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他人に口をつけたものを勧めるのは、マナー違反なのだろう。
ライラさんとカリシア会頭は、普段はお互いの物をシェアしているのだろうと思うと微笑ましい。
「ふふっ…仲がよろしいですね。どうぞ味見なさって…」
会頭は照れながら、ライラのカップを受け取り口を付ける。
お兄ちゃんは中学生くらい、お父さんの会頭も奥様も40手前に見える。
結婚は早くにするのかもしれない。
昔の日本みたいに、25歳を過ぎたらクリスマスケーキと言われてしまうのだろうか?
ライラさんの砂糖入りのお茶をカリシア会頭が飲んだ。
「ああ…これはうまい。これほど上質な砂糖は、なかなかお目にかかれませんな。」
「お土産を開けてください。この間、ララさんが喜んでいたので少しですが、入れてあります。」
「おぉ、なんと…こんなにたくさん。」
「あとは、袋の口が青いのがオーク肉の干し肉、赤いのが同じくオーク肉の干し肉ですが、こちらはお湯をかけるとすぐにお肉に戻ります。食感は多少失われています。あと星形を書いてある袋はブラックベアーで作ったもので同様になります。」
「オークにブラックベアーですか!?先日頂いた干し肉も大変美味しいものでした。」
「ありがとうございます。美味しいと思って貰えたならうれしいですね。こちらも沢山ありましたので。あとこちらの黄色い口のものは、ウサギ肉の燻製です。こちらもララさんが気に入ってくれているので、どうぞ。」
「貴重なものをありがとうございます。これほど沢山作るのは大変では?」
「ララさんにも、お手伝いしていただきました。それと…頭を洗うシャンプーと固形石鹸を入れてきました。」
「石鹸とは、これまた貴重なものをありがとうございます。」
「いえ、こちらは…その頂きもので使い切れないので…。シャンプーは大きめにしました。ララさん、もうなくなったでしょう。」
「うん…」
「今回は、ご家族で使える大きさにしたわ。」
「いろいろとお気遣いいただきありがとうございます。」
「いえ、ララさんに使って欲しいので、使ってもらえると嬉しいです。」
サナがリリーさんを突き始めた。
大人が話しているので、暇なようだ。
「フーカ様、子供たちを遊ばせてもよろしいですか?」
「え、もちろんです。座っているのも退屈よね。遊んでいらっしゃい。」
「うん!フーカあれだして、ひっくりかえすの!」
「オセロ?いいけれど、食べないようにね。」
「たべないもん」
楓花は、バックからオセロを取り出した。
一般的な大きさのものではなく、折り畳みの台の中に駒が入っている軽量型だ。
子供たちは、絨毯の敷かれたところに座り込んで遊び始めた。
「フーカ様、あれはどういったものですか?」
「あちらはオセロです。白と黒の2色が1つの駒についていて、自分の駒で挟んだ駒を自分の色に染めていきます。」
「ほう…」
「上手に攻めると、最後の一手で塗り替えることもあるゲームなので面白いですよ。」
「ほぉぉ…そのようなゲームがあるのですか。」
「僕も見に行っていいですか?」
「もちろん、どうぞ。」
子供たちが遊んでいるので、会頭とライラと3人になった。
「フーカ様、あの子たちは一緒に誘拐された子ですか?」
「そうです。今はケイさんのお屋敷で過ごしてもらっていて、私が仕事の合間にこうやって会いにくる形ですね。」
「そうでしたか、あのお洋服はどちらで?」
「あれは私が適当に買い求めたものです。一応、私とリンクコーデにしてみました。」
「そうでしたか、お似合いです。」
「あら…ありがとう。」
楓花は、お茶を飲んでカリシア会頭を見た。
「ララさんのお父様にお願いがありまして、ララさんも一緒に過ごせないかと思いまして。今回は急ですので、お誘いしませんが、3か月後…もしかしたら4か月先になるかもしれませんが、3週間ほどゆっくり時間が取れそうなの。その時に一緒にいたら楽しいと思いまして…ララさんをお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「まぁ!」
「なんと…それは構いませんが、ご迷惑では?」
「いえ、たぶんリリーさんやサナも楽しいと思うので…。」
「あの…その…先日、ララが誘拐されて、とても心配でしたので、その時には私も同行してよろしいでしょうか?」
「ライラさんが?」
「はい…」
「あの…こう言ってはなんですが、身の回りのお世話はご自分ですることになりますが、大丈夫ですか?」
「それは、出来るようにします。」
「そうですか?それでしたら問題はありませんので、ご一緒にお越しください。服装ですが、ドレスだと動きにくいですから、私のようなパンツスタイルもご用意ください。」
「はぁ…わかりました。あなた、いいですね?」
「ああ、もちろんだ。」
カリシア会頭はそう言うと、もじもじとしつつ籠にかけていたタオルを出した。
失敗した。籠にタオルだなんて恰好の悪いことをしてしまった。つい、ご近所へもっていくようなことをしてしまったと焦る。
どう取り繕おうか…。
「フーカ様、こちらの布は先ほど、サヤさんの口を拭いた物とおなじですか?」
「ああ、はい。こちらは持ち歩きやすいように小さく作られていますが、そちらは顔を拭く時に使うサイズでして…その未使用なのでご安心ください。」
言ってから全然安心できないセリフだと思った。
ああ、なんて言えばいいのだろう。
私のばか…。
「そうなのですか?このようにふわふわとした布は初めて見ました。糸を長く出しながら織っているようですが…」
「そうですね、糸を出してあるので…水を吸収しやすいです。お風呂上りに体を拭くにもいいですよ。」
「ほぉ…それはすばらしい。こちらも頂いてよろしいのでしょうか?」
「もちろん、どうぞ。」
楓花は喜んでいるようなので、そのままにすることにした。
薄黄色のタオルはノベルティでもらったもので、信用金庫と書かれているけれどきっと柄に見えるだろう。
うん、そうだ。そうに違いない。
楓花は、強引に自分を納得させた。
「では、その頃に来ますので…その前にまた少し遊びに来てもよろしいですか?」
「ええ、それはもちろんです。」
「リリーさん、サナもう帰りますよ。ララさん、また遊びに来ますね。」
「うん、わかった。また来てね。絶対だよ。」
「ええ、もちろん。冬になったら少し長めにお出かけしましょうね。」
楓花は、リリーとサナを車に乗せると、運転席に戻った。
町を出るとすぐにアートンへとワープした。
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