ザグレーブの一夜
夕暮れのザグレーブパトロール隊宿舎前、スカーレットとアンはユウキとエイムを待っていた。
「2人は帰ってくるでしょうか・・・」
「帰ってこなかったら『駆け落ちしました』って報告するしかないわね・・・」
「そんなんで通用するんですか?」
「知らないわよ、そんなの・・・あら」
通りの向こうからユウキとエイムが姿を見せた。エイムはユウキの右腕を両手で抱きかかえていた。その表情は夢心地といった感じだ。
「あらー・・・」
スカーレットは手で顔を覆った。
「最悪のパターンじゃないですかね。これ」
2人の目の前にやってきたユウキは、バツの悪そうに言う。
「あの、折り入ってお話があるんですが」
「聞かせていただきましょう」
「存分に」
4人は居酒屋にやってきた。丸テーブルの席の通されたが、エイムはユウキに離れず座り、相変わらず腕を離さない。
「今日はお酒飲むんですか?」
「そうよ」
「飲まなきゃやってらんねーでしょうがよう!今日は!」
アンはキレ気味だ。
「で、式はいつ?」
「はい?」
「結婚するんでしょう?」
「何でそうなるんですか」
「ヤッちまったんだろうが!お前責任とれやおらー!」
アンはブチ切れた。
「は?・・・・ああああああ!違います誤解ですやってません!」
「ウソ」
「嘘じゃないです!」
「どうなの?エーちゃん」
エイムはうつろな表情のままコクッとうなずいた。
「ほぅら」
「ちー!がー!うー!でー!しょーーーーー!」
誤解が解けるまで1時間かかった。
「大体のいきさつはわかったけど、そのセッカちゃんはユウ君のなんなの?」
「それ重要ですか?」
「重要よ!!きみ、まだこの状況理解してないんじゃない?」
「う・・・ごめんさい」
「わかればよろしい」
「幼なじみというか、近所に住んでたのでちょくちょく顔は合わせますけど、大学は違うし何やってるかよく知らないし」
「ふぅん」
「それだけで家探ししてまで行方を探そうとしますかねぇ?」
「まぁいいわ。信じてあげましょう」
「ひとつ分かるのは、雪花は今この世界のために動いているということです」
「どうしてそう思うの?」
「黒ずくめの衣装です。あれは多分透明化魔法と関係がある。自分の意思であの服に着替えてもう1人の男と行動を共している。それは大義があるからです」
「こちらに飛ばされた時の服じゃないのは確実なのね?」
「山に登るための服装ではないですね・・・」
「まぁあとはマルボークでのお楽しみってところかしら」
そう言って、スカーレットは飲みかけのエールを干した。
「じゃあ、そろそろお開きね。明日からマルボークを目指すわよ」
「あのーエイムはどうすれば・・・」
「無理に引きはがす訳にいかないんだから、手を出しても出さなくてもいいけどマシになるまで一緒にいてあげて。ただし、手を出すなら責任を取ること」
「・・・・」
「宿舎で男女同室って訳にはいかないから宿を取ることね」
「・・・・」
ユウキはツインの部屋を取った。エイムをベッドに寝かせて、自分はエイムの手を握ってベッド脇の床に座った。朝まで起きているつもりだった。
ユウキが気が付くと2人はベッドに背を向けて並んで座り布団を被っていた。
エイムの頭はユウキの肩に乗っていた。
ユウキがエイムの頭をなでていると、エイムは今までに感じたことのない心地良い目覚めを迎えた。
ユウキがなでるのをやめると、エイムは(もうやめちゃうの?)と言いたげに顔を向ける。
至近距離で目が合った。
「おはよう」
気恥しさも幸せな朝だった。
tips:エイムは、宿舎前に来たあたりまでは陶酔してなにも考えられない状態でしたが、居酒屋に到着したあたりからは正気に戻っています。ただ甘えていただけです。
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