事象の全容を見たり
ハルバートとガーネットは嬉々として魔物に襲い掛かった。彼らオーク族は亜人種の里の中で平和に暮らしていたが、その本性は戦いに飢えた獣だ。
個対個の戦いにしてもオーク側が優勢だった。それが2対1になれば勝敗は明らかだ。早々に決着がつき、トカゲ人間風の魔物は後ろ手に縛られ拘束された。
「*+&%**;#$$$$%*+!!!」
「ふん、言葉が通じるわけもないが」
ファムファテルは丁寧な手さばきで術式を展開し、魔物相手に識字魔法を発動した。
「どうじゃ?わしの言葉が分かるか?」
「なぜおれを生かしておく!さっさと殺せ!」
「お前の仕事は斥候の差配だけか?情報をまとめて上にあげるだけか?」
「知らん!知ってても言わん!」
「ほう?そうか。お前の部下は即死させたが、あの方法ならばもっと長く、死なせず苦しませ続けるのも容易だとは思わんかの?」
「ちっ!そうだよ!さっきお前が言ったとおりだ!」
「お前と同じ仕事をしている者はあと何人おる?」
「3人だ」
「さて、これだけで分かることが1つある。分かるか?セッカ」
「え?・・・さて何でしょう?」
「トップの直属に少なくとも4人の幹部がおり、それぞれが1軍を率いているということです」
ナッシュが代わりに答えた。
「その通りじゃ。おぬし、ただの暗器使いではないな。その若さで族長のそばに仕えているだけのことはあるの」
「恐れ入ります」
「こやつが下っ端なのは分かったから、迷宮の中も見ておこうかの」
「トカゲ野郎はこのままほっとくんですかい?」
「その口にもう用は無いから、猿ぐつわでもかけておくとよかろう」
迷宮の入口は、実体のない闇のカーテンのようなものになっている。これが裏側から見ると何も無いようになっているのが不思議だ。ファムファテルですらその構造について何となくの想像を付けているだけである。
闇のカーテンは縦に2メートル、横に5メートルほどで、これは出現当初から変わっていない。空間が拡大しているのは入口を通過した直後の空間だ。
一同が入口を超えると、なるほど広い空間がある。セッカの感想を借りると「だいたいテニスコート4面分?」くらいだ。そこから幅3メートルほどの通路が3方向に伸びている。
「わしが前にここに来てから100年、ここまでこの空間が広がっておったか」
「この段階に拡大したのを確認したのは3か月ほど前だ」
定期的に偵察に来ていたサイファーが言う。
「この空間にどこからか一斉に人数を送り込める方法があるどすれば、その数は300・・・いや500というところかの」
「いっぱしの軍勢にはなりますね」
「小さな町を1つ2つ占拠するだけなら十分じゃろう。じゃがマルボークほどの防備を敷いておれば、わしが不在でも撃退は可能じゃろうな」
「じゃあ、魔族が偵察活動を繰り返しながら侵略を実行しないのは、まだそれが可能ではないと判断してるから?」
「かもしれん。じゃが、ここの空間がまだ広がる可能性がある以上楽観は出来んな」
「そうですね・・・」
「よし、ここにもう用は無い。出るついでに実験をしよう。ハルバートとガーネットはこの空間の端と端に広がって出てくれ」
「おう」「はいよ」
出てみると、ハルバートとガーネットは”闇のカーテン”の存在を無視して迷宮の中にいた位置関係を維持していた。
「ふむ、予想通りあの空間に一斉に出現させた人数はそのままこの世界に送り出せるな」
「それが魔族の軍勢だったならぞっとしますね。あ、あれは誰?」
「冒険者じゃな」
あ、お約束の「敵幹部の四天王」の存在を示唆してしまいました。これ回収できるんか?




