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カリシア商会は、さすがに国内有数の商会だけあって街の中心地に大きな店を構えていた。車を店の前に止めると、店の中からたくさんの人が出てきた。
「失礼します。こちらはヒシ家のフーカ様の乗っている魔導車でよろしいでしょうか?」
立派な華やかなスーツを着た男性、が運転席側にやってきた。
「はい、私が楓花です。貴方は?」
「これは、ご本人様に失礼いたしました。私は、カリシア商会ロラーナ本店店長を勤めているハルキと申します。」
「そうですか、よろしくお願いします。あの…ララさんのお住まいを教えてもらえませんか?」
「はい、かしこまりました。会頭からもご案内するよう言われております。当商会の馬車で、先導させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね。」
店にはマークが大きく掲げられている。間もなく、同じマークの馬車が出てきた。御者と挨拶をして、ついていく。
街から少し離れ、背の高い柵に囲まれたエリアへ入る。
入口の門には警備が立っていて、御者が説明してくれたのだろう。少し通待たされた。
整備された道路と大きな屋敷が立ち並び、高級住宅街だとわかる。
再び馬車が進み始めた。道を進み林のようなものが見えてきた。木々が切れたところに門があった。
そこで馬車が止まり、入っていく。
門番たちが背筋を伸ばして迎えてくれる中、彼らの前を通り過ぎた。
広い芝生のスペースを横目に進み、大きな屋敷の前に止まった。
3階建ての建物は、大金持ちらしい豪華な佇まいだった。
家の前には使用人らしき人たちが並び、カリシア会頭と女性、ララさんと少し年長らしい少年が立っていた。
楓花は車を降りる。
「フーカさん!」
「ララさん、お元気そうね。よかったわ。」
ララさんが手を伸ばしてきたので、楓花はそれを受け入れるように抱きしめた。
「本当に来てくれた~」
「もちろんよ。お約束したでしょう。」
楓花は、ララさんの頭を撫でてから、カリシア会頭たちへ顔を向けた。
「フーカ様、ようこそお越しくださいました。これは妻のライラと息子のキートンです。」
「楓花です。初めまして。」
「フーカ様、娘を助けてくださりありがとうございます。」
「いえ、こちらもケガをさせてしまって、申し訳なく思っています。」
「とんでもございません。フーカ様の魔導車は大丈夫でしたか?」
「ええ、そこは問題ありませんでした。あの、子供たちがいるので降ろしてもよろしいでしょうか?」
「はい、それはもちろん。」
楓花は車へ戻り、子供たちに声をかけた。
リリーが、用意していた籠を持って車を降りると、サナは手を伸ばしてきた。抱っこの要求に楓花は笑顔で応える。
「ララ!」
「リリー、それにサナも!」
子供たちが、再会を喜んでいる。
「フーカ様、中でお茶でもいかがですか?」
ララの母であるライラが、お茶に誘ってくれたので、お邪魔することにした。
この世界で、お宅へ上がるのは初めてかもしれない。ケイさんのところはお宅というよりもお屋敷で別物だ。
靴のまま、家の中へ入る。
石が敷かれている玄関ホールを通り、廊下を渡り豪華な応接室へと通された。
「あの…礼儀に疎くて申し訳ないのですが、こちらお土産です。」
「お土産?」
「お邪魔する時のプレゼントのようなものです。」
「まぁ!いただいてもよろしいので?」
ララさんのお母さんが笑顔で受け取ってくれる。
「ライラ…」
「あら、失礼しました。」
それをカリシア会頭が窘めていた。ララさんは、お母さん似の正確なのだろう。
ライラは澄まして、自分の座った椅子の横に置いた籠をちらちらとみていた。
長椅子に楓花、サヤ、リリーが座っていた。
向かいの一人掛けにカリシア会頭が座り、その隣の一人掛けにライラが座っている。カリシア会頭と楓花の間のお誕生席に椅子が運ばれてきて、ララさんが座った。
ララさんは落ち着かない様子なので、上座なのだろう。ライラの隣にも椅子が運ばれ、キートンが座った。
「ライラ様、中をご覧になってください。使い方のご説明もします。」
「まぁ!よろしいの?あなた、開けてもいいわよね?」
「フーカ様がおっしゃっているのだ、いいだろう。」
プレゼントを開けるにも、家長の許しが必要なのね。
家長制度の消えた日本では、あまり見ない光景だけれど、こう言ったことはひとつずつ経験して覚えていくしかないだろう。
「失礼します。」
目の前にお茶が運ばれてきた。
紅茶ほど赤くはない黒っぽさはウーロン茶に近い。
楓花は飲むタイミングがわからないので、そのまま待った。
リリーとサナが、ちらちらと楓花を見てくるけれど、楓花はにこやかに待つ。
カリシア会頭がお茶を飲み、カップを置くのを待っていると、勧めてくれたので楓花もお茶を飲んだ。
うん、ウバ茶かな?
独特の風味に少し驚きつつ飲んだ。
これリリーやサナは飲めるのかな?と少し不安になりつつカップを置いた。
それから、待っていた人たちが飲み始めた。
サヤは、一口含んでそのまま口からだばーっと出した。
楓花は、すかさずタオルハンカチを取り出して、サヤの口に当てた。
服にもかかっているが仕方がない。出来るだけ拭き取った。このまま乾けばいいだろう。
「あっ…服ぅ…」
「大丈夫、乾けばわからなくなるわ。」
「会頭、ライラさん失礼しました。サナには、まだ早かったようです。少し手を加えてもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ…」
楓花は、砂糖をバックから取り出した。
花柄の押し型付きの角砂糖だ。紙に包まれているので包みを開けた。
「サナ、これ見て。」
「お花!」
「そうよ。ほら、お花さんを入れましょうね。甘~くなるわよ。」
楓花が砂糖を入れるのを見て、メイドがスプーンを差し出した。
「ありがとう。」と礼を言って受け取ると、かき混ぜる。
「今度は飲めるかしら?」
サナが、一口飲んで二パッと笑う。
それを見て、楓花は笑うとリリーさんを見た。
リリーさんも手を出してきたので、角砂糖の包みを1個渡す。
するとララさんも手を出してきたので、角砂糖の包みを渡した。
顔を上げるとライラと目が合った。
「ライラさんも入れてみます?」
楓花は、ライラさんにも角砂糖の包みをひとつ渡した。
「まぁ!なんて美しいの。」
「押し型に入れて作ってありますね。かわいらしいので、子供受けはいいですよ。」
「まぁ、子供だけではありませんわ。私もこういうものは好きです。お茶に入れて溶かしてしまうのはもったいないくらい…」
「でも、使うためのものですから。」
「そうですね。」
ライラがお茶へ入れると、砂糖が崩れていく。
カリシア会頭もそれを横から見ていた。
「なんて儚いのかしら。」
「んっ!まぁ、これは美味しいわ。あなたも飲んでみて…あっ…」
人に口をつけたものを勧めるのは、マナー違反なのだろう。
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