イストヒリーの戦い(3)
ヘルパトミナは自軍が崩壊するのを防げないでいた。戦意を鼓舞するように声をあげても効果は無かった。いつの間にか追いかけていた150の騎兵も左右の丘を回り込み、背後を塞いで退路も断たれていた。
「まさかここまで追い詰められるとはねえ」
500ほどの小勢で異界の侵略行為を行うのはいかにも無謀だったとは言えるが、元々は城塞から派遣された精鋭と戦うことなど想定していない。結界の中にいた民の中で戦えそうな者の武装からおおよその戦力を予想していたので、銃のような魔族には未知の武器を使う部隊が出てくることは想定外だ。
今後の戦いを考えれば、ヘルパトミナは敵の情報を魔族に持ち帰ればならない。だが、ヘルパトミナはその判断ができる心理状態ではなかった。
「独断で軍を動かしておいてこの不始末、やつらに合わす顔が無いとしか言いようがないね」
ヘルパトミナにはこの場を生き残ることの意味より、失態に対する責任の重さがのしかかっていた。
「こうなったらせめて、この敵の将の首だけでも持ち帰らねば・・・」
正面の銃部隊の後ろに控える将官の制服の男に、ヘルパトミナは目を付けた。その男はユウキだった。
ドラゴンから降り、味方の屍を超え、槍騎士の包囲を力任せに突破し、正面の丘を駆け上がる。
速い。包囲を突破された時点で銃部隊は味方への誤射を恐れてヘルパトミナへの射撃はためらわれた。何名かが真横からの射線を取るために丘を下ったが、対向して突進してくる相手を真横から狙撃するのは相当に難しい。銃弾はことごとく外れた。
ここで素早い動きを見せたのがエイムだった。
素早く馬を降り、ヘルパトミナの正面に回ると確実に命中させられる距離まで引き付けてライフルを放つ。
パァァァン!
乾いた銃声が鳴り、放たれた弾丸はヘルパトミナの鎧の大きく開いた胸元を捕らえ、ヘルパトミナの動きを止めた。それでも前へ進もうとするヘルパトミナに対し、エイムはライフルを捨てて腰のオートマチックを抜く。
パン!パン!パン!パン!パン!
5発の弾丸はすべて頭に命中した。ヘルパトミナは絶命して崩れ落ちた。
十数分後にはこの場にいたすべての敵が掃討された。護衛部隊は十数名の負傷者が出たものの全員が無事だった。
フォルクスは、
「巨人族200がゆっくりとここに向かってるはずだ。そいつらもかたずけておこう」
と、ヘルパトミナの首を槍で掲げさせ負傷者を除いた400余名の槍騎士でその掃討に向かった。
自軍の将を打ち取られた事は、切り取られた首を見せてやれば言葉が通じなくてもそれで伝わる。動揺し戦意を失った上に統率を取れるものがいない巨人族を全滅させるのは、フォルクスには造作もない事だった。
モチベーションの向上につながりますので、いいね、感想、ブックマーク等で支援お願いします!




