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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第7章 騎士団との共闘

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 ギルバートは、長机に向かうと肉に旦那様と同じ黒いソースを掛けた。生の野菜とクラッカーなる物を皿に盛り、茶をいれたカップを手にしてテーブルに着いた。


 「ギルバート、これを食べると世界が変わるぞ。」


 旦那様が珍しい事をおっしゃった。

 世界が変わる?

 確かに野菜を生で食するなどしたことがない。

 それに焼いた野菜も、本当に焼いただけの物だ。

 それで世界が変わる?

 茶を一口飲む。

 

 「ん!?」


 冷たい。

 冷たい茶など初めてだ。


 「冷たい茶も美味しいものですな…それに、これはリリカでしょうか?少し酸味があってサッパリします。」

 「ええ、リリカの実を絞りました。ケイさんとリストシアへ行った時に手に入れたの。」

 「さようでございましたか。」

 

 生の野菜は、薄い葉と薄く切ったオニオンが入っていた。そこに茶色い物がまぶされている。揚げたオニオンか…随分サクサクに揚げている…。それにこの白いソース…チーズか?濃厚なうまみがある。これほどうまいソースが世の中にあるのか…。

 確かに世界が変わる味である。

 チーズをソースに入れるなど考えた事もない。

 ギルバートは、メインの肉の薄切りを見た。これほどの薄さに切るなんて考えた事もなかった。肉は火が通りにくい物だが、これほど薄ければ生焼けの心配もない。

 ホーンは臭みが強いから好まないのだが、今日は食べるしかない。

 そう思いながら肉を口にした。


 「ん!?」


 思わず声が出た。

 旦那様がちらっと視線を向けニヤリと笑った。

 うまい!しっかりと肉の味はする。噛みごたえはあるが、嚙み切りやすい。歯に自信が無くなってきたギルバートでも、食べやすかった。それにこの葱の入ったタレがうまい。

 肉の臭みさえうまさに変えているようだ。

 

 「これは素晴らしいですな…このホーン肉独特の臭みが、この葱ソースでうまさを引き立てる香りになっており…」

 

 ギルバートは語れば語るほど、己の表現力のなさに落ち込んでしまう。

 

 「この素晴らしさを表現しきれません。」

 「いえ、お世辞でもうれしいです。」

 「とんでもございません。これほどの料理が、この野外で出来る事に驚いております。」

 「あら、外だから美味しく感じるというのもあるのよ。こういう料理は特に…。ケイさん?」

 「美味しいのでもう少し食べたい。」

 「お取りしてきますよ。」

 「自分で行きますから、食べていてください。」


 フーカ様の提案を断り、旦那様が焼き台へと行ってしまわれた。

 何やらケント殿に注文しているようだ。

 しばらくして戻ってきた旦那様の皿には、肉が山盛りに乗せられていて、ソースを2種類かけてきたようだ。

 フーカ様が立ち上がり、ポットを持って来られた。

 そして、皿に山盛りの生野菜も持ってきた。


 「ケイさん、お肉ばかりはよくないわ。こちらも召し上がってくださいね。」


 ふむ…。貴族は野菜を食べる事は少ないのだが、ヒシ家ではお出しするようにしている。旦那様も野菜を残すこともなさらないのだが、今日はこの肉が美味しいのでよりたくさん召し上がりたい気持ちは理解できる。

 

 「よろしいですか、お肉の見た目でざっくり3倍以上のお野菜を食べなくては食べたお肉の栄養素を消化して吸収するビタミンやミネラルが不足します。お野菜の1/3は色の濃いお野菜が理想ですから、今日は焼いた人参も食べた方がよろしいですよ。」

 「食育ですか?承知していますが、この肉が美味しいです。このソースととても合う。こちらの透明なソースはにんにくですね。こちらも美味しい。」

 

 旦那様が、少年のような勢いで召し上がっていらっしゃる。

 騎士たちも、次々にお代わりを取りに行った。

 野営でこのような温かい食事を食べる事はない。

 匂いに獣たちが寄ってくるので出来るはずがない。今日はフーカ様の守護壁があるおかげでゆっくりと食べられる。

 

 「食べ過ぎて動けなくならんようにな。」

 「団長!もちろんですよ。」

 「それに…不思議ですが、今日はまだ魔術を使えそうです。」

 「ん?」

 「いつもファイヤーアロー5発で魔力切れですが、今日はまだ打てそうです。」

 「ほぉ…。」

 「不思議な感じです。それに後ろを警戒しない分、精神的にも」


 食事をしている間にも、オークが数頭やってきていた。

 

 「そろそろ行くぞ、戦えるか?」

 「行けます!」

 「では、行くぞ!」


 騎士たちが守護壁の中から攻撃していた。

 


 

 天龍の3人は、長机をたたみ車へ戻した。焼き台だけは出したままにした。

 夕食もおそらく焼きながら食べるだろうと思ったのだ。


 「さて、俺らも行くか。」

 「おう!」

 

 ガードの内側から攻撃するというのは、かなり楽だ。

 目の前の敵に集中できる。

 寄ってきた獣たちを粗方倒すと、騎士団はチームごとにガード外の探索を再開した。

 

 

 ガードへ寄って来た獣は、天龍と残った騎士3人、それから様子に応じてギルバートと敬一郎や楓花が手を貸した。


 騎士団は日が暮れる少し前に戻り、状況をマップに書き込んでいた。

 ガード内に焚火は4か所あり程よく周囲を照らしていた。


 車が中央にあり、その片側に騎士団の天幕が張られた。

 20人は5人ずつの4チームに分かれ、2時間半ずつ交代での休憩をとるらしい。

 夜8時から朝6時までの交代制だ。

 

 楓花は夕食に、木の実ウサギ肉を用意した。

 それらを焼く前にホットケーキミックスで種を作り、鉄板にサラダ油を塗ってホットケーキを数十枚焼き、4等分にカットした。

 ホットケーキなら小麦粉だしパンのような物だと思ってのことだ。

 昼間はクラッカーだったので、少しボリュームのある糖質も摂ってもらいたかったからだ。


 それから、木の実ウサギの肉とカボチャやナスなどを焼いてもらう。

 夕食も焼く係はアーサーが主に勤めてくれていた。車の反対側では敬一郎がオークを取り出し、楓花が解体ナイフで解体していた。いくら何でも数が多いためこのままでは敬一郎の容量に不安があるというのだ。それに解体も大変すぎるらしい。

 解体ナイフと仕分けバケツにより、オークだけは処理することは出来た。

 他の獣は仕方がないので、持ち帰り調査後になるだろう。


 「それにしても…この魔石を見てください。」

 「魔石?金色ですね。」

 「はい、金鉱石ですね。」

 「ん?」

 「これからかなりの純度と量の金が取れるでしょう。」

 「そうなの?」

 「ええ、ここの獣は…地球と異なり体内で様々な金属を生み出します。それらの組成は地球の物と変わりません。」

 「それって、この世界では限りあるものではないということですか?」

 「そうなりますね。正しくは、地球では数億年かけて作られた物が、こちらでは獣の体内で合成できるという事になります。だからサイクルが早い。」

 「なるほど…。」

 

 天龍のメンバーと騎士団たちは、夕食を食べながらなかなか楽しそうな声が聞こえていた。

 

 「木の実ウサギの肉をこれほど食べられるとは夢のようだ。それにこのパンは甘くて信じられないほどふわふわだ。」

 「そのパンはフーカ様のお手製です。このウサギ肉の下味もフーカ様の味付けです。」

 「スープがいらないパンなどあるのだな…。」

 

 騎士団であっても、硬いパンを食べているらしい。

 それって、やはり小麦の精製の問題なのか?それとも発酵や何か別の要因があるのかと考えてしまう。

 イーストや酵母と言った物を使っていないのだろうか?

 敬一郎さんは、そういう事には詳しくないのだろうか?

 領地経営は出来ても、料理には興味ない?でも…よくしないと食事は辛くない?


 

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