魔界の転移者
魔界の城、謁見の間には3名の魔将たちが集まっていた。
独断で軍を動かしていたヘルパトミナを追っていた火魔将アーカムが、他の魔将にその顛末を報告するする為である。
「・・・という流れでヘルパトミナの軍は包囲殲滅にあった。ヘルも討ち死にだ」
「いたましいな」「まったくだ」
「策によって包囲されたのは敗北に至る要因にはなったが、それが全滅にまでなったのは奴らの兵器だ。鉄の筒から火球を飛ばす魔道具のようだ。同胞はそれで穴だらけにされたようだ」
「なんだ?そんな強力なのか?」
「迷宮に現れる冒険者にまれにそんな武器を持つものがいたようだが、そこまで驚異的な武器ではなかったはずだ」
「かなり近寄らないと当たらないシロモノだったな。軍のものは精度がまるで違うということなのか?」
「冒険者風情が手に出来るものは三級品、というのはあるかもしれん」
「鉄砲だな、それは」
玉座にた少年が発言した。
「知っているのか?ヒコ」
「ああ、知っている」
ヒコと呼ばれた少年は転移者だった。ヒコが魔界に転移してきたのは10年前、土魔将リタヴィスの目の前だった。子供のいなかった彼女は、目の前に突然現れた無垢な少年を養子にした。
”ヒコ”という呼び名は、彼が魔界で言葉を覚えていく過程で定着した。本名は橘直彦だったが、彼はもうその名前を捨てている。元の世界で孤児だったヒコはリタヴィスの愛情を一身に受けて成長していく。ヒコは魔族の一員となって育った。
そんな折、リタヴィスは逝去する。ヒコは名目上”土魔将”の地位を相続するが、魔族としての力を持たない彼はその権勢を追い落とされる危機に陥る。
そんな危機をヒコは、機転と交渉力と弁舌で乗り切った。その結果、直属の軍は持たないものの奉戴される立場としての魔王の地位を得た。今では魔将たちとは友人の間柄である。
ヒコが魔界に転移してきたのは小学低学年のころだったので、元の世界での知識は乏しい。だが銃が火薬に点火して発砲する仕組みなのは知っていた。発砲時に大きな音が鳴っていたのも報告にあることを照らし合わせれば、その予想に至るのは必然だっただろう。
「その火砲を封じる手ならあるぞ」
「本当か?」
「ああ、撃った時にデカい音が鳴ったのなら魔法だろうがそうでなかろうが火薬を使っている。なら、その部隊のいる場所に火を封じる結界を張ったらどうなる?」
「アンチファイアか!」
「それだ」
「アンチファイアは効果範囲が狭い。広範囲に使用できるようには研究が必要だな」
「大規模に軍を動かせるまでには相当時間がかかる、研究はじっくり進めても問題ない」
玉座に足を組んでゆったり掛けたままのヒコは、不敵に笑った。
一方、異民族の移民団はマルボークに到着していた、
ヒコの姓は橘、セッカは酢漿草、まだ本文には出ていませんがユウキは立葵です。元ネタに気が付いた読者はいるでしょうか?気が付いた人は相当な歴史オタです。
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