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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第8章 ギルド

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 ポーションの見学に回った者のほとんどは、指導者である楓花の作業を見ていた。

 それが終わったので、他の7人の作業を見に行く。

 楓花の作業は終わっていたのに、他の7人は作業中だった。

 薬研で乾燥した物を砕いている者、水で戻して擦っている者など様々だった。煮詰めている者もいる。

 先程の楓花の作業が、あまりにもシンプルだったので、他の者たちが格闘している様子に驚いてしまう。

 だが、誰もが真剣に作業をしていた。


 ケチをつけた者たちは、薬師として1人前の自負があり、思いあがっている女を正そうとしたに過ぎない。まさか作業を終えているとは思っておらず、そちらへ視線を向けることもなかった。


 赤髪の男ファイには、下級ポーションを作り、人を助けてきた自負があった。自分の薬は、ほとんどの症状に効果があり、作って3日も持つのだ。自分は本物なのだ。

 ポーションもどきが、多く出回っている事を腹立たしく思ってもいた。

 そんな中、ヒシ家から出ているポーションや薬が素晴らしいとの噂を聞いた。そのヒシ家が、薬師ギルドを立ち上げると聞いて、参加を決めたのだ。

 効果が補償された薬だけを取り扱うという内容には、同意しかなかった。怪しい薬を売る事のない、そんな当たり前の薬師ギルドに所属したかった。

 それなのに、来てみたらヒシ家の大魔導士がポーション作りを教えるという。どう見ても、その大魔導士を名乗る女のための事業だった。

 正直がっかりしていた。

 なんだ…女に箔をつけるためのギルドか。

 しかも、癒し草とリリカだけで作るなどと、嘘を並べている。

 こいつが、あの効果のないポーションをばらまいている奴に違いない。

 ポーション作りはそこまで簡単ではないし、適当に作れる物でもない。先ほどのポーションの効果は強かったが、あの女が作った証拠などない。いくらでもそう言って、装うことは出来るのだ。



 7人の男たちが、3時間かけてぎりぎりに仕上げた。

 瓶に入っているポーションの色は、濃い緑色から薄い緑色まで様々だ。

 ファイは、出来上がったぞとドヤろうとして、顔を上げて驚いた。

 

 指導者だという女は、椅子に座って本を読んでいた。

 

 「お前、本当に作ったのか?」

 「は?はい、作りました。皆さん御覧になっていましたね?」

 「はい。俺は作っているのを見ました。」

 「私も、最初から出来上がるまで見ていました。その後で皆さんが作るのを見ました。」


 「では、出来上がったポーションをこちらの鑑定レンズで確認してください。」

 

 敬一郎が、口を挟む。近くにいる受講生に鑑定レンズを渡した。

 受け取った受講生が、出来上がりを読み上げる。


 「こちらは、下級ポーション:可です。」

 「こちらは、草とベリーの汁です。体力向上の効果あり」

 「これは!毒です。」

 「これは、下級ポーション:可です。」

 「次は…草汁です。体力向上効果があり。」

 「おぉっ、下級ポーション:良です。」


 受講生からどよめきが起きた。作ったのは赤髪の男性だ。

 当然だといわんばかりに胸を張っている。


 楓花は、それを見ていた。

 態度はいただけないけれど、裏付けのある自信ってことね…。

 

 「あと2つと、大魔導士様の物ですね。」

 

 大魔導士様と言いつつも、どこか嘲笑を含んでいた。

 

 「これは、毒です。」

 「これも…下級ポーション:可です。」


 受講生たちの視線が、赤髪の男へ集まった。

 作っていない受講生たちは、最初から見ていなかったことを悔いた。

 下級ポーション:良を作れる腕のある薬師の作業だ。講師の女を優先して見てしまった。下級ポーション:良を作れる薬師は多くない。師事するならこの人だと思い、顔を覚えようとした。


 「わかりましたか?俺の腕はまともだ。これ以上の品を作れるのは、本物の大魔導士様だけだろう。」

 

 ファイが、「本物の」とわざわざ念押しした。

 7人のうち、初級ポーションは4人しか完成していなかった。

 他の3人は、少し治せる程度の薬であり、完成しなかったうちの2人はマイナスの効果しかなかった。

 受講生たちは、もうこれ以上の物などないと思った。

 しかも、最初から見ていた者たちは、生の癒し草と水、リリカの汁しか使っていないのを見ていた。

 やっていたのは、道具を全部煮るという訳の分からない呪い(まじない)だった。

 薬研も使わず作っている様は滑稽ですらあった。


 「閣下には、大変申し訳ないのですが、この人は道具を煮るという呪いはしたが、薬研も使わずに、奇妙な道具と癒し草と水、リリカしか使っていなかった。」

 「ああ、それは俺も見た。」


 「ふむ。では、楓花さんが癒し草と水だけで、作っていたことを証明しますね。」

 「見ていたから、それは断言します。」

 「そうだ!俺も断言できる!」


 見ていた全員が、糾弾でもするかのように癒し草と水、リリカの絞り汁しか使っていないと証明した。


 「では、教壇の品を見てもらいましょう。この部屋の道具を使い、材料を使ったのは誰もが認めている。さあ、見てみなさい。」


 鑑定レンズを手にした受講生は、レンズを覗いて前のめりになった。

 

 「下級ポーション:最高級。」

 「なんだって?貸せ。」

 「下級ポーション:最高級。日持ち180日ぃぃ!?」

 「俺にも見せろ!」


 そして、楓花のポーションを鑑定して、驚きの声を出す。

 赤髪の男性は、鑑定レンズを奪い取り見る。他の受講生たちもそれを見てから、皆のポーションを見て回った。


 鑑定レンズは、見たいと思った物と見る人の知識量により、見える物が異なる。

 赤髪の男性が、知識があり日持ちにも興味があるのだろう。


 「は?最高級だと?」

 「180日も保持期間があるなんておかしいだろう。」

 「何か特別な操作をしたのではないのか?」

 「いや、作業を見ていたけど、普通に作っていたよ。道具は違うけれど、作り方はおおむね同じだった。」

 

 同時に作業をしていた受講生たちは納得出来ないと口にするが、楓花が作業して出来上がった品であることは、見ていた受講生たちがよくわかっていた。

 そして、「やっぱり、師と紹介された人の作業を見ていてよかった。」と思っていた。

 なぜなら一番早くに出来上がり、一番作業量が少なく、材料も少なく見えた。

 つまり、これを覚えたら、楽にそして材料費を抑えてポーションを作れる。

 講習を受け、お礼奉公としての期間が過ぎたら独立し、自分の店を作って利益をがっぽりと得ることもできるってことだ。

 下働きから、一気に薬師様と崇められる存在になれる。受講生たちの夢は、膨らむばかりだ。

 


 「納得したか?講習を受ける気がない者は、すぐに立ち去れ。」

 

 敬一郎の声が、冷たく響いた。

 2人の受講生が出ていく。

 遅れて足の悪い男性が、立ち去ろうとした。それを楓花が呼び止めた。


 「ちょっとお待ちください。」


読んでくださりありがとうございます。

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