5
「どうしました?」
ついケイさんを見つめていたらしい。
楓花は苦笑いをしてしまう。
「料理方とかは、興味ないのかなと…。」
「残念ですが、パンを作る事とかは私にはできませんので。」
「なるほど…。」
「ですが、屋敷で野菜を出すようになど、出来る事は教えていますよ。」
「そういえば、お野菜はいただきましたね…え?もしかしてお野菜は普通食べないの?」
「食べないというか…貴族の場合、野菜をそのまま食べる発想がないですね。肉や魚で腹を満たすのが、貴族のような思考があるようです。果物があれば食べますが、その程度でしょうか。」
「え?」
「ですから、短命ですよ。それに、貴族家の子供は切れやすい。」
「それって、糖分が足りなくて脳が十分に育っていないとか?」
「なくはないかもしれませんね。」
「食べ物のバランスっていう発想がないの?」
「無いと思います。料理人たちもいかに肉や魚を食べさせるかしか考えていません。」
「そんな…」
「パンは多少出ますが、主食というよりも…ソースを食べきるための物です。」
「はぁ…」
「庶民にとっては、そうですね…どちらかというと野菜とそれしか食べられないに近いかもしれない。塩味のうまみのないスープに浸しながら食べる物です。」
「はぁ…」
全然イメージが付かない。
でも、お金がないから、うどんとかふりかけご飯で済ませるのと同じだろうか?
ふりかけご飯よりは、納豆ごはんの方が数段上の栄養バランスになるし、味噌汁が付くとかなり良くなるけど…そういった工夫がないの?
いや、でも…食材を買えないのなら、そもそも教えても意味がないし…う~ん…。
「悩まないでください。野菜は今時期であれば豊富です。パンは、収穫がない時期に食べられる物です。」
「そうなの?」
「そうですよ。冬には、野菜も尽きますからね。春先などは、小麦やらい麦などで腹を満たさねばなりません。冷蔵庫がなく、保冷庫も貴重ですから、そういった生活になります。」
「なるほど…」
「ですから、楓花さんの干し肉や燻製肉はかなり貴重な保存食になります。」
「へぇ…それなら、頑張って作ろうかな。」
「是非お願いしたい。それと、先日の薬の件ですが、詰め替える担当者は決まりましたから、近いうちに手ほどきをお願いしたい。」
「わかりました。時間を作りますね。」
夕食を終えると、天龍のメンバーとギルバートは外2階に上がった。
楓花と敬一郎は、キャビンで過ごす。
今夜は不測の事態に備えて、敬一郎は1階のベッドで、楓花はルーフにマットレスを広げて寝ることにした。
「交代だよ。」
「ありがとう。ではもう少し寝させてもらう。」
朝の3時30分、最後の宿直の交代が行われた。
焚火の火が消えないように、集めた枝を入れていく。2人と3人に分かれて車を中心に左右に分かれて警戒をした。
朝日が昇り始める頃、なかなか明るくならない。
しばらくして、騎士たちは異変に気が付いた。
周囲をホワイトジャイアントに囲まれているから明るくならないのだ。
騎士たちは持っていた鐘を鳴らした。
それに飛び起きてテントから出てきた騎士たちは、あまりに圧倒的な大きさに怯んだ。
鐘の音が鳴りだして、3分後になって敬一郎が気付き、楓花に声を掛けた。
「楓花さん、ホワイトジャイアントに囲まれています。」
楓花と敬一郎は、キャビンから外を見て把握した。
「敬一郎さん、騎士の皆さんにこれを貼って外2階に上がってもらってください。」
「わかりました。」
「貼り終わって全員が乗り込んだら、助手席へきてください。空間移動します。」
「わかりました。すぐに。」
楓花は外へ出て、周囲を片付ける。
天龍のメンバー3人と騎士団の20人、リハルドさんとギルバートさんを確認し、詰め込むように2階へ上がってもらった。
楓花は運転席について、敬一郎を待つ。
「出してください。」
「わかりました。ドアを閉めてください。」
「ナビ、アートンへ空間移動して。」
『かしこまりました。アートンへ空間移動します。』
立ったままでは不安だけど、ギューギュー詰めだから大きな怪我はしにくいはずだ。
次の瞬間、アートンの外側100mの場所に出た。そこには、グリフォンたちが待機していた。
敬一郎に声を掛けられ、騎士団が降りてくる。
「え…ここどこですか?」
「アートンの外だ。」
騎士団の20人とリハルドさん、ギルバートさんが驚いていた。
天龍のメンバーは平然としている。
「一瞬でここまで…」
「今から、グリフォンであの場所へ戻る。爆弾を仕掛けてきたが、戻り次第上からも落とす。それで取り逃がしたものをせん滅する。」
「はっ!!」
「10人ずつに分かれろ。私とリハルドで左右から分かれて向かい周辺の様子も探りながら向かう。」
「はっ!」
「私も向かいます。」
「楓花さんは危険すぎる。」
「大丈夫です。地上には降りません。」
「約束できますか?」
「はい、降りるのは怖いですから、空から弓で援護します。」
「わかりました。それではお願いします。」
「天龍の皆さんは、ブルーシートを敷いて戻ってきたら、怪我の治療が出来るよう待機してください。」
「わかった。楓花さん、皆さん気を付けて。」
「ルーシーさん、これポーションと薬一式ね。」
「はい、お預かります。」
楓花はサクラに乗り、初めて空へ出た。
「わっ…風圧つよい…」
風圧に負けないように、鞍に捕まるのが精一杯だった。
騎士団が一定の場所にいるのを見つけた。
「サクラ、ケイさんの…ボスのところへ行ってくれる?」
サクラが、敬一郎さんのグリフォンへ近づいた。
楓花は、空気を吸って大声を出す。
「お待たせしました。」
敬一郎さんが軽く手を挙げた。
「ホワイトジャイアントが5頭ですか、爆弾が効いていませんね。」
「半分仕留めたなら、いいではありませんか。」
「それはそうか…。」
「では、追加で落とすので、皆はこの高度を保ってください。」
敬一郎さんの合図で、騎士の1人が降下し手りゅう弾のような物を投げた。
それにしても、事前に仕留めたホワイトジャイアントも含めて20頭近くいたことになる。元々生息していなかったというのは信じられない。
生き残ったホワイトジャイアントの目を狙って、楓花は矢を打ち込んだ。
その後、騎士団が舞い降りて剣を振るい始めた。
ホワイトジャイアントは、全てが手負いとなっており、騎士団は何とか仕留める事が出来た。
ホワイトジャイアントを敬一郎が収納し、アートンの外へと戻った。
怪我をした騎士に天龍の3人が、治療を施す。
治療と言っても、主に癒し水を用いて、それで難しい場合に消毒薬などを使った。
「全員無事とは、奇跡的だ。」
「リハルド、それは当然だ。お前たちに無駄死にするような指揮はしない。」
「はっ!失礼しました。」
「それにしても、やはり異常ですね。元々生息していないのなら、20頭近くいるのはおかしいです。」
「そうですね。いくら収穫期で冬眠前と言っても、あの数は異常だ。」
「しばらく、ここを拠点として調査を続ける。」
「楓花さんと天龍はここで、戻ってくれて構わない。協力金は後ほど支払う。楓花さん、オークはそちらに渡す。ホワイトジャイアントは申し訳ないが、こちらの取り分とさせてもらいたい。」
「わかりました。ご武運をお祈りします。こちらポーション各種です。お使いください。」
「ありがとう。助かります。」
残念だけど、楓花としては時間切れだ。
アートンとヒルストンに肉を下ろして、大和に帰らなくてはならない。
天龍の3人と共にヒルストンに向かい、いつも通りに肉と薬の販売を行い大和へと戻った。
読んでくださりありがとうございます。
リアクションと合わせて星印を★★★★★~★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです。




