イストヒリーの戦い(2)
イストヒリーの丘陵地帯、3つ連なる高低差30メートル程の丘の手前のくぼ地を目指してフォルクスは敗走していた。丘の向こうには味方の騎兵300が3方に分かれて伏せている。銃騎兵50はそのうちの正面の丘だ。
フォルクスを追いかけるコモドドラゴンの騎兵は馬よりも持久力はあるがスピードでは劣る。フォルクスの逃走は見た目より余裕があった。副長に先頭での指揮を任せ、フォルクス自身はしんがりにはべり、敵の攻撃をのらりくらりといなしていた。
「あのニヤけた顔をさっさち捕まえろ!」
ヘルパトミナは明らかにイライラしていた。無理もない。結界を壊したのも無駄骨、何かあると踏んでそこから逃げた民を追いかけてみれば、数に劣る護衛に翻弄されている。
足の遅い巨人族は切り離されてしまったが、それでも300対150。捕まえてしまえば殲滅できる。そう思って追撃を続けるも、追いつけそうで追いつけない。イラつくのも無理はなかった。
そうしているうちに、ヘルパトミナの軍勢は3方を丘に囲まれているくぼ地に誘い込まれていることに気が付いた。しかしそれも(なにか嫌な予感がする)程度で、死地に取り込まれてしまったとはこの時点では思いようもなかった。
逃げるフォルクスは、隊を二つに分けそれぞれが丘の谷間を縫って行く。それを合図にしたかのように、正面の丘から150、左右の丘から100の騎兵が突如現れた。ヘルパトミナの軍は待ち伏せされていたのだ。
護衛部隊のうち、魔法銃の部隊50は中央の丘を越えて魔族軍と対面した。隊長のデニムは敵を射程圏に捕らえたことを見据えると「放て!」と掛け声をかける。距離はおよそ300メートルである。
銃部隊の銃弾が一斉に魔族軍を襲う。だがそれは単なる鉛の玉では収まらなかった。銃部隊に付いていたファムファテルが隊長の掛け声と同時に魔法を放っていた。
その魔法は自陣と敵陣の中間に広い半透明のカーテンを作る。そのカーテンを通過した銃弾は、その温度を鉛の融点近くの300度を超える高さに上げた。
ライフリングで貫通力を上げた弾丸は屈強な魔族の肉体をも深くえぐる。そして高温の弾丸はその肉体を内から焼いた。急所を外した弾丸も一発で魔族の動きを止めた。
正面からの銃撃に浮足出つ魔族軍に、さらに左右の丘から槍騎士の部隊が突撃がかかる。正面の槍騎士も銃部隊の両翼をすり抜けて丘を下り、魔族軍に突撃して行った。
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