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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第8章 ギルド

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誤字・脱字報告ありがとうございます。

丁寧に読んでいただけて嬉しいです。



 ギルバートは、より一層艶々と輝いている楓花に目を細めていた。

 最近は一段と光り輝いていらっしゃる。

 それにしても、先ほどはおねだりを始めるのかと、つい下世話な事を思ってしまった。

 女の武器を使い、男に散財させる女は多い。貢いで財産を使い果たすと別の男の元へと行ってしまう。

まさか、そういう方だったのか?と一瞬だが思ってしまった。

 何のことはない、魔石の買い取りの相談だった。

 そんな物は、肉や毛皮と同じで売ればいいだけである。

 それを旦那様に相談なさるとは、かわいらしいお方だ。

 途中、知らない言葉がいくつかあったが、今までもお二人の会話では、時折わからない言葉が入っていた。お二人はそれで理解しあっているようなので問題はない。むしろ、お二人だけで通じるよう隠語を使ってお話しなさっているのだろう。


 それにしても、今日もフーカ様は見事なドレスと靴を身に纏っていらっしゃる。

 ドレスに使われている生地はネルだろう。

 ウサギなどの産毛から紡いだ糸で織る、最高級の布地だ。

 軽くて暖かいので、冬場には重宝するのだが、これを織れる工房は少なく数年先まで予約で埋まっていた。その貴重な生地をふんだんに使ったドレスを着ていらっしゃるとは、本当に優雅な生活をなさっている。

 靴はサーモンピンク色で、見たことのない形をしていた。底にかなり厚みのある皮靴で、その分背が高く見える。

 靴に宝石はついていないが、その代わりに金の縁取りがされていた。

 靴の踵にも金縁が施されていて、美術品のような仕上がりだ。

 靴に金を使うなど、地面に喰わせるような物だ。勿体なくて考えたこともなかった。


 

 話しを終えると、旦那様はフーカ様の魔導車へと乗ってしまった。ギルバート達側近は馬に乗り、屋敷へと急いだ。

 屋敷への道はくつかあるが、フーカ様は魔導車のため広い道を使われる。側近たちは、従業員たちが敷地内を行き来するための細い馬通りを使った。

 

 屋敷に先んじて到着し、お出迎えする。 

 今日もフーカ様は、とろけるような笑顔でサナを抱きしめ、リリーを撫でていた。

 



 楓花は、講習の準備に忙しくなっていたが、対外的には週末はいつも通りにした。

 屋敷に泊まりサナとリリーと遊んだ次の日には、アートンへ行き天龍とともに虹湖へ向かった。

 翌日には、ヒルストンとアートンに肉を売り、毛皮を売る。

 イルルジオーネ時間では、2か月で3回は大量に売っているけれど、価格が下がることはないようだった。

 むしろ、食べ物が少なくなる冬でも、肉を食べられると喜ばれていた。



 7月の海の日の前の週の火曜日、仕事を終えて帰ると敬一郎の車が来ていた。昼間、LIMOで今日の納品の連絡が来ていたのだ。


 「すいません、お待たせしました。」

 「いえ、急で申し訳ありません。コピー機の搬入をします。」

 「ありがとうございます。それではこちらに…。」


 コピー機が自宅に届いた。

 業者さんから、使い方の説明を受け説明書を受け取り、見送る。

 改めて、敬一郎をダイニングへと案内し、楓花と敬一郎は向かい合った。


 「楓花さん、こちらが専用インクと綴じる時に使う芯です。」

 「ありがとうございます。こんなに?」

 「しばらくは、いろいろと必要だと思いますので。」


 インクも2本入り5箱もあり、使い切れるかと不安になる。

 自動綴じ機能もある機種だった。そのための芯も大量だった。


 「それから、使用する紙について考えましたが、再生紙にしました。あまりにも白い紙というのはあちらにはないので…これでも十分に白いですが…。」

 「そうですよね。考えてくださってありがとうございます。これを半分に折る…」

 

 敬一郎と相談した結果、基本は薄い冊子として小出しにすることになった。B4に見開き印刷をして中央綴じをして半分に折る形式だ。そのために出来上がるのはB5サイズになる。


 「それと…彼らがメモや記録に使うための紙ですが、ルーズリーフは線の幅が太く真っ白ではないこちらにしました。綴じるための紐はこちらの綴り紐、底板にこちらの薄い3㎜の合板を用意しました。」

 「板ですか…」

 「はい、なしでもいいですがそうすると紙が痛みますのでね。」

 「それはそうですね。」

 「厚紙では、扱いのわかっていない者では早々にダメにするだろうと思い、板にしました。」

 「そういうものですか、わかりました。」

 「こちらは、楓花さんのサンプルです。」

 「ありがとうございます。」

 

 敬一郎は、それぞれを5個ずつくれた。

 

 「講義を受ける者たちには、建物を1棟用意しました。授業も、生活もそこで行います。そちらに、これらを箱で用意します。」

 「講習生は、何人くらいになりますか?」

 「今、集まっているのは18人です。それと、リリーとララさんが学びたいと…。」

 「ララさんが?」

 「はい、薬研や薬缶など道具一式を依頼しました。楓花さんと遊ぶ約束があると言っていたので、実は時間が…と話したところ興味があるようでして。」

 「講義を受けるのは構わないですが、それだとサナが暇になってしまうわね。」

 「あの子は、講義の間は教室の隅で過ごさせればよろしいでしょう。賢い子ですから、邪魔をすることはないでしょうし、そうなるようなら連れ出すようにメイドをつけます。」

 「よろしいのですか?」

 「はい、かまいません。それから、こちらが先日の魔石と交換する貴金属です。こちらが講習費用の前払いになります。」


 敬一郎は、大きいケースに入った貴金属と封のついた札束を積んだ。

 

 「多くありませんか?」

 「いえ、これで下級ポーションを作れる者が育つなら十分です。今は下級ポーションも貴重です。今回の者たちの中で、10人マスター出来るなら元は十二分に取れます。」

 「そうですか。そうなるよう努めますね。」


 「ケイさん、少しゆっくりお話しできますか?」

 「はい、そうですね…2時間ほどでしたら…。」

 「それでしたら、あちらへ移動しましょう。その方がゆっくり話せます。それと、あちらにまだ遺産がありましたので、お連れします。」

 「え?遺産ですか?わかりました。」

 

 楓花は、コピー機など一式をウエストポーチへ入れた。

 ウエストポーチは、こちらでも家の中であれば、使用可能だった。この家だけは部分的に繋がっているのかもしれない。

 敬一郎を乗せると、キャンピングカーで泉の家へ空間移動した。



 「ここは?」


 敬一郎が、かなり驚いた様子で周囲を見ていた。


 「魔の森の中のようですが、はっきりとした場所はわかりません。」

 「そうですか、どうやってこちらを知ったのですか?」

 「空間移動先に登録されていました。自宅の次です。気が付いたのは、2週間…3週間前くらいです。」

 「なるほど…では、最初に来させたい場所だったのかもしれませんね。」

 「はい、そうだと思います。」

 「魔の森の中にしては、雪がありませんね。」

 「結界が強いようです。」

 

 楓花は、車を収納すると家へ案内した。


 「おかえりなさいませ。ご主人様。」

 「ただいまエル。こちらは敬一郎さんよ。いろいろと助けてもらっているの。」

 「かしこまりました。わたくしメイドのエルと申します。」

 「ケイ・イチロー・ヒシだ。」

 

 エルが、深々と頭を下げていた。

 

 「コーヒーとチョコレートをお願いね。」

 「かしこまりました。」


 楓花は、敬一郎をリビングへ案内した。

 

 「あのメイドは元々いたのですか?」

 「はい、この家の妖精らしいです。実体化してくれたので、名前を付けました。」

 「妖精!?」


読んでくださりありがとうございます。

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