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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第9章 旅行

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4


 ライラは、緊張していた。なんとか、服を脱ぎ、用を足した。

 本当に、この美しい陶器の椅子にしてしまっていいのかと不安になる。

 中には窪みがあり、少しの水が溜まっている。でもしていいというから、覚悟を決めて排泄した。とても背徳感のある行為だった。

 そして、確かに椅子の横には薄い紙があった。それを手に巻き取りちぎる。なるほど蓋にギザギザがついていて、ちぎれやすくなっているのね。柔らかくて気持ちのいい紙だわ。あの口の周りを拭いた紙と似ていた。

 レバーを引く?

 あ…これかしら?

 椅子の後ろにある箱のレバーを引くと、ジャバーっと音がして水が流れ、汚物と紙を消し去った。


 まぁぁぁ!!!

 何よ、これ、これも魔法なの?

 すごいわ!

 どうなっているのよ。

 ライラは、大興奮だった。

 国内有数の商家といえども、厠は厠だ。

 外にある臭い場所だった。

 自室でする時には、おまるを使っていた。

 それをメイドが運んでいく。最近でこそ専用のおまる部屋を作ったけれど、それまでは衝立の奥でしていたから、部屋に臭いが残ることもあった。

 

 「お母さま、出たらここで手を洗ってね。右側の出っ張りに手を翳せば水が出てきて、左側の細いところに手を翳せば石鹸が出てくるわ。」

 「なんですって!まぁ!温かいわ。石鹸が!まぁぁぁ!!!」


 ライラは、大騒ぎだった。

 石鹸がどれほど高価で、貴重な物かを知っているからこその大騒ぎとも言える。


 

 ライラは、外に出てライトフラワーの花弁を摘み始めた。

 時折、立ち上がって背中を伸ばした。

 フーカ様が体操という物を始めると、皆がそれを真似して動く。最初は、あっけにとられて眺めていたのだが、ララに誘われて真似てみた。

 それをすると、不思議と体が楽になった。黙っているよりも動いたほうがいいと知った。そして、また採取をした。




 ケントとアーサーは、出来る限り楓花たちのいない側に獣を誘導して狩りをしていた。

 そうすることで、解体の現場を見せないで済む。

 しかも、ガードの中であれば、テンとダンにも普段できない丁寧な説明をしてやる事ができる。またとない機会なのだ。


 「いいか、血が残っていると生臭くて食べられない。こうやって吊るして首から血を出させる。」


 獣が木に下がっている様子は、生生しい。

 さすがに、子供や商家の奥様達に見せるようなものではない。


 「皮を剝ぐ時には、こうやって毛を丸めながら肉に毛がつかないようにする。」

 「毛がついたらどうなるの?」

 「臭くて食べられたものではなくなる。ウサギぐらいなら、お湯につけてから剝ぐ方法もあるが、こういう場所には向かないな。」

 「へぇ…」

 「そうだ。うまいぞ。そのまま肉と皮の間にナイフを進めろ。」

 

 獣の皮を剥ぎ、内臓を傷つけないように肉をそぎ取る。肉は筋肉の部位ごとに剝がしやすいので、できるだけそう切り取る。

 何度も説明してきたことだが、今日はガードの中で余裕があるため、集中して教えられるし実践もできる。ガードの中で解体をさせるのは、2度目だった。

 楓花がいない時の周囲を警戒しながらの作業とは異なり、丁寧に教えられた。

 ダンもテンも問題なく進めているので、ケントとアーサーは狩りに集中することにした。

 

 春になったばかりの獣の身は痩せていて、秋とは大違いで美味しさは異なっていた。だが、増えすぎても困るので、ガードから離れない獲物は狩るようにしていた。

 それでも、それなりの数が寄ってくる。解体しているから周囲には、血の臭いがしているのだろう。

 腹を空かせた春の獣たちにとっては、魅力的なようだ。


 


 楓花は、疲れたので休憩することにした。

 ブルーシートを敷き、キャビンで沸かした湯をポットへ入れた。

 今日は、紅茶のティーバックと個包装の菓子にした。

 手を拭くための濡れティッシュも用意する。

 皆も慣れてきたのか、1枚ずつ取って手を拭いていた。

 

 「これは?」

 「これはティーバックです。袋の中に茶葉が入っていて、少し浸けてから振るとお茶が出てくるの。今日のようにティーポットを使うのが面倒な時に便利です。」

 「まぁぁ!それはいいですね。」


 ライラは、見慣れないティーバックに目を輝かせた。商売になる!

 よく見ると袋は薄く少し透けているけれど、茶葉が出てこないほどに目が細かい。

 

 「紙を使っているので、商売に使うなら、茶こしのほうがいいかもしれませんね。」

 「茶こしですか?」

 「ええ、ちょっと待ってください。」


 フーカ様は、車から半円形の目の細かい茶こしを持ってきた。


 「こうやって引っかけて茶葉を入れても同じことです。これなら作りやすいでしょうし…。」

 「なるほど…これはとても精密ですね。」


 残念だった。これを作れそうな職人に心当たりがない。

 

 「布で作ってもよろしいのですよ。木綿糸や麻でこういう網を作って…もしくは小さな巾着にして…」

 「なるほど、それならできそうです。」

 

 大魔導士様なだけあって、博識だった。

 なんにでも答えてくれるというのは、こういう事なのかと実感する。


 「サナ、リリーさん足は閉じましょう。はしたないわ。」


 2人を見ると、膝をげんこつ2つ分ほど開いていた。淑女としてはだらしのない姿勢だったが、注意を受けて膝を閉じた。

 楓花の注意を聞いて、ハナも膝を閉じた。


 フーカ様も私も足を斜めにして座っているのは、スカートの時にも足の間を見せないためだ。たとえスカートでなくても、淑女の作法というものがある。

 フーカ様は、そういうことも気を配ってくださる方のようで安心した。




 「うわぁぁ!!!」

 

 大きな声が、車の後ろから聞こえた。

 フーカ様とルーシーが駆け出した。

 ライラは、ララに皆で一緒に固まっているように言い含めてから、車の後ろへ向かおうとして顔を上げた。

 

 大きな獣が、車の後ろに立っていた。

 ガードがあるのに?

 いえ、ガードの奥にいるの!?

 それでもあんなに大きいの!?

 あまりの大きさに足が震える。


 フーカ様は、向かいながらどこからか弓と矢を取り出し、構えていた。

 そこから何本もの矢を連射し、大きな獣の両目を潰した。

 大きな獣が暴れようとして、斜めに崩れ落ちる。

 そこにケントの大剣が振り下ろされた。

 

 首が胴体から離れ、獣の手がガードの中へと落ちてきた。

 こんな獣までいるの?

 

 フーカ様が弓を仕舞い、動いたのでライラも動いた。

 ケントとアーサーは、怪我しているようだけれど、生きている。

 車の側では、ダンとテンが抱き合っていた。

 

 フーカ様が2人を見て、頭を撫でてから服を渡していた。

 なるほど、失禁でもしてしまったのか。

 あんな物を見たのだから、それは仕方のないことだ。

 私は、済ませておいてよかった。そうでなかったら、今頃恥ずかしいことになっていたかもしれない。

 フーカ様が、ケントとアーサーの治療を始めると、ルーシーも手伝っている。

 子供たちは大丈夫だろうか?



読んでくださりありがとうございます。

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