。


 

 7日目、楓花たちはヒシフォートを離れようとした。

 楓花とララ親子、リリーとサナの5人だ。

 女性2人に子供3人という組み合わせだけでは、「危険すぎる」とストップがかかった。


 だからと言って、他領を周りたいのでヒシフォートの騎士たちは連れていけない。

 解体を教えている天龍に声をかけるのは、申し訳なかったけれど、声をかけるしかなくなった。

ケイさんを連れて、アートンを訪ねた。

 

 「もちろん同行します。今時期は、ツリーホーンを覚えていればどうにかなります。」

 「そうなの?それなら、よかったけど…」

 

 ケントの返答に拍子抜けしてしまった。

 4種類も預けていたから、1種類に3日かけてもそれなりに時間がかかると思っていたのに…。 

 天龍の6人も加わり、一度ヒシフォートで敬一郎を下ろし、11人で他領へ出かけようとすると敬一郎が声をかけた。


 「必ず毎日連絡をしてください。居る場所と会った人物など必ず!」

 「ケイさん、大丈夫ですよ。」

 「大丈夫ではありません。必ず連絡を。」

 「わかりました。連絡します。」


 楓花は挨拶を終えると出発した。



読んでくださりありがとうございます。

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