この世界のゆがみ
「えっ・・・ちょっと待って、じゃあ彼らはどこに住んでるんですか?」
「悠希くんたちがやってきた街道の東側。この世界、サルカンドの人間が”魔族の棲家”だと思ってるところよ」
「なんだって?」
エイムも驚いている。
「それは本当ですか?魔導士さま」
「うむ。まことじゃ」
「亜人種は数が少ないからの。ユウキよ、おぬしが元にいた世界で少数の”見た目の異なる者””力の弱いのもの”がいたらどういう扱いをされるかの?」
「・・・・・」
「差別、迫害」
セッカが代わりに答える。
「そうじゃな。全部が全部ではないじゃろう。じゃがそういったことは必ず起こる。わしはそれを許さん」
「秘匿していた理由は分かりました。でも冒険者はそこに向かってたんでしょう?隠し切れないんじゃないですか?」
「亜人種の住む領域には結界を張っておるからの」
セッカはくすっと笑って
「まあ、よくあるお約束通りではあるわね。ちなみに、ワタシが飛ばされたのは結界の内側でしたー」
エイムが次の疑問を投げかける。
「じゃあ、街道に現れる魔物はどこから来てるんでしょう?」
「それも、”よくあるお約束”通り、かな?」
「結界の手前に『狭間の迷宮』と呼んでおる回廊への入口が開いておる。冒険者にやらせているのはそこの調査じゃ」
「調査によると、迷宮では魔物が『転移してきたかのように』突然現れるそうじゃ」
「こわいなー・・・」
と、エイムがつぶやく。
「入口近くに発生した比較的低級の魔物が外に出て悪さをしていると思われるな」
「入口って、いつからあったんですか?」
「わしが知る限りでは、150年ほど前からじゃな」
ここでサイファーが突然会話に参加した。
「入口は数年おき、段階的に拡大している。拡大が進むと、中の在り様が一変するタイミングがある」
「おぬし、サイファーと申したな。年はいくつじゃ?」
「・・・・170」
「エルフも調査をしとるのか?」
「入口付近のみ。次に一変することがあると、大軍が”一度に転移”して通過してくる恐れがある。というのがエルフの調査での見解だ」
「入口付近の通路がそれだけ広がっている、ということかの?」
サイファーはうなずいた。
セッカは立ち上がってファムファテルに向き直った。
「宮廷魔導士ファムファテルどの」
「うむ?」
「セッカ・カタバミは、結界の中に住む亜人種を代表して申し上げます」
(雪花??短期間でそんな偉くなってたのか?)
驚愕したユウキの変顔が久しぶりに出た。
「来るべき魔族の大侵攻に、亜人種と人間は手を結び協力して準備するべきです!」
「ならん」
「どうしてですか!」
「それは先ほど申したであろう?」
「滅んでしまっては何も残りません」
「結界が守ってくれる」
「魔族の上位種に通じる保証はありません」
「心配するでない。策はすでにいくつも打っておる」
パン!!と、セッカはテーブルを平手で叩いた。あれは痛いだろう。
「やはり!この世界のゆがみはあなたではないですか!大魔導士ファムファテル!誰よりも強い権力を有し、世界の在り様をご自身で全て決めようとしている!そんな事はワタシは認めません!」
雪花がフルネームで名乗ったのは、亜人種の代表として交渉を始めることに対しての礼を示したかったと思われます。漢字では「酢漿草雪花」です。
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