宮廷魔導士登場
遠景にマルボーグの赤い城壁が見えてくる。騎士団の本拠地にしてサルカンド大陸第三の都市。
ザグレーブからの道のりはおおむね平穏で、魔物との遭遇もなく順調だった。エイムは、時折ユウキへの執着を見せることがあったが大きな問題にはならなかった。
「そろそろ到着ね。今までより遥かに大きな町だから、お迎えがあるとありがたいんだけど」
「どれくらいの人が住んでるんですか?」
「さあ?エイサムの20や30倍じゃきかないわね」
「大都市だ」
それだけの容貌が外観からも分かる。町全体を城壁で囲んだ城塞都市だ。
「ふむ。立派な城壁だけどせっかくの魔法銃部隊を活かすならもうひと工夫いるね」
歴史オタクのユウキとしては思うところがあるようだ。
「あれ?跳ね橋の手前に誰かいるね」
「子供?」
城門を通って町に入るには跳ね橋を渡って空堀を越える必要がある。その跳ね橋の手前にその人がいた。緑の法衣に藍色のローブ、手には背丈より長い樫の杖を持っていた。ユウキはこの世界に来て初めて見る種類の身なりだったが、高位の魔導士・・・という印象だった。だが
「子供ですね」
見た目は10歳くらい。栗色の長い髪は毛先を内側に巻き、瞳の色は緑。聡明さの中に自信のほどを示す表情をしていた。女の子だろう。
跳ね橋の手前に来ると門番の兵に下馬を求められたので応じる。すると魔導士風の少女が一歩、二歩と歩み寄り叫ぶ。
「よく来たな転移者よ!この宮廷大魔導士ファムファテル・アルカードが歓迎するぞ!」
「え?」
一行は一様にきょとんとする。事態が呑み込めない。ファムファテルは自信満々の表情を崩さないままエイムを一瞥すると、にかっと笑みを見せた。
「お招きありがとうございます。お・・、私が転移者ユウキです」
「うむ!長旅ごくろうじゃったな!」
「城内へご案内いただけますか?」
「うむ!わしに任せるのじゃ!」
ファムファテルは右足を軸にクルっと半回転して、大股で歩き出す。ついて行くしか無さそうだ。
兵舎に寄って馬を預けたあと、ファムファテルの先導で歩み進む。番兵がいる重要エリアにも。どこまで行っても顔パスで入っていく。
ユウキはエイムに耳打ちする。
「彼女、偉い人なのは間違いないね。通行証とか紹介状とかいろいろ持たされたのに、全部無駄になりそう」
「そうね、それにちょっと懐かしい感じがするの。なんだろう」
「ところで・・・ファムファテルちゃんだっけー?今おいくつ?」
「ファムで良いそ!歳のことか?先月で9歳になったぞ!合わせて739歳じゃな」
「?????」
「着いたぞ。ここじゃ」
宮殿のような建物の上層階、さらに奥のにある立派な両開きのドアを、ファムファテルはあまりにも無造作に開けた。中にいたのは軍服を着た青年だった。
「ここで一番偉いやつじゃ。客人を連れてきてやったぞ」
この物語最大のキーパーソン、宮廷魔導士ファムファテルがようやく登場させられました。
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