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翌日までは、少し移動してライトフラワーの花弁を摘み続けた。
合間でのお茶と食事を通して、子供たちの包丁の腕も上達していく。ライラも、少しずつだが参加するようになっていた。
その間、敬一郎はケントたちと狩りをしていた。
これまでに考えてきた道具を試し、策を試していた。
獣の習性は知っていても、実際に効果を見られるのは大きい。
もちろん道具や策には毒などは使用していない。狩った肉は食べられるように配慮していた。
ケントとアーサーは、ホワイトジャイアントの礼に金ではない物を頼んだ。
それは、オークやブラックベアーなど今回で狩った獲物5種類各4頭ずつをそのままの状態で、アートンへ運んでもらうことだった。
彼らは、楓花がアイテムバックを使えることは知っていたが、その収納可能サイズは知らない。当然、時間停止なども知らないため、公表している敬一郎を頼った。
敬一郎は、その頼みを受けたことにより、楓花がそれなりに自重していることが分かった。
楓花がイルルジオーネに来て4日目、ヒルストンとアートンに肉と薬を卸しに向かった。それから天龍を降ろした。
その際、敬一郎はギルドの中庭でツリーホーン4体を取り出した。
天龍は、冒険者たちを集めて、それらの解体を教えることにしていた。
獲物を届けてもらい、落ち着いた場所で多くの冒険者が解体方法を学ばせる。それが彼らの考えた方法だった。
春に狩ることの多いツリーホーンの解体を覚えたら、少しは仕事がやりやすく、そして安全に出来るようになるだろう。
これにより、適当に必要部位のみ切り落としてきた者たちは、正しい解体方法を学ぶことが出来た。そのまま、解体した肉を干し肉にする方法も学ぶ。
そして、ギルドの記録官が、その手法を書き取った。
それから3日間、天龍は楓花と離れ講習会に集中した。
後日、それらをまとめた「解体の手法」という冊子が、アートンの冒険者ギルドから販売され、その販売の1割が天龍へ送られることになった。
その講義により、アートンの冒険者の解体技術が向上しただけではなく、筋肉の付き方や骨の位置を知ったことで、弱点を狙い攻撃することも出来るようになっていく。
天龍を降ろした楓花たちは、一度ヒシフォートへ向かった。
お屋敷に泊まらせてもらい、薬師と調合師を集めた。
彼らに、石鹸の製造手法を教えるためだ。
もちろん、ララとリリーも一緒に学んだ。
その間、ライラはお茶をしていた。
「皆さん、それではよろしいですか?今日は石鹸を作ります。」
「こちらに重曹を用意しました。これを天日で1時間焼きます。これで焼き重曹になります。こちら皮膚に付くと炎症を起こしますから、気をつけましょう。」
「植物油か、動物性油脂1L用意します。オイルの種類によって洗い心地や泡立ちが変わります。また匂いも変わりますので、それを意識して選びましょう。」
「今回は、ひまわり油を使います。動物性油脂の場合は、脂を取り出したら、固形の部分は取り出してください。では、油に半分より控え目の450gの焼き重曹を入れて良く混ぜます。完全に溶けないかもしれませんが構いません。これを型へ入れます。」
「翌日には固まりますので、お時間があるときに使う大きさに切り分けて、よく乾燥させましょう。半年くらいで使いきるようにしましょう。」
石鹸は、特別な材料がなくても作ることはできる。
彼らには、ポーションづくりや、各種薬に加えて石鹸を作ってもらうことにした。石鹸の熟成期間も考慮した、製造予定を立てていく。
さらに見習いたちも試験をして、15人が薬師になった。
ただ、1人残されていたのはリュシーだった。
リュシーは見ていると詰めが甘い。本人は真剣なようだけれど、何かが欠けていた。
だけど、美点もあった。薬草保管庫は、だれでも出入りできる。持ち出しを記録するための持ち出し簿があるけれど、その半分以上は、彼の文字で埋め尽くされていた。
「フーカ先生、私は…薬師にはなれないのでしょうか?」
「そうですね、残念ですが…もう3回もチャンスは与えましたので、薬師には向いていないと思います。」
「うっ…」
「ですが、リュシーさんには別の才能があるようです。」
「別の?」
「はい、作ることは難しいようですが、薬草を管理することが出来ています。生で使う癒し草に水を与え、水から引き揚げ、鮮度を保つのはなかなかに難しい作業です。見極める力があるので驚きました。」
「それは、たまたま…我が家は、薬草園を手掛けていて、農夫たちが苦労して作っているのを知っています。彼らの薬草を売るまで鮮度を保つ方法は、子供の頃から教わっていて…。」
「そうでしたか、素晴らしいですね。でも、乾物は?乾物は乾物で湿気らないように、乾燥魔法も使ってくれていますよね。」
「それは、貴重な薬草ですから。」
「そうですね。それに、持ち出し記録の穴を、薬師たちに聞いて記録漏れの記入もしてくれていますね。」
「はい、それは…気が付いていたのですか?」
「もちろん。リュシーさんの字ですから、まめに聞き取りをしてくれているのもわかりました。リュシーさんは、薬草の管理などの物品管理が向いていると思うのです。隙間時間で、やってもらいたいこともあります。」
リュシーは、トウヨ子爵家4男である。家を継ぐ確率はほぼない。
家に余剰爵位はないので、貴族の息子ではあるけれど、家を出ればただのリュシーになってしまう。
そのため、小さな領地の産業であるヨモギ草とヒエ草の農場には、頻繁に顔を出していた。覚えれば、兄から領地の管理官を任せてもらえるかもしれないとの期待があった。
ヨモギ草は、独特の香りと苦みのある草で、体に活力を与える。
ヒエ草は、発熱した時に熱を下げる効果がある。
それらの取り扱いを学び、収穫量や出荷量を帳簿につけていた。
それが、こんなところで役に立つのか。
「リュシーさんには、工房と学び舎で使う薬草や器具の管理をしてもらいたい。いかがですか?」
フーカ先生の言葉を聞いて、すぐ後ろにいるヒシ侯爵閣下へ視線を向けた。
頷かれた。
閣下が良いのであれば、問題はない。薬師になれないのは残念だけれど、別の能力を認めてくださった。
それならば、そちらに注力しよう。
「承りました。誠心誠意務めさせていただきます。」
「お願いします。」
「フーカ先生、合間の仕事とはどのような事でしょうか?」
「この裏に癒し草と露草の薬草園を作りたいと思うの、農夫を用意するから彼らの指導をしてはもらえませんか?」
「それは…」
実家の事業に影響が出そうだ。
これを受けてもいいのか?
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