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楓花は運転席に戻った。
車の運転席と助手席の間にあるナビの横のボタンが赤く点滅していた。
なんだろう?
そのボタンを押した。
『3分前にガードに対し敵対行為あり。』
「え?敵対行為?どういうこと?」
『映像を再生しますか?』
「再生して。」
『かしこまりました。』
ナビの画面に映し出されたのは、突撃してくるウサギだった。
敵対行為って…つまり突撃してきたウサギ…当たり方が強くてガードに首を折られたようだ。
楓花は、ロッカーで見つけたナイフを腰につけると外へ出た。
湖ではなく、木々のある方向のようだった。
木々の方を歩いていると、ウサギが1羽倒れていた。
もう死んでいるようだ。
食べるならすぐに血抜きをしなくてはいけない。
狩猟免許のある叔父たちが鹿を仕留めてきて、捌くのは見たことがあったけれど、ウサギを捌くのは経験も見たこともない。
でも、死んでしまったなら食べてやらないと…。
3分前なら、まだ大丈夫だろう。
学生時代に鶏の解体はしたことがあった。
あの時は、2人で1羽だったのに休みが多くて1人1羽を解体することになった。
エタノールで眠らせて、足をつるしてから首を切った。
あの時と同じようにすればいいだろう。
車に戻り、ロッカーにあったロープを持って戻った。
ウサギの足をロープで縛り、木の枝にひっかけて吊るすと首を切った。
思いの他軽く深く切れて驚く。
血が流れてきたので、まだ大丈夫だったようだ。
心臓が止まって長く置くと血のめぐりがなくなり、血抜きがうまくできなくなる。そうなると肉に血が残り生臭くなるらしい。
冷凍冷蔵庫に肉はたくさんあるけれど、それはそれ。
これはこれだ。
命を粗末にしてはならない。というのが楓花の主義だった。
そう思うけれど、捌く勇気を持てずにどうしようかと悩んでいた。
ガサリっ。
楓花は音に驚いて、顔を上げた。
目の前に黒い大きな影があった。
楓花は、腰が抜けてその場にへたり込んでしまった。
まずい!へたり込んでいる場合じゃない!
逃げないと!
そう思うのに体が動かない。
血の匂いはガードできないの?
ダメ!
動いて!
動かないと死んじゃう!!
絶体絶命と思っていると、目の前でその巨体が崩れ落ちた。
巨体は崩れたけれど、ガードに阻まれずるずると落ちていく。
倒れたところで大きな剣が刺され、完全に倒れた手がガード内に入った。
なるほど、死んでいなかっただけか…。
後ろには、大きな剣を刺した男性と、杖を持った女性がいた。
「おい、あんた怪我をしているのか?」
「え?あっ…いえ…」
「ケント、大丈夫そうよ。ほら…」
後ろの女性が指さしたのは、透明な宙に浮かぶ血痕だった。
「お?ガードが使えるのか。それなら…ああ、なるほど」
ケントと呼ばれた男性は、枝に吊るされているウサギを見て笑顔を見せた。
杖を持った女性がマントのフードを外した。
くすんだ長い金髪が落ちてきて、前のめりになったことで顔がよく見えた。口元の黒子が色っぽい。
「ねぇ、会ったばかりで申し訳ないけど、そのガードに入れてもらえない?」
「え?」
ガサリと音がして、後ろから大けがをしている2人を背負った男性がやってきていた。
「怪我をしているの?」
「ええ、こいつにやられてね。私たちも疲れていてガードの魔法は使えないの。入れてくれたらお礼をするから、どうか入れてもらえないかしら?」
「少し待ってもらってもいい?」
「もちろん。」
ケントと呼ばれた男は甲冑姿でがっちりとしていた。青い瞳をしていて、こちらに向ける視線に嫌な感じはしない。
女性は金髪の長い髪でゆったりとしたカールだ。黄色い瞳は見慣れないけれど、怖くはない。口元に黒子があり色っぽい。
後ろから来た男性は、ケントと同じように甲冑姿だったが、顔を覆うヘルメットを着けているので顔はわからない。両肩に一人ずつ背負ってきた様子やその子たちを降ろすのにケントに指示をしている声は優しいものだ。悪い人たちではないだろう。
楓花は、キャンピングカーに戻り深呼吸をした。
ロッカーを開けてドアの内側についている鏡を見て、頬に血がついているのに気が付いた。
なるほど、これで怪我の心配をされたのか。
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