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魔導車が走り出して間もなく、ライラ達はルーシーに声を掛けられた。
「ララさん、奥様、こちらのベッドに座ってください。」
「ベッドに?私は、こちらでよろしいわ。」
「いえ、これはフーカ様からの厳命です。こちらにいるのが安全だと言われていますので、我慢して座ってください。動き出しているので危険です。」
庶民と一緒に座る?と思ったけれど、天龍は一流の冒険者だ。これから長く過ごす彼らと険悪になるわけにはいかない。
でも、殿方とベッドに座るのは、どうにも許せない。
この部屋も2段ベッドだった。その1段目に座るように言われた。
「テンとダンはまだ成長しておりませんので、私とハナを挟んで座らせます。奥様は奥へどうぞ。」
「わかりました。仕方ありませんね。」
ライラがベッドに座ると、ララ、ルーシー、ハナ、少年2人が座り、入り口脇にあるロッカーにケントとアーサーが寄り掛かった。
「ピピピピ…」
「この音は?」
「動きます。歯を食いしばれ。」
「ピピピピ…」
もう一度、音が鳴った。
動くって、数分前から車は動き出していた。
何を言っているのだろう?
そう思っていると、体がちぎれそうな圧を感じた。気が遠のく。
なるほど…これでは、後ろがマットレスであることは、大事なことかもしれない。少し圧が緩んだところで、体を戻した。
「はぁ…驚いたわ。」
「一瞬の事ですが、動き出しは危ないので、ケント、アーサー大丈夫?」
「ああ、なんとか…。」
家を出て、車に乗ってその数分後「到着しましたから、降りてきてください。」と声がかかった。
「え?」
「やっぱり早すぎ。」
「ほら、忙しいから降りるぞ。」
ケントが、そう声をかけて部屋を出て行った。
「えっ…何?」
「お母さま、到着したの。早く降りるよ。」
「え?どういうこと?到着って…まだ出発したばかりよ。」
ハナとララまで部屋を出て行ったので、ライラも追いかけて出た。カウンターの窓の外の景色は数分前とは異なっていた。
窓の外には斜面があり、野原が続いていた。ところどころに雪も残っている。
どう見ても町の近くの風景ではない。だけど…時間を考えても、門をくぐってさえいない時間しか経っていない。
「え?何よ…これ…」
「ある山の中腹です。1か月前からこの辺りで、ライトフラワーの採取をしています。」
「ライトフラワー?」
「はい。暖かい服装で、外へ出てください。」
そう言われた。彼らは確かにそれなりに厚着だった。
ララもセーターを取り出して、着込む。その上にフーカ様に頂いたという薄い上着を着た。
「そんな薄い物を着るの?」
「ええ、もちろん。これでも十分に暖かいですよ。」
ライラは、念のために持ってきた木の実ウサギの毛皮のコートを着た。フーカ様に事前に言われていたので、パンツスタイルだ。
梯子を下りて行くと、本当に山の中腹だった。
寒い。
ここでライトフラワーの採取?
「こんにちは!」
「リリー、サナ!」
ララは、リリーとサナに駆け寄って嬉しそうだ。
「ここにいる間は、ライラさんとお呼びしますね。私のことは、様ではなくさん付けで呼んでください。」
「かしこまりました。」
「では、天龍の皆さんも「さん付け」で呼び合いましょう。様は禁止です。今日からしばらくは、今しか採取できないライトフラワーの採取をします。集めたらこちらのバケツへ入れてください。」
「はい!」
「ケントさんとアーサーさん、それからテンさんとダンさんは、ガード周辺の獣への対処をお願いします。春になって沢山の獣が出てくるようになりました。こちらのバケツをお渡ししておきます。」
「ガードはいつも通り10mです。その内側3mのところに紐を張っているので、そこから出ないようにしてください。紐より外側は狩りをする場所です。」
フーカ様が、天龍に獣の対処を依頼し、積み重ねたバケツという入れ物を彼らに渡した。
「では、ライラさん、摘み取り方ですが、このようにライトフラワーは花弁だけを摘み取ります。茎や葉には毒があるので、触れないようにお気をつけてください。」
「まあ、毒ですか?」
「はい、肌がかぶれるので花弁だけを摘んでくださいね。膝をついたほうが楽なので、こちらを足元へ敷いてください。」
「わかりましたわ。」
ライラは、楓花の隣で借りたシートの上に膝を下した。
その態勢で慎重に花弁を摘まむ。やってみると難しいものではない。ただ、面倒なだけだ。ララたちは、ハナも入って少女4人でおしゃべりをしながら花を摘んでいた。
ルーシーは、楓花とライラと同じシートに座っていた。
行動範囲と言われた紐で囲われている内側は、結構広い。
この全てを摘むと聞いて気が遠くなる思いだったが、2時間もすると大方の採取を終えていた。
「そろそろお昼ね。食事にしましょうか。」
「いいですね。火の用意を。」
「いえ、お昼は作ってきた物を食べましょう。テーブルとイスを出してもらえる?」
「もちろん、後ろと倉庫を開けますね。」
ケントとアーサーが、車から細長い物を取り出し。それを動かすと足の長いテーブルになった。幅は狭くて長い。それを2台縦に並べた。
「1台で向き合わせて6人ずつ座れそうだな。」
「ああ、だけどそうすると盛り付けの台がいる。」
「ならあっちのテーブルも出そう。」
「そうだな。」
ケントとアーサーが、四角いテーブルを持って来た。高さは違うけれど、ティータイムのテーブルくらいはありそうだ。
それを組み立てると、リリーが薄い布巾でテーブルを拭き始めた。
車のドアが開いて、フーカ様が見慣れない道具を手渡していく。
皆がそれぞれで動いて、とても早く準備がされていく。
ライラは呆然としたまま眺めていた。
楓花は、作り置いた温かい麦茶入りのウォーターサーバーと1升炊きの炊飯器を渡していた。次に鍋敷きと8Lの両手鍋だ。中には、ハヤシライスのソースが入っていた。
あとは、大きなボールに入ったサラダを置いた。外なので、ステンボールなのは許してほしいところだ。
木のお皿とスプーンとカップは人数分だ。
楓花は中央にご飯を盛り付け、片側にサラダ、もう反対側にハヤシソースをかけた。
リリーとララが手伝い始めた。楓花と同じように盛り付けた。
ルーシーは、カップにお茶を入れてテーブルに並べていく。
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