開戦は近し
「おい!どうなんてんの?マジもんでもぬけの殻だったって言ってんの?」
「残念ながら、そのようです」
ヘルパトミナは動揺した。結界で厳重に守られた亜人種の里には守られるべきものは何もなかった。精兵もいなかった。
仲間の迷惑をも省みず、単独で功を焦った行動はなにも成果が得られなかった。
「くそっ!騙されたね!結界を厚くしたのは民を逃がすための時間稼ぎでしかなかったって事か」
「時間稼ぎならば、持ち出したということはありませんか?」
「ああ、元々その線との二択だったからね。出せる兵に限りがあるからどっちかに賭けるしか無かった訳だけど」
「外してしまいました、か」
「言うな。城塞に向かった民はどこにいる?まだ追いつけそうなのかい?」
「報告によると大所帯なので歩みは遅いです。十分追いつけます」
「手ぶらじゃ帰れないしねえ。やるしかないか。やれやれ、兵をまとめておいてくれないかい?」
「かしこまりました」
さらに数日後。
マルボークから護衛部隊を追いかけていた輸送部隊が亜人種の移民団に到着した。これで物資の心配はなくなる。これは移民団全体に良い知らせとなる。
だが護衛部隊には良くない知らせもあった。上空で哨戒を行っていたイカロスから、後方に魔族軍およそ500の接近を確認したとの報が入った。このままでは1時間足らずで接敵する。
急ぎ、部隊の中隊長以上が集まり対応を協議する、ファムファテルとセッカもそこにいた。
「移民団はこのまま行って逃げてもらおう。護衛部隊はここで迎え撃つ」
「数は互角か。待ち構える分の利はあるが、それだけではどう転ぶか分からんな」
「主力を引きはがすような策があれば・・・あ」
ユウキは周囲の地形を見てひらめいた。
「フォルクスさん、策があるのですが申し上げても?」
「ふむ、転移者将官どのの意見ならば、伺う価値はあるかと」
「ありがとうございます。まず選ぶべき戦場ですが、あのあたりが最適です」
ユウキは三方を丘に囲まれたくぼ地を指差した。
「なるほど、それには同感だがそう都合よく引き込めるだろうか?」
「ならば、連れて来ましょう」
「というと?」
「もっとも勇敢な隊長は槍騎士150を率いて、魔族軍に突っ込んですぐに逃げてもらいます」
「・・・ああ!あれかぁ」
と、フォルクスは反応した。
(これ聞いたことあるなぁ・・・何だっけ?釣りナントカってやつ?)
セッカは策に心当たりがあるようだ。
「古典戦記でよく見る策だな、転移者どのの元の世界でもありましたか」
「この策で数々の戦いに勝利した軍がありました。策の成功に必要なのは兵の士気と練度、それと一番大事なのは偽装退却を行う指揮官の勇猛さです」
それを聞いたフォルクスは即座に反応して、言った。
「ではその役はこのフォルクス以外にはあり得んな、俺に任せてもらおう」
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