イストヒリーの戦い(1)
「あのっ」
フォルクスが先鋒の隊を率いることが決まると、思い切ったようにエイムが声を上げた。
「私も、フォルクスさんの隊に加えて頂けないでしょうか」
「エイム・・・それは駄目」
「私は馬で駆けながら後ろ向きでも撃てます。私が後列で味方の援護を・・・」
「エイム、フォルクスさんは負けながら逃げてくるんだ」
「えっ」
「追いかけるのに夢中になって、足の遅い隊を置いてきてるのに気が付かない、くらいにね」
「あ・・・」
「先頭が次々に狙撃されてたら、冷静になって追撃をやめてしまう。それじゃ駄目なんだ」
「・・・わかりました」
「エイムよ、わしと一緒に待ち伏せの隊に加わろう」
「はい」
亜人種の移民団を追いかける魔族軍を率いるヘルパトミナは、放っていた斥候からの報告でマルボークからの部隊が移民団を先に行かせて待ち構えているところまでは把握していた。
ヘルパトミナとしては、数が互角なら個の力の差で魔族軍が有利だと思っている。真っすぐぶつかれば押しつぶせるはずだ、と。
魔族軍は、翼の無い四足歩行のコモドドラゴン(生物的にはドラゴンではないのだが)を馬のように使役している。これに魔人種や鬼、リザードなどが騎乗したものがおよそ300,残りの200が徒歩の一つ目の巨人種であった。戦闘ではまず巨人種を正面からぶつけて、支えきれずに敵が逃げ出したらドラゴン隊で追撃をかけるのが常道だった。
「おや、向こうからお出ましになったようだね。だけど・・・」
ヘルパトミナは敵側の数が報告より少ないことにすぐに気が付いた。が
「けど、それならそれで押し潰すだけだね!」
と、巨人族を前に出し応戦の構えを取った。
護衛部隊の精鋭150を率いるフォルクスは敵陣を前に隊に指示を飛ばす。
「隊を2つに分けるぞ!左右に広がってそれぞれ敵の両翼をかすめたのちにUターン!演習通りに決めて見せろ!」
将官のフォルクスは騎兵の機動演習の内容を作っている。実戦は初体験だったが、騎兵隊を自在に動かせる自信はあった。
左右に分かれた騎兵は一つ目の巨人族の群れの両翼を足元を薙ぎ払いながら駆け抜ける。そしてそれぞれがターンを決めると、今度は時間差で敵の先頭を斬り抜けた。
「ちっ!」
ヘルパトミナは思わず舌打ちした。一つ目の巨人では人間の騎馬を利用した機動戦に全く対応出来ない。人間側から見れば当然なのだが、騎馬の状態で足を止めて腕力に勝る相手と正面から戦う必要はないのだ。
「ドラゴンを前に出せ!」
ヘルパトミナは巨人族の脇からドラゴンの騎馬隊を前に出す。揺動戦はここからが本番だった。
マルボーク騎士団は、魔族との戦いに備えて準備を重ねていました。今回のような小規模の軍勢での機動戦も、相当数のシミュレーションをこなしてきたのでしょう。
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