サイレント・レイド
ファムファテルは「狭間の迷宮」へ偵察に向かうことにした。
そこに同行するのはセッカと、亜人種の里からエルフとオークから選抜された4名。エルフからはサイファーとナッシュ。オークからは格闘術に長けたハルバートトと大剣使いのガーネットだ。
「なに、何も奥まで攻略しようというのではない。ちらっと覗いてくるだけじゃ」
とは言うが、今まで迷宮に挑んだどのパーティーより戦力は上だった。過剰戦力気味に見えるのも、想定外の戦闘になった際にも生還率を100%により近付けるための方策だ。その上で非戦闘員のセッカを連れて行くのはファムファテル流の考えがある。それはセッカ自身も感じていた。
ファムファテルたちは2頭引きの馬車で迷宮に向かった。御者はノームのアレサンドロが務める。
迷宮から2キロのところには冒険者向けにベースキャンプの村があった。馬車は目立たないようにその逆方向を目指す。数日後、馬車は適当な場所で係留しアレサンドロにはその場で待機してもらうことになった。そこからは徒歩だ。
「サイファーは隠密の能力を買って連れてきたが、道案内も優秀じゃな」
「迷う余地が無いのはありがたいですね」
「目的地が近い。ここで斥候に出ます。ここでしばらくお待ちを」
「うむ」
サイファーは姿を消し駆けていった。
「魔導士さまの話じゃアタシらは万が一のための用心棒って感じだけど、出番はあるのかね?」
ガーネットが疑問をぶつける。
「ないに越したことはないがの。ぬしらが見た目以上の膂力の持ち主なのは知っておるが、おるだけで効力がある場面もあろう」
「冒険者とバッティングしても、揉め事にせずに引いてもらうことができますね」
「その通りじゃ。ま、荒事になっても一瞬で終わるじゃろうがな」
ハルバートとガーネットは目を合わせると、その通りと言わんばかりに笑った。
しばらくしてサイファーが戻ってきた。
「・・・何者かが迷宮の入口を占拠している。迷宮へ入ろうとする冒険者を排除していた」
「どこぞの軍勢か?」
「少なくとも人間ではない。魔物としても見たことは無い。知性がある上位種に見えた」
「魔族か、いずれにしても見てみんことにはな。サイファー、こっそり覗き見を出来るような地形に案内せい」
一同は「狭間の迷宮」の入口をほぼ真横から眺める高台に来た。入口には手前に湧き水の泉がある。
入口は2体のトカゲ人間のような魔物が警備しているようだった。
サイファーが小声で話す。
「ブラインドで迷彩をかけたから、向こうからは厳に注意をかけないと見れない。だが大きな音は立てるな」
「先に言ってたのは奴らだけか?」
「指揮官らしき者がもう1体。恐らく中にいる」
「ふむ、少し様子を見るか」
しばらくして、その指揮官らしき魔物が出てきた。1体ではなく3体。2体が後ろに控えてる様子を見ると指揮官とその供回りではないかとファムファテルは見立てた。
そのあと、人型の黒い影のようなものが5つ現れた。指揮官らしきものが指示を飛ばすと、5つの影はバラバラの方角へ散った。
「追うか?」
とサイファー。
「放っておけ。斥候じゃろう。こちらの者とは接触するまい。さて」
ファムファテルは同行していた5人に向き直り
「せっかくじゃから、わしの力の一端を見せてやろう」
ファムファテルが杖を掲げると、入口のそばの泉から水の玉が4つ浮き上がった。
それは指揮官を除いた4体の魔物めがけて飛んでいき、頭を覆う。
それからほんの数秒で、水の玉は消え去った。いや、口と鼻を通じて強制的に体内に送られたのだ。
かと思うと魔物たちは何度かの痙攣の後に倒れた。そして水を吐いた。
「な、今なにが起こったんですか?一瞬ですよ」
セッカは思わず声をあげてしまった。
「あ」
気が付いてももう遅い。同じく何が起こったか理解できていなかったような指揮官の魔物がファムファテルたちの存在に気付いたようだった。
「出番じゃぞ!ハルバート!ガーネット!死なん程度に痛めつけてやれ!」
「よっしゃー!」「任せときな!」
ファムファテルは水を魔物の体内に送り込んだ後、その水を超高速でかき回して魔物の内臓を破壊しました。この技は某異能バトルマンガに出てきます。
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