つかの間の平和へ
5000人余りの亜人種の移民団は、3週間ほどの長旅の末マルボークに到着した。
「無事に帰ってこれたね。ユウキ」
馬上のエイムが悠希に話しかける。ユウキは自分の馬にファムファテルとセッカを乗せ、その手綱を引いていた。
「戦果もあげて全員無事に帰還・・・。上々のフラグ回避だな」
それを聞いたセッカが聞く。
「フラグ?なにかあったの?」
「実は俺、エイムと結婚する」
「はあ?」
「ほう、それはめでたいの!」
ファムファテルは驚きながらも祝福した、がセッカは爆笑した。
「あはははははははは!そうかぁ!そりゃ内緒にするわねえ!」
「だろ?」
「セッカは何がそんなにおかしいのじゃ?」
ファムファテルはなにがなんだか分からない。
「元の世界の物語ではですね、大事な戦いの前に『この戦いが終わったら結婚するんだ』っていうと必ず戦死するんです」
「ほう」
「だから、あのとき戦いが終わっていたのに内緒って言ったのね」
「城に帰るまでが戦いだからね」
「その油断のないところ、いいんじゃない?エイムさん、おめでとうございます」
「ありがとうございます!」
亜人種たちは騎士団長の布告によって転移者としてマルボークに受け入れられた。亜人種たちの住まいは緊急で宮殿や官庁まわりの敷地にテントが設営されたが、順次彼らの住居が建設される運びとなる。それぞれの種族は体力や技術に応じた職業に就けられることにもなった。
護衛部隊の論功行賞は帰還後の1週間後に行われた。
第1功は偽装退却を指揮したフォルクスで、第2功は敵将を討ち取ったエイムになった。
フォルクスとエイムは騎士団長から勲章が授けられ、フォルクスは2等将官へ、エイムは准士官まで一気に昇格となった。昇格は名目上のことで、配属は変えられなかったのだが。
亜人種の受け入れ対応が一段落したころ、改めて魔族の侵攻に対する軍議が開かれる。軍議にはファムファテルと、迷宮内の”魔界からの転移”が行われる空間を調査し続けていたエルフ族のサイファーが参加した。
実際にその空間を見てきたファムファテルが言う。
「現状だと魔族が一度にこちらに送れる人数は500程と見ていたが、先の戦いはそれを裏付けたな。あの程度なら何度来ても撃退は出来よう」
それを受けて騎士団長のレオンが問う。
「なら、それを全滅させたことを踏まえても当面は侵攻作戦は無いと思えますか?」
「そうじゃな。魔法戦を仕掛けてくる者が居なかったとはいえ、数が足らん事はあちらも理解したじゃろ」
「一応エルフの隠密魔法の術者集団で迷宮の入口を監視する体制づくりを進めるとして、サイファー君が転移空間の拡大の次の段階がいつ来るのかという予測をしているのかを聞いてみたい」
サイファーはその空間の状態を定期的に観測していた。その上で率直な感想を言う。
「正確には分からないが、今の状態になったのは数か月前だった。次の段階に進むのは数年は先だろう」
「ならばどの程度、空間の拡大が進むと思う?」
「これも大雑把な予測しか出来ないが、10倍以上にはなるだろう」
「最低でも5000の軍勢になる、か。ユウキよ」
「はい」
「この城砦を、さらに堅固にするアイデアはあるか?」
「そうですね・・・城門の先の土地を舌状に造成して出城を作るのはどうでしょう。造成した部分を空堀をはさんで島のようにして、出城からでないと城門に到達出来ないようにします」
「なるほど。造成は大規模な工事になるが、人手は増えたからな」
「それと」
ファムファテルが口をはさむ。
「先の戦いでこちらの手の内を一つ晒してしまった。対策を取ってくると見た方がよかろう」
「銃の事ですか?」
「いかにも」
「銃の弱点は見破れますか?」
「わからんが、その対応は考えていた方がよかろう」
「そうですね・・・考えておきましょう」
機は熟した。
亜人種の里からマルボークへ移住した者のうち、セッカとその周辺の者の生活が軌道に乗ったころ、ユウキとエイムの結婚式がとり行われた。
サルカンドの世界では、結婚式は人前式で行われる。宗教的な要素はない。
招待客全員が新郎新婦の祝福をし、その婚姻の証人となる。その代表はファムファテルが務めた。
礼服姿のユウキと、真っ白なドレスを着たエイムの前にファムファテルが立ち、二人に問いかける。
「ユウキ・タチアオイ並びにエイム・ランバート、おぬしら二人はこれからの時間を共に過ごし、苦楽を共有し、その生涯を共にすることを誓うか?」
「誓います」「誓います」
「よし、ではその証しを証人全員の前でみせよ!」
ユウキとエイムは向かい合う。そしてユウキはエイムの顔に掛かるベールをそっとまくり上げ、エイムの唇にキスをした。
会場ではスタンディングオベーションが起きていた。
湧き上がる拍手の中、セッカは涙が止まらなかった。
「おめでとう!おめでとう!」
セッカは何も分からないまま異世界に放り出され、そこで幸せを掴んだ幼なじみを心から祝福した。
セッカの隣にはナッシュがいた。
ナッシュは、泣きじゃくるセッカの頭をそっと撫でた。
「うわぁぁぁん!」
セッカはこらえ切れなくなって、ナッシュの胸に飛び込んで号泣した。
魔族との戦いは必ずまた起こる。
そのための準備を進める日常が始まっていた。
「異世界のガンガールは引き金をっ引かない」第2章はここで終了になります。
続きは用意してあるのですが、一旦連載終了ということにして反響がそれなりにあり、読者様が続きを見たいということであれば投稿を再開したいと思います。
これまでのご愛読ありがとうございました。




