合流
数日後、金魔将ヘルパトミナと彼女が率いる魔族軍500は結界で守られた亜人種の里へ向かっていた。
ヘルパトミナは結局、里の中に「よほどの大事なもの」が存在するのかどうかは測りかねている。その上での独断専行だ。迷宮の広間の”魔界からこの世界への転送”は現在のところ500名あまりを一度に送るのが限界だった。転送には魔界に顕在する魔力を集めて使う。500名の転送に使った魔力のチャージには相当な時間が必要だ。当分魔界からの転送は行えない。
それは当然他の3魔将には迷惑な話で、ヘルパトミナの独断には相応の結果が求められる。
「これで『何もありませんでした』じゃあ、格好悪いだけじゃ済まないねえ」
ヘルパトミナは魔将にふさわしいだけの魔力を持ち合わせていたが、そのコントロールには長けていなかった。出来ることと言えば、膂力に任せて振るう武器に魔力を乗せて『魔術の理』を絶つことである。要は力任せに結界を壊すつもりでいた。
ヘルパトミナは結界の前に到着すると、早速自慢の大斧を構える。
「さーて、いっちょやってみるかね!」
亜人種の一行に騎士団の護衛部隊が到着した。
部隊全体を率いる将官のフォルクスは、エルフの族長エンファと面会していた。その間にユウキとエイムはファムファテルと再会していた。
「よく来てくれた!厳しい旅路はまだ続くが、これで一安心じゃ」
「大軍を連れてくるわけにはいきませんでしたけどね」
「なんの!現状では魔族側も大軍では来んよ。恐らくはな」
「そうなんですか」
「大軍の転送に必要な空間が足らん。少なくとも現状はな」
「なるほど」
「それで、新型の銃は出来たのか?今エイムが持っておるのがそれなのかの?」
「そうです。実はそのことで相談がありまして」
ユウキは新型銃のテスト会での出来事を説明した。それを聞いたファムファテルは
「エイムよ、おぬし弾道のコントロールと威力増大に魔法を使っておるな」
「ええ?」
「そんなことが可能なんですか?」
「知らぬよ。わしは銃使いではない」
「はあ」
「だが理屈の上では可能じゃな。射撃中に『当たれ』と思うくらいの程度のことで魔力を乗せるのは相当な習練が必要だとは思われるがの」
「ほら、やっぱりエイムの努力はすごいんだって」
「そうなの、かな」
「理屈はわかったから、銃部隊の威力増大にはわしも力を貸せるぞ」
「その幼い身体で戦場に入るつもりですか?危ないですよ」
「なんのこの程度!戦の経験はここの誰よりも豊富じゃ」
「くっそー、やたら硬いねぇこの結界」
そう言うヘルパトミナだったが、もう8割方は結界を破壊していた。側近は
「しばらくお休みになられては」
と言うが
「せっかく連れてきた兵隊を遊ばせていおく訳にはいかないさ。一気に行くよ」
と、大斧を振るう。
少しして、青く半透明な茨の幹状の結界は断ち切られた。
直後、里を覆っていた結界はすべて消え去った。
「さあ行け!魔族の先兵たちよ!この世界に侵略の炎をあげよ!」
ヘルパトミナは兵にげきを飛ばす。そして
「あたいは少し休憩させてもらう」
ぐったりとへたり込んだ。
2章もそろそろクライマックスです。
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