新型銃の試作品
ユウキとエイムがマルボークに到着しておよそ1か月経過した。
ユウキは城壁の改修と新型銃の開発を任されたが、どちらも専門的な知識があるわけではない。現場の責任者に会ってアイデアを伝え、時にぶつかりながら作業を進めていた。
エイムはユウキの秘書としての業務に追われた。こちらも経験のないことを始めた訳で、はじめはしっちゃかめっちゃかであったが、地頭が良かったせいか短期間でそつなくこなせるようになった。最近は空いた時間には銃の訓練が出来るようにもなっている。
そんな折、新型銃の試作品が完成した。
ユウキのアイデアが実現したのはオートマチック式のハンドガンと小銃。ボルトアクション方式のライフルだ。ライフルにはスコープを付けたものもあるが、1000メートル超の超長距離狙撃をするには弾丸そのものにも現代技術が必要で、そこはユウキの知識外である。
もちろん試作銃にはすべてライフリングを付けた。正直なところ、それだけで銃の性能は大幅に向上するはずだ。弾丸も先端を円錐形にすることで直進安定性と射程を伸ばす工夫をした。
銃はそれぞれ5丁ずつ制作された。各小隊を束ねる3人の隊長、教練の指揮を執る副長、そしてエイムの分である。その5人分の試作銃のテストが早速行われることになった。
テストが行われるのは危険が無いようにマルボークの外の、街道からも外れただだっ広い平原だ。
「ユウキぃ・・・私があの人たちに混じっちゃってほんとにいいの?」
エイムには秘書官としての仕事の都合上、階級章こそ付いていないが士官用の制服が支給されていた。ユウキはもちろん将官用である。どちらも立派過ぎて着させられてる感があるが。
「大丈夫大丈夫。エイムの腕は俺が保証してるから」
テストはまず、30メートル先と50メートル先の的をハンドガンで狙う。
命中率はまずまずではあるが、見るべきはそこではない。オートマチックが機能しているか、マガジンの交換に問題は無いか、不発が起こっていないかが大事である。
ユウキはエイムがマガジンを交換しているタイミングを見て声をかけてみる。
「どう?」「なんか難しいー」
全弾命中させつつ『難しい』とはなんだろう。ユウキは不思議に思ったが、弾丸の持つ運動エネルギーが変質したので、これまでイメージしてた弾道で飛んでか行かないと言っているのかと解釈した。
そこで、トンボを捕まえる時のように指をくるくる回し
「こういう感じで弾が回りながら飛んでいくようになったからね、こう、空気を裂くように進んで・・・」
「そうか!わかった!」
エイムは何かイメージが沸いたように、手早くマガジンを入れ替えると
「撃つね!」
と、的を見据えた。
ドガッッ!!
銃声とは別に、異質な爆音が鳴った。
エイムが撃った弾丸が的を破壊していた。
銃がライフリングによって弾丸に与える、いわゆるジャイロ回転は弾道の安定と射程が伸びる効果だけでなく、貫通力も上げる。
だから今日のテストで当たった弾はすべて、的に小さな穴を開けて抜けて行っている。破壊してしまうというのは想定外だった。
それからも的を破壊してしまうのでエイムは他の新作銃のテストで1発ずつしか撃てなかった。
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