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7月に入り、気温が日々上昇を続けていた。
「暑い…」
夏の暑さへの耐性が低い楓花は、仕事が終わると家へ一直線に帰っていた。
エアコンのスイッチを入れてから庭に出て短時間で収穫をし、家へ入ったらもう出勤までは外に出ない。
7月の海の日のある3連休から、ヒシフォートでの薬師育成講座をする予定だ。
そのためには、作り方や道具の扱い方などの前に、基本的な衛生知識の講義予定だった。その内容の精査と教科書のような物を作りたいけれど、時間が足りない。
楓花はいろいろと考えた結果、仕事を終えたらイルルジオーネの泉の家へ移動することを考えた。
仕事終わりで向かえば、深夜の2時過ぎに到着できる。それを1日目として、お風呂などを済ませ6~ 7時間程度眠り、起床後は教科書の原案を考えパソコンで入力していく。夕方の16時に就寝し23時に起きてすぐに大和に戻れば朝7時になる。
変則的だけど、そうするのが効率よく時間を使えそうだ。
楓花は、仕事を終えるとコンビニに寄りすぐに家へと帰った。
「おかえりなさいませ。ご主人様。」
エルの出迎えを受けて、楓花の頬が緩んだ。
車を降りて、こっちが冬だったと思い出した。
泉の家から出るならタイヤ交換しないとまずい。今回は、出る予定がなくて良かった。
夏服で来てしまったので、めちゃくちゃ寒かった。
「ご主人様、そのような薄着は体によろしくありませんよ。」
「エル、ただいま。そうね。気を付けるわ。夜遅くにごめんね。今から朝8時まで寝るから起こしてくれる?これが今日のスケジュール。時間になったら教えてね。」
「かしこまりました。」
楓花は、エルにタイムスケジュールのメモを渡した。
「今からシャワー浴びてくるわね。」
――――エルに渡したメモ――――――――――
【1日のタイムスケジュール】
到着 シャワー、髪を乾かしつつ軽食(雑炊やホットミルクなど)
~8:00 睡眠5時間ほど
目覚めて20分程度で 食事(ごはん・汁・焼き魚・漬物・和え物)
8:40~仕事
12:00~10分 休憩(コーヒー、ケーキ)
15:00~ 食事(ごはん、肉を焼いた物、ガラスボールに野菜5種のサラダ)
16:00~就寝
23:00~大和へ帰る(厳守)
2日後にまた来る。これを4回繰り返す予定。
――――――――――――――――――――――
エルは、受け取ったメモを見て考えていた。
かなりのハードスケジュールになりそうだ。
これをスムーズに滞りなくお過ごし出来るようにするのが、私の仕事だ。
取り急ぎ、シャワーを浴びてからの軽食が必要らしい。
雑炊を今から作るのは無理なので、ホットミルクを作る。
つまめればと思いロールパンに切れ目を入れ、スクランブルエッグを入れた物とフルーツをカットしたものを用意した。
髪を乾かすのは脱衣室だ。脱衣室に小さなテーブルとイスを用意した。
少しでも寛げるように窓へ向かって設置する。ここなら、ドライヤーも届くので、召し上がっていただきながらでも乾かせる。
ご主人様のこのタイムスケジュールは、ほぼ余白がない。
睡眠時間もかなり少ない。時間を生み出すのが最優先なのだろう。それならば、少しでも効率よく過ごすことが優先だ。放っておいたらホットミルクだけで寝てしまう。
「あれ?」
「軽食も用意しました。召し上がれるなら一口でもどうぞ。その間に、御髪を乾かしてもよろしいでしょうか?」
「ありがとう。助かる。」
エルは、ご主人様の長い髪を梳かし、タオルでしっかりと抑えて水分を取る。
ご主人様は、水を1杯飲むとパンを2口召し上がり、それからホットミルクを飲みながら果物を摘まんだ。今なら風が当たってもよいだろう、ドライヤーを当て始めた。
「エル、ありがとう。もう乾いたから冷風で整えて。」
「はい、只今。」
ご主人様は、水を飲み干すと歯を磨いてから、寝室に入られた。
エルは、先ほどのスケジュールを書かれたメモを見て、時間を逆算し始めた。
ご主人様が、ベッドに入ったのが2時数分前だった。
8時にお声がけしなくてはならない。
食事は8時20分ごろだから、今からお米を研いで、8時に炊き上がるようにタイマーをセットしよう。
漬物は今から作り、和え物は朝作ればよい。その間に魚も焼いて…エルは、ご主人様に合わせて動く予定を組み立てていた。
「ご主人様、お目覚めの時間です。」
楓花は微睡の中、柔らかな少女の声に目を覚ました。
そうだ、泉の家に来ていたのだった。
「エル、おはよう。」
「おはようございます。ご主人様。お洋服はこちらにございます。お着替えのお手伝いを」
「着替えは一人でいいから、食事の用意をお願いね。」
「かしこまりました。失礼します。」
楓花は、大和から持ち込んだだろう洗面台でうがいをして顔を洗った。
この家の設備は、大和にいるのと変わらないと改めて思う。
蛇口を捻って出てくるのは、聖なる泉の水だけどね。
エルが用意してくれたのは、フランネル生地でできたグレーと黒のワンピースだった。私に合わせてくれたのかな?裾の長さがひざ下20㎝ほどで引きずらない長さだった。
フランネル生地を見ると、おばあちゃんが着ていたなと子供時代を思い出した。
足元が寒いからか、エルが用意してくれたのは、なんて言うものかな?ペチコートとは違うボリュームのある南瓜パンツだ。生地がしっかりとしていて、膝の辺りで絞られている。
折角だから履いてみると、なるほど暖かいしスカートが膨らんで見える。
でも足首が寒いから、バックに入れてあった黒タイツを履いてから南瓜パンツを履いた。
着替えをして1階へ降り、ダイニングへ行く。
「ご主人様、お食事の準備が出来るまであと3分です。」
「ありがとう。」
席に座って待っていると漬物と和え物が置かれ、焼きあがった魚と炊き立てのごはん、野菜たっぷりの汁が出てきた。
リクエストしたとはいえ、イルルジオーネで和食って不思議だ。
作ってもらった料理を味わいながら、エルに話し相手をしてもらう。
「美味しかった。ごちそうさま。」
楓花は、出してもらったお茶を飲んで、手を置いた。
軽くストレッチをしてから書斎へ入った。
パソコンを開いて、作業を始める。
調べものをしようとして、ついいつもの通りに検索サイトを立ち上げた。
え?使えるの?
表示に時間がかかるけれど、ネットを使うことは出来るらしい。
気になって、スマホを見てみるとこちらも使えるようだ。こちらも読み込みには、時間はかかるらしい。時間がかかったとしても、調べられるならかなり助かる。
パソコンで入力しつつ、表示されるのを待つ。
「ご主人様、休憩のお時間です。」
「ありがとう。」
楓花は、手を伸ばして体をのけ反らせる。
肩をほぐし身体を緩めた。
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