17
「フーカぁーーー」
「あら、起きたわね。」
「だね。」
ベッドに残してきたサナの声に、リリーさんが、苦笑いを浮かべた。
真面目にお話しする時間は終わりのようだ。
楓花はサナの元へ行き、抱き上げてソファーへと連れてくる。
ナデナデして、ぷくぷくの頬を両手で挟んでその可愛らしさを堪能する。
さて、どうしようか。
お腹がいっぱいで、おやつタイムはいらないだろう。
ポーションでも作ろうかな?
サナの頬から手を離した。
「では、摘んだ草を洗ってくれる?」
「はい、やります。」
「あい!おてつだい!」
「じゃあ、顔を洗って外へ行きましょう。」
楓花たちが外に出て、露草を洗っているとケントとルーシーが降りてきた。
「おはよ…熟睡してしまった。」
「私もですよ。お昼ですけどね。」
楓花とリリーたちが、頷いて笑うとケントたちは肩をすくめた。
ケントさんは首を回し、肩を動かした。
「木の実ウサギ狩りをしてくる。」
「はい、お願いします。おひとり?」
「わたしも行ってくるわ。」
「それがいいですね。ルーシーさんお願いします。」
「リリーさん、これをこうやって潰してもらえますか?」
「うん!」
リリーさんに露草を潰してもらう。
そうしている間に、ハナさんたち3人が降りてきたのでオークの爪を砕いてもらう。
しばらくして、アーサーさんが降りてきた。
「アーサーさん、無理していませんか?」
「え?いや…大丈夫ですよ。」
「そう?それならいいけれど…。」
そう言いつつも、アーサーが辛そうに見えた。
う~ん…よくなさそう。
もしかして、以前の傷で身体に細菌が残っていたりするのだろうか?
エリクサーを飲んでもらったけれど…でも、量が少なかったかもしれない。
楓花は、高級ポーションをコップに移した。そこにオレンジジュースも入れる。
「アーサーさん、これをどうぞ。」
「みんなもどうぞ」
楓花は、アーサーにポーション入りを飲ませると、みんなには水で割ったものを出した。以前そのままのリンゴジュースで、果汁そのままと言われてしまったのだ。
「おいしー!」
うん、サナは喜んでいるようでよかった。
それを見て、他の人たちも飲み始めた。
アーサーさんも、飲んでいるようなので様子をみようかな。
「液体なら飲めますね。固形の物は入りそうもないけど。」
「そうですね、たまにはこういう日もいいです。」
今日は、洗浄済みの1L瓶を用意してきた。
初級ポーションを作り瓶に入れていく。1L瓶は、斜め掛けバックに入れて保管することにした。ポーション作りに飽きると、露草摘みをする。
その日は、あまりにも食べ過ぎてしまっていて、夕食は食べずホットミルクを飲んでお腹を労わる事にした。
翌朝、お雑炊を作った。
「おいしー」
「うん、うまい。」
「この粒粒した物が甘くて美味しいですね。」
「それに入っている具の種類が多い。」
「お野菜をいろいろと入れてみました。今日、露草を摘み終えたら移動しましょう。」
「そうだな。それなら、もう少し頑張ろう!」
仕分けバケツの入る量が多い。それ以上にこのバケツの便利なところは、露草と札を付けているので、それ以外の草は弾かれていた。
何度か籠の中身をあけているのを確認しているとそれが気になり、一度入れた露草の鑑定をするとどうやらゴミも取れているようだ。
あれ?これって洗う必要もないのかも…。
「ケントさん、宵草の花、緋の花のめしべ、清草って手に入りますか?」
「宵草の花と非の花のめしべか…手に入らない事もないが、子供たちを連れてはいけないな。清草なら手に入るが浅い川床で育つ子供はどうだろう。」
「川床って川の中って言うこと?」
「そうだ。」
「子供たちは危ないわね。」
「そうだな…俺たちが、採取しておこうか?」
「う~ん…見つけたらお願いします。でも…できれば同行したいです。」
「そうだな。フーカさんの場合は、生の材料のまま保存できるから質のいいポーションになるからな。だが、そんなに集めてどうする?」
「実は…各地に治療院を作って薬で治せたらいいなと思って…」
「各地に?」
「ええ、ケイさんが薬の量によっては、治療院で治せる体制にしようって言ってくれているの。それが出来たら苦しむ人が減るかなと思って…。」
「それは…ありがたい話だな。アートンでは、フーカさんの薬で傷が治った人たちが、仕事に復帰して賑わっている。秋の収穫に間に合ったから人手があってよかった。今年は豊作らしいから、人手があって助かったし、なにより動けるようになったから表情も明るい。」
「そうなの?それならよかった。痛いのは辛いもの…。」
2日かけて露草を集め、大量の木の実ウサギの肉と素材を手に入れた楓花たちは、さらに車を走らせて山を登っていく。
山の中腹まで来ると、かなり寒くなっていた。
「風が強いからか寒いな…」
「ええ、秋でもここまで冷えるのね…。」
楓花は、ウィンドブレーカーを人数分取り出した。
サイズも各種揃えてあるので、多分着られるはず。
「これはお貸しします。山を下りたら返してもらいますよ。」
「いいの?」
「ええ、これは風を防ぐだけなので暖かさはありませんが、少しはいいと思うので…。」
「ありがとう。」
「甘えさせてもらう。」
蛍光色のウィンドブレーカーは、ゴールデンウイークが終わった頃に投げ売りをしていた物だ。買っておいてよかった。獣からは襲われそうだけれど、ガード内にいるなら問題はない。
「これは、すごいな…薄いのに風が入ってこない。」
「そうですね。それがこの服の利点ですが、色が派手なのが難点ですね。」
「それはまぁ…だが、外に出てしまったときには裏返せばいいだろう。裏は黒っぽい。」
「それはそうですが、着にくいかも…」
「まぁ、そうだろうけれど、襲われるよりはいいからな。」
「それはそうですね。」
ガードは10mにしてある。
こちらでも、目印の杭を打っていく。
ハナたちも含めた子供たちには、「杭の外に出てはいけない」と言い聞かせた。
ここでも露草の採取をする。
地面が斜めなので、ポーション作りには向かない。
「あっ…あっ…」
リリーさんがペタリと座り込み、指差ししていた。
異常な様子に、楓花がその先へ視線を向けると、巨大な白い毛むくじゃらの獣がガードを叩いている。
ケントさんとアーサーさんが、走って向かっていた。
ルーシーさんが杖を構えているから、何か魔法を発動するようだ。
ルーシーさんの魔法、初めて見る。楓花はサナを抱っこしてリリーさんの隣に座った。ハナたち3人も近くに集まってきた。
ルーシーさんの魔法なのだろう。
ルーシーさんの頭上に氷の塊が出来てくる。先端の尖った長い三角形になると、勢いよく白い獣へ向かっていった。
それが突き刺さるタイミングで、ケントさんの大剣が獣の足元を薙ぎ払い、アーサーさんが岩を足場に飛び上がり剣で首を狙った。
白い獣の腕が、アーサーさんに向かったがうまく躱し、後ろの首元へと剣が刺さった。
白い獣の腕が動いたが、背後で剣を刺しているアーサーさんには届かない。
楓花たちは息を飲んで見守っていた。
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