方策はまとまった
「あ、亜人種の里の全員が一度に転移してきたんですか?」
「一度に来たようじゃな。最も、来た当人らは全員生き残っておらん。今、里におるのはその子孫たちじゃ」
「どれくらい昔の話なんですか?
「まあはるかはるか昔、ということにしておこう」
(あ、これ絶対くわしく知ってるやつだ)
「話を戻すぞ。土地を与えて魔族を受け入れるとしても、相手に侵略をしてくる意思がある以上は一度は戦いで打ちのめしてその戦意をくじかねばならん」
「戦いは避けられない、か」
「将軍クラスを捕虜に取れば交渉のとっかかりにはなろう」
「結構ハードル高いですね」
「ここまでが情報の整理。本題は里への対応じゃ」
「はい」
「セッカ、おぬしが魔族の王だとしてこの世界に侵略を企てるなら最初にどこを狙う?」
「マルボークですね」
「理由は?」
「うーん。物資も豊富ですしお城も堅牢です。まずここを拠点にして人間側の反撃を迎え撃ちます」
「亜人種の里はどうする?」
「とりあえず無視です。特になにもないですし、結界を除けば地形も防衛には向いていません。後回していいです」
「ふむ、満点回答でいいじゃろう」
「じゃが、それはこちらの事情も知っているから出て来る判断じゃ」
「はい」
「魔族側が得られる情報でのみ考えてみよ。戦略的価値のなさそうな土地に、中身は分からんが結界で守られた土地がある。ならどうする?」
「・・・真っ先に取るという択も出てきますね」
「以上を踏まえると、亜人種の里は残念ながら早急に棄てねばならん」
「はい、質問です」
「申してみよ」
「えーと、事前策があると伺ってましたが」
「・・・うむ、確かに準備は進めておったが、正直なところ既に斥候をあんなに放って情報収集を始めておるとは思わなんだな」
「里を棄てて亜人種はどこへ行けばいいんでしょう」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「そんなもの、マルボークに決まっておろう」
「はい?」
「騎士団の上の方とは、昔からそういう取り決めをしてある」
「えーーーと、差別やら迫害やらは・・・」
「よいか、そのために今まで『転移者は快く受け入れろ』というしきたりを浸透させてきた。辺境に落とされたユウキが、里に落とされたセッカがわしの元まで来れたのはその成果じゃ。亜人種は皆転移者。それで通す」
「とりあえずは皆を魔族の脅威から逃がすのが優先じゃ」
「はい」
「じゃがな、亜人種の中には魔族に対し人間とともに戦う覚悟があっても、里を棄てる事には反対の者もいるじゃろう」
「それはまあ、なんといっても生まれ育った場所ですからね」
「出ていくにしても自分たちで決めたという納得感があれば、とは思うのじゃが」
「それじゃもう、あれをやるしかないですね」
「セッカよ、なにか知恵がありそうじゃな」
「ええ、住民投票です」




