19
暗くなったことに楓花たちは顔を上げた。
そこには、昨日よりも大きなホワイトジャイアントが立っていた。
大きい、大きすぎる。
それが少し動くと周囲の木々がなぎ倒され、ガード内へと倒れてくる。
「ハナさん、サナとリリーさんを連れて車の2階へ上がって。」
「はい!!」
楓花がハナさんに頼むと、ハナさんが2人を連れて車へ走った。
そこにケントさんも声を上げた。
「ダンとテンも車に戻れ!」
「はい!!」
「楓花さんも車に…」
「私も戦います。あの巨体ではガードがあっても厳しい。」
よく見ると、ガードとほぼ同じ高さだ。
つまり10m近い体長がある。
楓花は、ウエストポーチに手をかけた。
弓と矢を取り出すと、矢をつがえた。
目か口を狙うしかなさそうだ。もしくは眉間を狙えるといいけれど、届くだろうか?
1本射ったが刺さらない。
まっすぐに飛ばさないと無理そうだ。
「高いところから頭を狙います。矢が刺さったらお願いします。」
「わかった。」
楓花は、キャビンに入り3階に上がった。それでおおよそ6mの高さだ。
ここからなら、斜めでも直線に近い。そこから立て続けに矢を3本射る。
1本は外れたが、1本は片目をつぶし、もう1本は浅く刺さった。
ホワイトジャイアントが暴れ、木が倒れてくる。
動きが止まるのを待ち、次の矢を放つ。
もう片方の目に刺さり、それから立て続けに放った矢の1本が深く刺さった。
ホワイトジャイアントが、ふらふらとし始めると、ルーシーさんのアイスジャベリンが頭に刺さっていく。
頭を下げたところでアーサーさんが飛び上がり、ケントさんは大剣で足を払った。
倒れたホワイトジャイアントの首にアーサーさんの剣が刺さったが、致命傷にはなっていない。
楓花は、急いで車から出て向かっていく。
仕留めきれていないホワイトジャイアントが、体を起こそうとした。
そこに到着した楓花が、剣で腕を払い切り落とした。
倒れこんだホワイトジャイアントの首を狙いケントは、もう一度大剣を振り下ろした。
4回目でやっと首が落ちた。
「はぁはぁ…大きすぎる…」
「びっくりした…ごめんなさい。なかなか矢が刺さらずに時間が、かかってしまったわ。」
「いや、倒せたことが奇跡だ。こんな大物…楓花さん、この手と頭をそのまま持ち帰るのは難しいだろうか?」
「このままですか?」
「大物すぎるから、報告をしておいたほうがよさそうだ。」
「報告ってどこに?」
「ギルドを通して、領主様だな。」
「わかりました。それでしたら…解体せずに呼びましょう。ここはヒシフォートの範囲ですか?」
「ああ、そうなる。」
「では、少々お待ちください。」
楓花は車に戻り、ガード範囲を20mに広げた。
それからグリフォンの笛を吹いた。
サクラを待つ間に、敬一郎にLIMOで大物だから騎士団をと連絡を入れる。
敬一郎がこちらにいない可能性もあるから、サクラに第一騎士団への手紙を預けるつもりで手紙も書いた。
数十分後にサクラがやってきた。
「サクラ、来てくれてありがとう。」
サクラを撫でて、お礼に木の実ウサギの肝を与えた。
そうしていると、グリフォン隊第一騎士団も続いて降りてくる。
「これはまた…」
「リハルドさん、急に申し訳ありません。倒すことは出来たのですが、大物過ぎて…どう取り扱うものか教えて欲しいのですが…。」
「これはフーカ様が?」
「まさか、天龍の皆さんです。私では、とても無理です。シールを張るので、中へ入ってください。」
楓花は、騎士団の人たちをガード内へ招いた。
「こんな大物を3人で狩ったのか?」
「いえ、フーカさ…フーカ様と4人です。フーカ様が目を矢で潰し、ルーシーがアイスジャベリンで頭を狙い、俺が足を落とし、フーカ様が腕を落とした。それでアーサーが首を狙い、俺が最後に頭を落とした。」
「とんでもないですね。4人でこれを…。」
「どうしましょうか?」
楓花が問いかけるとリハルドが苦笑いをした。
「これほどの大物でしたら、このまま持ち帰りたいぐらいです。」
「いいですよ。」
「いえ、これほど大物だとグリフォンでも運ぶのは…」
「リハルドさん、私が収納を使えば運べますが…」
「よろしいので?」
「かまいません。」
「では、お願いします。もちろんこれは騎士団で買い取らせていただきます。」
「それは、査定が楽しみですね。血を抜いたほうがいいですか?」
「出来ましたら…」
「では、ちょっと失礼…」
楓花は、ホワイトジャイアントの首に解体ナイフを差し込み、血抜きを命じた。
札を置いたすぐ下へと血が染み込んでいく。
「天龍の皆さん、一度ヒシフォートへ行ってもよろしいでしょうか?そのあとで続きをしましょう。」
「わかった。それで構わない。」
「では、失礼して…」
楓花は、ナイフを回収しホワイトジャイアント本体をバックに入れると、続いて切り落とした足と腕も収納した。サクラを撫でまわしてから帰らせると、天龍の3人には、車へ乗ってもらった。
このままだと木が散乱して危ないので、倒れた木も収納していく。
片付けをしてから、ヒシフォートへ空間移動し、街中をゆっくりと走っていく。
お城の前庭へ到着すると、グリフォン隊のお城へ残っていた部隊が、私たちが到着するのを待っていた。
2階では、天龍の3人が子供たちに倒したことを教えていた。
彼らも興奮したままだったので、その過程の説明ではかなり熱が入っていた。
「フーカ様、ご無事でよろしゅうございました。」
執事長のギルバートさんが駆け寄ってくると、済ました顔で挨拶をしてくれた。
「ギルバートさん、ケイさんはいらっしゃらないの?」
「すぐに参ります。ホワイトジャイアントでしたか、第一騎士団を待たねばなりませんな。」
「いえ、ホワイトジャイアントなら私が持ってきました。出してもよろしいの?」
「は?はい、ではこちらにお願いを…」
楓花は、バックの中からぎゅむっと掴んで取り出した。
どういう仕組みなのか、完全に出ると楓花には、重くてどうにもできなくなるので勢いが大事だ。
ドサリと落ちたホワイトジャイアントは、体の厚みだけでも見上げるほどだった。
「頭と」
楓花が頭をぽいっと取り出した。
「腕と…」
「足…これで全部です!」
楓花が笑顔で振り向くと、ギルバートをはじめとした屋敷の人たちが、立ち尽くしていた。
「なんだ、これは…」
「あまりにも大きいから報告をしたほうが、いいってケントさんが言うから、声をかけさせてもらったの。」
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