エイムの過去と今
「こっちの世界の問題ってなんだ?過去200年は戦争もない平和な世界だって聞いてるけど」
「その平和は、いびつな構造の上に成り立ってたってこと。でももう限界が来てる」
「あたしたちみたいなお仕事してる人は根無し草なのよね。兵隊にしても冒険者にしても」
スカーレットたちは買い物を終えて石畳の町中を歩いていた。
「どこかに落ち着くということはなくて、いつ消えていってもおかしくない」
「その覚悟を無くして、この仕事をしている人はいないのではないかと」
「そうよね。でも彼はどう?」
「・・・・!」
「どこから来てて帰る方法があるのかどうかも分からないけど、帰るべき場所があるんじゃない?彼には」
「センパイ・・・」
「心配なの。あとでエーちゃんが辛くなっちゃうんじゃないかって」
「わたし・・・!」
エイムは逃げ出してしまった。
「あー・・・行っちゃいましたねえ」
「余計なお世話だってうのはわかってるんだけどね・・・あたしも青いわねえ」
行くあてもなくエイムは走る。
エイムは12才の時、公国の都フィラハの魔法学院に入学した。術式や座学では優秀な部類だったが、先天的な魔力不足で実技での成績は上がらなかった。実践出来てこそという評価になりがちな学生の社会では挫折して退学せざるを得なかった。
それに加えて魔法銃部隊の不採用である。エイムの人生は挫折続きだ。そんなエイムの前に突然現れたユウキは、彼女を挫折続きの落ちこぼれ人生から拾い上げてくれる救世主になるかもしれない希望になった。
好意そのものより、失いたくないという気持ちがエイムに膨れ上がっていた。
気が付くと裏路地に入り込んでしまった。
周囲を伺いつつ進んでいくとユウキの声が聞こえてきた。誰かと話しているらしい。
(あれは・・・誰?)
「ワタシと一緒に来ない?こっちの世界の問題なんかチャチャっと片付けて、帰る方法探そうよ」
(・・・・!そんな!)
「こっちの世界の問題ってなんだ?過去200年は戦争もない平和な世界だって聞いてるけど」
「その平和は、いびつな構造の上に成り立ってたってこと。でももう限界が来てる」
「いびつって、どういうことだ?」
「もう時間だわ。マルボークに行くんでしょ?そこでゆっくり話そ。多分また会える」
セッカの連れの男サイファーが漆黒のマントをひるがえすと、セッカとサイファーは消えた。が、光学迷彩魔法で姿を見えなくしただけだろう。石畳の路面を蹴って駆けていく音がユウキには聞こえた。
「あいつはあいつで、目的を見つけて動いてるんだな」
そうつぶやくと、ユウキは背後に気配を感じて振り向いた。
そこにエイムがいた。目を真っ赤にして泣きじゃくっていた。
「ユウキ・・・今の誰?」
「エイム・・・!今の聞いてた?」
エイムは感情が抑えきれなくなり、ユウキにかけ寄って抱き付いた。
「行かないで・・・どこにも行かないで・・・わたしのそばにいて・・・」
「行かない!行かないから!」
「行かないで・・・行かないで・・・」
エイムの涙が止まらない。
ユウキはエイムの抱擁に応えて、彼女が落ち着くのを待つしか成す術がなかった。
tips:セッカの容貌について描写しきれなかったのでここで補足。黒髪のロングストレートヘアで瞳も黒。前髪も横髪も切りそろえてなく、いわゆる「姫カット」ではありません。つばの大きな帽子はベール付きで、少し遠目から見たエイムには顔がよく確認できませんでした。服装はブラウスとひざ丈のスカートとゆったりめのブーツ。あとは編みタイツ。ひざ下まである大きなマントをしており、身に着けているもので外からわかるものは全部まっ黒です。下着は分かりませんが。
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